火魅子伝〜霊狩人〜第4話(火魅子伝×魂響)
日時: 05/22 22:24
著者: ADONIS
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火魅子伝〜霊狩人〜第4話(火魅子伝×魂響)



久根国兵との戦闘の後、日魅子達は簡単な自己紹介を済まして、神社から移動していた。

久根国兵と戦ったため、此処に長居ができないからだ。

(綺麗な方、これが直系の火魅子様なのかしら?)

星華は、先頭を歩く日魅子を見ながら、陶然としていた。

先ほどの戦闘で、久根国兵を蹴散らし、自分たちを助けてくれた日魅子に、星華は見惚れていたのだった。

日魅子は、まだ15、6の年下の少女だが、同姓の自分から見ても、とても美しかった。

そんな中、亜衣は日魅子を苦々しく見ていた。

自分たちを久根国兵から、助けてくれたことは感謝している。

しかし、亜衣は星華を火魅子にすることを、昔からの目的にしていたのだ。

それが、直系の火魅子が現れた事によって、その可能性が、ほぼ無くなってしまった。

この世界でも、直系と傍系では、地位が違う。

直系がいる以上、傍系に過ぎない星華が、火魅子になることは無理である。

しかし、だからといって、日魅子を暗殺するわけにもいかない。

そんなことをして、復興が頓挫してしまっては、目も当てられない。

また、耶麻台国の縁戚であることに誇りを持ち、耶麻台国に対する忠誠心を強い、自分が耶麻台国王の実子を殺めるのには、抵抗がある。

それに、伊万里という火魅子候補の存在も気になる。

山人として、育ったらしいが、星華が火魅子になるにあたって、邪魔になることには変わりない。



日魅子は、そんな亜衣の心情を見抜きつつ、呆れていた。

今は、女王争いなど、やる以前の問題だろうに。

そもそも、久根国に勝つ見込みが、甚だ薄い状況では、女王になる以前の問題だ。

これは、味方に足を引っ張られる恐れが有るわね。

日魅子は、其処まで考えると、うんざりしてきた。

「はあ」

「ん、どうたんだい日魅子?」

日魅子の考えなどを知らない、キョウは呑気にそういう。

キョウは、直系の火魅子や他の火魅子候補が、順調に見つかっていることに安心し、やや楽観しているようだ。

いや、元々楽天的なのだろうか?

なにしろ、何の勝算も無しに、私をこの世界に、無理矢理呼び戻した程だし。

確かに、キョウのいう通り、直系の火魅子や火魅子候補、耶麻台国の神器があれば、求心力はあるだろう。

だが、求心力だけで、勝てるほど久根国は甘くは無いだろう。

でなければ、いくら衰退していたとはいえ、耶麻台国を滅ぼすことは、出来なかったはずだ。

兵士の数に質、実際に軍隊を運用する能力。

これは、久根国とは、かなりの差があるとみるべきだ。

これを何とかしなければならない上に、内部の不和にも、気を付けねばならない。

また、求心力といっても、九洲の民がどれだけ、耶麻台国を支持するかも不明だ。

何しろ、もう14年も前に、滅びた国だ。

実際、今まで起こった反乱も、すべて鎮圧されている。

それに、キョウ達から得られる情報は、どうしても偏ってくる。

やはり、一度自分で確認しなければ、ならない。

まったく、厄介な事この上ない。

元の世界に帰るために、他にもっと簡単な方法があれば、とっくに投げ出していただろう。

しかし、これも愛する久峪の元に帰るため、そう思えば何とか我慢できる。

まあ、味方の足の引っ張り合いには、私が復興軍の総大将になり、味方内の不和を押さえて対処するしかないだろう。

問題なのは副王の伊雅が、久根国の目をくぐり抜けて、どれだけ耶麻台国復興の準備を進められたかだ。

それによって、復興軍を起こすまでの準備期間が変わるだろう。

「何でもないわキョウ。それより、伊雅はこの近くにいるの?」

「そうだよ。伊雅の蒼龍玉が近づいているよ。どうやら伊雅もオイラ達の方へ向かっているみたいだ」

キョウがそういって、暫くすると、中年の男と若い女性が近づいていた。

「貴方が元耶麻台国副王の伊雅ね?」

日魅子の問いかけに、伊雅と清瑞が警戒する。

「貴様等、何者だ」

清瑞が警戒しつつ問い正す。

「私は、秋月日魅子。貴方達にわかりやすくいうなら、直系の火魅子よ」

「「なっ」」

伊雅と清瑞は驚愕する。

二人とも、直系の火魅子を、ここ数年ずっと探していたが、結局見つけられなかったため、既に死んでいるのだろうと諦めていたのだ。

「詳しくは、キョウに聞いて」

日魅子が呼びかけると、日魅子の持つ天魔鏡からキョウが出てきた。

「おお、あなたは天魔鏡の精さま」

伊雅はキョウを見ると頭を下げた。

「伊雅さま」

「清瑞、こちらは耶麻台国の神器の一つ、天魔鏡の精さまで有らせられるぞ。頭を下げよ」

「は、はい」

伊雅にいわれ、清瑞も頭を下げる。

「久しぶりだね伊雅。詳しい話をしたいけど此処じゃ、落ち着いて話せないから場所を変えたいんだけど」

「それでしたら、この近くに私たちのいる隠れ里があります」

「じゃ其処に行こうみんなも良いよね」

誰も依存がないため、全員で隠れ里に向かっていった。