火魅子伝〜霊狩人〜第6話(火魅子伝×魂響)
日時: 05/22 22:26
著者: ADONIS
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火魅子伝〜霊狩人〜第6話(火魅子伝×魂響)



日魅子がこの世界に来て、半年が経った。

その間、星華は、石川島の海人集団の頭、重然を味方にしていた。

新型の戦闘艦の開発も進められており、各地の反久根国勢力の訓練や武器や防具の製造も、順調に進んでいた。



その日、日魅子は一人で、九洲の街を巡っていた。

やはり、九洲の現状を知るためには、自分で見聞きしておく必要があったからだ。

結果的にいえば、久根国は九洲の民に、圧政をしいていた。

久根国の商人による一方的で、不平等な商取引。

久根国兵士による一般市民への、暴行などである。

また、先祖代々祀っていた。耶麻台国の神々は、信仰が禁止され、無理矢理、異国の神々を信仰させられており、人心は荒廃していた。

まあ、侵略した国が、それまでの支配国よりも、寛容である例など、珍しいから、これが普通なのかもしれないが。

人々は、火魅子様がおられれば、久根国に支配されなかったといっていた。

九洲の民の、火魅子を望む声は、想像以上に強かったのだ。

久根国に対する反発と、火魅子に対する求心力、これを旨く利用すれば、復興軍の助けになるだろう。

そんなことを考えつつ、森の中を歩いていると、日魅子は、近くで魔人の気配がするのに気付いた。

「魔人か、それも複数」

日魅子は、魔人の気配がある位置に、向かっていった。



「王女様、お逃げ下さい」

白い鎧に身を包んだ女性が、場違いな程、煌びやかな衣装を着た少女に、逃げるようにいっていた。

「この状況では、逃げようがないわ」

少女、彩花紫王女の護衛は、雲母、哥羽茉莉、 琉度羅丹の三人しか生き残っていなかった。

彼女達は、8匹の魔人に囲まれていた。

彩花紫王女は、久根国の王女であったが、末娘であったため、王位継承権は低かったが、あまりに優秀過ぎたために、大王や他の王族、高官などから嫌われていた。

彩花紫王女は今までも、何度も暗殺されかかっていた。

その為、今回の九洲視察でも、護衛に精鋭100名を連れていたが、8匹もの魔人が相手では、分が悪過ぎた。

彼らは、あっという間に全滅した。

「へえ、魔人が8匹もいるんだ」

彩花紫達を包囲していた魔人達に、そんな声が聞こえた。

「ナ、ダレダ!」

魔人達がその声に反応した。

声がした場所には、禍曲剣を抜いた日魅子が、微笑みを浮かべ、立っていた。

「キサマ、ジャマヲスルノカ」

「あら邪魔じゃないわ、あなた達を始末するだけだもの」

日魅子はそう言うと、霊力を高めた。

禍曲剣を構えて、魔人に突撃する。

禍曲剣によって、高められた身体能力と強力な霊力によって、凄まじい速さで、魔人に近づき、剣を振るった。

その紫の斬撃は、一太刀で魔人の首を飛ばした。

「キ、キサマ」

仲間の首が、あっという間に、切り落とされた事で、魔人達が日魅子に、一斉に襲いかかった。

しかし、日魅子の速さは、彼らを上回っており、捉えきれなかった。

「はああああ!!」

日魅子は、3メートルもの巨人の姿の魔人の足を切りつけた。

「ガアアアッ」

足を切り落とされた魔人は悲鳴を上げたが、すぐに禍曲剣に魂を喰われた。

日魅子は、次々に魔人達を切りつけた。

それは、手や足などであったが、禍曲剣で切りつけられた魔人達は、次々に魂を喰われていった。

「バカナ!タマシイクライ、ダド!!」

生き残った魔人が、禍曲剣の能力に気づいた時には、既に遅かった。

魔人達は、日魅子をひ弱な人間だと思っていて、まさか自分たちを殺す狩人だとは、思っていなかったのだ。

そして、最後の魔人の魂も、禍曲剣に喰われた。



彩花紫王女は、その信じられない光景に驚愕していた。

8匹もの魔人が、たっと一人の少女を相手に、あっという間に、全滅したのだ。

大半の魔人達は、致命傷を負っていないにも関わらず、あの剣で、切りつけられただけで、死んでいった。

「ねえ、あなた達、大丈夫?」

日魅子は、彩花紫王女達に話しかけた。

「ええ、助かりました。どうもありがとう御座います」

彩花紫は、日魅子に頭を下げた。

「私は、秋月と申しますわ。それにしても、8匹もの魔人に、狙われる何て、あなたは何者ですか?」

「私は、彩花紫。久根国の王女ですわ」

「王女ですか、それなのに魔人に襲われるとは、暗殺ですか?随分と国内に、敵が多いようですね」

日魅子の質問に、彩花紫が頷く。

雲母達も、その事は事実であるため、反論できなかった。

「それで、これからどうします?何なら征西都督府まで、案内しましょうか」

「いえ、それには及びません。私は、久根国から出ますので」

「彩花紫王女様!」

雲母達が驚く。

「こうも、何度も暗殺を仕掛けられれば、いい加減、久根国には愛想が尽きますわ。雲母、哥羽茉莉、琉度羅丹、私は今日から、王女をやめますわ。これより、私のことは彩花紫と呼びなさい」

