火魅子伝〜霊狩人〜第7話(火魅子伝×魂響)
日時: 05/22 22:31
著者: ADONIS
URL : http://adonis2000.fc2web.com/

火魅子伝〜霊狩人〜第7話(火魅子伝×魂響)



日魅子が、この世界に来て一年が経っていた。

万全とはいえないが、準備を整えたため、日魅子達は、耶麻台国復興軍を立ち上げた。

それによって、直系の火魅子率いる、耶麻台国復興軍が、九洲中に知れ渡った。

現在は、当麻の街をどう落とすかが、話し合われた。

「まず、耶麻台国の旗を堂々とたてて、当麻の街の近くの砦を幾つか落とします。」

日魅子が地図を見ながら話した。

「砦をですか?」

日魅子の意見に、亜衣が質問する。

「ええ、情報によると、これらの砦に詰めているのは、徴兵された九洲兵ばかりなので、耶麻台国の旗を見れば、投降してくれる筈です。これらの砦を落としつつ、兵力を集め、全兵力で、当麻の街の近くに行きます。砦に守りの兵を置かず、全力で向かえば、其れなりの兵力を当麻の街に向けることが出来ます」

「しかし、当麻の街を落とすと言っても、城攻めをするには、兵力が不足気味ですが」

「作戦は私と彩花紫で、既に考えているわ」

日魅子は、皆に作戦を話す。

「まず当麻の街は、攻城戦を仕掛けるのではなく、敵を街の外に引っぱり出します。具体的には、まず、伊雅の第一軍と星華の第二軍を伏兵として隠します。
これでこちらの、兵力を少なく見せて、敵を油断させます。次に、伊万里の第三軍団は、後方に配置し、私と親衛隊は、囮部隊として、出て来た久根国軍と戦って、わざと敗走し、伏兵のいる場所まで、久根国軍を引っ張り出します。その後、引っぱり出した久根国軍を伏兵部隊で奇襲します。その直後に、伊万里の第三軍が久根国軍に突撃をする。という段取りよ」

「しかし、日魅子様が囮を勤めるとは、危険ではないでしょうか?」

「囮部隊が、囮だと気づかれたら、作戦が失敗するわ。味方に敵の間者が紛れ込んでいるかもしれないから、親衛隊が囮であることは、全軍には知らせません。それに、総大将が囮をやるなんて、非常識だからこそ、隠すには効果的よ」

伊雅の言葉に、日魅子はそう言った。

「それは、分かりますが、敵がそう都合よく街から出てきますか?」

「それも、考えていますわ。彩花紫」

日魅子に言われ、彩花紫が説明を始めた。

「それでは説明しますわ、予め当麻の街に噂を流します。噂の内容は、当麻の街の近くで、耶麻台国復興軍が集結していること、その耶麻台国復興軍の中に、直系の火魅子や火魅子候補の女性がいる事、復興軍の数が四、五百程度であるという事、復興軍が幾つかの砦を落としたことです。これによって、当麻の街の久根国兵を引っぱり出します。これは、清瑞にやってもらうわ」

「わかりました」

清瑞が威勢良く返事をする。

「囮部隊は、まともに訓練をしていない、農民の志願兵で構成します。後は、事前に蹴散らされたとき、敗走する方向、場所を念入りに、指定しておけばいいですわ。そうすれば久根国兵とぶつかれば、勝手に敗走してくれますわ」

「しかし、それだと志願兵達にかなり被害が出ると思うですが?」

伊万里が質問する。

「仕方ありません。訓練も施していない志願兵では、主力の伏兵が勤まるとも思えませんし。囮部隊はその役割上、弱兵で有る方が敵に疑われないでしょうから」


「それと、敵の物見は囮部隊に関しては無視して、伏兵部隊を探る物見は、全て始末します。これは、清瑞さんにお任せします」

「はい」

彩花紫の言葉に清瑞が応じる。

「囮部隊には”火”と書かれた旗を掲げさせます。そうすれば、敵の物見は、囮部隊に火魅子候補がいると思うでしょう。それにこれで、久根国兵と九洲兵を分断する事ができます。久根国兵を撃破後、彼らを仲間に引き込みます」

「まあ、直系の火魅子や、火魅子候補を捕らえに行くのに、不確定要素の九洲兵は、連れていけないからね」

彩花紫の説明を、日魅子が補填する。

「まあ、ついでに言えば、砦に守備兵を置かない事と、久根国が持つ、耶麻台国の残党に対する油断が、伏兵に対する目眩ましになるわ。だからこそ、此方が砦に守備兵を置かずに、全力で当麻の街に来ている事が、ばれる前に敵を誘き寄せたいわ」

彩花紫がそう締め括る。

「さて、当麻の街を落とすのは、この作戦で行くつもりですが、よろしいですか?」

日魅子が皆に聞く。

日魅子の言葉に全員が頷いた。



その後、行われた砦の攻略は、戦いと呼べるものでは、なかった。

砦の兵士達は、久根国に徴兵された九洲兵であったため、耶麻台国の旗を見ただけで、投降した。

こうして、耶麻台国復興軍は、いくつかの砦を落とし、九洲兵達を仲間に加えていった。



数日後、当麻の街では、耶麻台国残党の話で、持ち切りになっていた。

その噂は、最初は街の住民達に、次に九洲兵に、久根国兵にと次々に伝わっていった。

「おい、聞いたか、直系の火魅子や、火魅子候補を捕らえた者は、凄い褒美が出るらしいぜ」

久根国兵が、同僚の兵士に話した。

「それは、無理だと思うぜ。倍率が高すぎら」

「それも、そうだな。だがよ、もし本当に捕らえられたら、本国で栄転ってことも」

「さあな、それより、さっさと出撃準備をしようや」

「ああ、そうだよな」

久根国兵は、出撃に準備に入っていった。

こうして、守備隊長の多李敷率いる、三百の久根国軍が、当麻の街から出撃していった。



耶麻台国復興軍編成

親衛隊 日魅子 隊長 雲母 四百
副長 哥羽茉莉、琉度羅丹

第一軍団 軍団長 伊雅 三百
副長 音羽

第二軍団 軍団長 星華 三百
副長 亜衣、衣緒

第三軍団 軍団長 伊万里 二百
副長 上乃、仁清
軍師 彩花紫

総勢 千二百

構成としては、日魅子親衛隊が、まともに訓練をしていない、農民の志願者が中心。

伊雅と星華の第一、第二軍団は耶麻台国の縁の武将や兵、反久根国勢力の者などで、構成しています。きちんと訓練をしているため、それなりの練度を持っています。

伊万里の第三軍団は、主に山人で構成しています。山人は弓や剣などを、使い慣れていて、それなりに強いです。健脚揃いである。