火魅子伝〜霊狩人〜第2話(火魅子伝×魂響)
日時: 05/22 22:23
著者: ADONIS
URL : http://adonis2000.fc2web.com/

火魅子伝〜霊狩人〜第2話(火魅子伝×魂響)



「ガアアアーー!!」

一太刀で切り捨てられた、魔人の断末魔が、森に響く。

伊万里は、その光景を呆然と見ていた。

山人の伊万里は、上乃、仁清と共に、狩りに出掛けていたが、不運なことに、そこで魔人と遭遇してしまったのだ。

魔人が襲いかってきて、伊万里達が死を覚悟したとき、いきなり現れた少女が、魔人をあっさりと殺してしまったのだ。

伊万里の目の前には、奇妙な形の大剣を持つ、見たこともない服装の少女がいた。

「へえ、これが魔人ねえ。思ったほどでもないわね」

「凄いよ、日魅子。魔人を簡単に倒すなんて」

キョウがやや興奮気味に、日魅子に話かけた。

「まあ、これは魔人の中でも、それほど力があるヤツでも無いみたいだし、こんなものかしら」

「あ、あの」

伊万里は、自分たちを助けてくれた少女に、躊躇いがちに、声をかけた。

「貴方達、大丈夫?」

日魅子が、事なしげに伊万里に尋ねる。

「え、ええ大丈夫です。あの、あなた達は・・・」

伊万里が日魅子に声をかけようとしたが。

「なっ、この娘、火魅子の資格を持ってるよ!!」

キョウが驚きつつ、伊万里を指さした。

「「「ええっ!!」」」

伊万里、上乃、仁清の三人は、いきなり知らされた驚愕の事実に声を上げた。

「そう、彼女が行方不明の火魅子候補の一人ってことね?」

「間違いないよ」

「あの、私が火魅子候補って、本当ですか?」

伊万里が驚きながら、日魅子に訪ねる。

「本当よ。こいつは耶麻台国の神器の一つ、天魔鏡の精霊なの。火魅子のことなら間違えないわ。キョウ、天魔鏡に戻って、確認するわ」

「わかったよ」

キョウが天魔鏡の中に戻ると、日魅子は天魔鏡を伊万里に渡した。

伊万里が天魔鏡を見ると、天魔鏡には伊万里の姿が映っていた。

「間違いないわね。」

上乃と仁清も試してみたが天魔鏡には映らず、伊万里だけ映っていた。

「これは、天魔鏡といって、火魅子か火魅子候補しか映らないのよ」

日魅子はそういって、自分の姿を天魔鏡に映す。

「あ、貴方も火魅子候補なんですか?」

伊万里は、日魅子が天魔鏡に映ったことに驚く。

「ええ、そういえば、まだ名乗って居なかったわね。私は秋月日魅子、元耶麻台国王の実子で、直系の火魅子候補よ」

「私は伊万里です」

「上乃です」

「仁清です」

伊万里達は、直系の火魅子の存在に、驚きつつも名乗る。

「伊万里は、できれば私と一緒に、耶麻台国の復興に協力してほしいけど。嫌なら断ってもかまわないわ」

「日魅子!!」

キョウが咎めるようにいうが

「キョウ、こんな事は、無理矢理やらせる物ではないわ。あくまで本人が意思が肝心よ」

日魅子は、当然の事と、いわんばかりにさらりと流した。

「私は・・・」

「何も、今すぐに決めて欲しい訳ではないわ。私は、これから元耶麻台国副王の伊雅の所に行くから、そこで決めてくれれば良いわ」

「分かりました」

伊万里は、日魅子の言葉に頷いた。

「あなた達はどうします?」

「伊万里が行くなら、私も行くわ」

「僕も」

上乃と仁清も、そう返事をする。

「では、行きましょう」

その場にいる物たちは、日魅子の言葉に従い、移動を開始した。



日魅子達が、立ち去って暫くして、魔人の死骸の近くに、骸骨の姿をした男が現れた。

「・・・まさか、私の魔人がやられるとはな。それにしても直系の火魅子が、まだ生きのびていたとはな。カカカッ」

「蛇渇様」

骸骨姿の蛇渇に一人の左道士が話しかけた。

「あの者達を見逃して、宜しいのですか?」

「かまわぬわ。あの者は儂と同じく、人の道を外れし化け物よ。魔人の召還で、力を消耗した、今の儂では、あの者を倒せん。それより、なにか新しい情報が手に入ったか?」

「はい、この付近で、耶麻台国の残党が潜む、隠れ里があります」

「ほう、それは潰さねばな」

蛇渇はそういうと、その隠れ里の方に向かっていった。

この後、伊万里達の故郷、県居の里が久根国軍の襲撃によって、滅ぼされた。