「しかし、これからどうなさるのです?」

雲母が彩花紫に尋ねる。

「いままで、好き勝手にしてくれた方々に、復讐しようと思っていますわ」

「てっ、まさか!!」

狼狽える雲母は彩花紫に聞き返す。

「久根国を討ちます」

彩花紫の答えに、雲母だけでなく、日魅子も驚いた。

「久根国を討つって、山都で反乱でも起こすの?」

日魅子が彩花紫に聞いた。

「いえ、恐らくそれは、無理でしょう」

彩花紫は、高官達や他の王族に疎まれているため、自分で自由に、動かすことのできる兵力を持てなかったのだ。

そもそも、山都には、味方は皆無で、敵だらけなのだ。

雲母は、元々は久根国四天王であったが、彩花紫に忠誠を誓っていたために、左遷されており、兵を率いることができない。

「耶麻台国の残党に、手を貸すってどうかしら。彼らは、久根国と敵対しているわ」

「私は彩花紫様に、従います」

彩花紫の発言に、雲母はそう答えた。

「元より、我らが従うのは、彩花紫様のみですわ」

その、哥羽茉莉の言葉に琉度羅丹が頷いた。

「耶麻台国の残党に味方するの?それなら、私と元に来ますか?」

日魅子は彩花紫に尋ねる。

「貴方の?」

「そう、私は元耶麻台国王の実子。あなた達の言う耶麻台国残党の総大将ですわ」

「なっ」

彩花紫達が驚く。

日魅子はただ者では無いと思っていたが、まさか元耶麻台国王の実子とは、思わなかったのだ。

「どうかしら?」

「ええ、よろしくお願いしますわ。秋月様」

彩花紫は日魅子に微笑んだ。



その後、伊雅達と合流した日魅子は彩花紫達のことを、九洲に来た旅人と説明した。

流石に、元久根国の王族や将軍などと、馬鹿正直に言うわけには行かなかった。

日魅子は、彩花紫を軍師として、招いた。



その後、彩花紫達を仲間にした日魅子は、復興軍の軍組織の話し合いを行った。

日魅子は部分的に、近代的な軍の編成を取り入れていた。

すなわち、軍団、大隊、中隊、小隊である。

また、軍の階級として、大将、中将、少将、大佐、中佐、少佐、大尉、中尉、少尉、一等兵、二等兵、三等兵の採用である。

兵士は20人一組で、一個小隊として、行動させる。

これによって、兵士をまとめる。

中隊は五個小隊、100人。

大隊は五個中隊、500人とした。

また軍団は将来的には、複数の大隊を指揮することになるだろう。

日魅子は復興軍総司令官で、階級は大将。

伊雅、星華、伊万里はそれぞれ第一、第二、第三軍団の軍団長として、階級を少将とした。

亜衣、夷緒、上乃、仁清、雲母、哥羽茉莉、琉度羅丹は副軍団長として、階級は大佐。

彩花紫は軍師として、階級は少将とした。

大隊長は中佐、副大隊長は少佐。

中隊長は、少佐または大尉、副中隊長は中尉

小隊長は、中尉または少尉、副小隊長は一等兵とした。

大隊、中隊、小隊に副隊長を設けているのは、戦闘で隊長が戦死または、負傷して、指揮が執れなくなったときに、引き継ぎをする為である。

中隊長と小隊長が階級がだぶっているのは、副大隊長や副中隊長と、役職を兼任している者がいるからである。

海上部隊としては、重然、阿智、蔚海が第一、第二、第三艦隊を率い、階級を大佐とした。

また、彼らが指揮するであろう、新型の戦闘艦は現在建造中であった

新型の戦闘艦は、日魅子が元の世界での帆船の設計を流用し、方術をも取り入れた物で、この時代では、かなり強力な船であった。

「とりあえず軍の編成としては、こんな物ね」

日魅子は、自分とキョウで書いた、九洲の地図を見ながら呟く。

人材の問題は、彩花紫達を仲間にしたことで、ある程度解消できていた。

「まず、復興軍を立ち上げたら、速やかにどこか大きな街をそうね、当麻の街を落としましょう。そうすれば、勢力を拡大できるわ。それと新造艦の方はどうかしら?」

「そちらは、ある程度数が揃うのに半年かかるそうです」

「なら、船が揃い次第、決起するわ。皆もいいわね」

伊雅達は頷く。

耶麻台国が滅んで15年、ついに耶麻台国復興軍が立つときが、近づいたのだった。