火魅子伝〜霊狩人〜第8話(火魅子伝×魂響)
日時: 05/22 23:05
著者: ADONIS
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火魅子伝〜霊狩人〜第8話(火魅子伝×魂響)



「日魅子様、久根国兵三百が、当麻の街から出撃しました」

物見から、久根国軍出撃の報告を受けた。

「そう、雲母達にも、詳細に伝えておきなさい」

「はっ」

日魅子の言葉に物見が、出ていった。

「ふう、いよいよかしら」

日魅子は、今まで単独あるいは、2、3人で戦ったことしかなく、このような部隊を率いた集団戦は初めてだった。

今の日魅子の姿は、いつものブレザー服で、かなり目立っていた。

日魅子達は、敵に備えて、丘の上で防衛施設を用意していた。

いくら敗退を偽装するといえど、ある程度は戦わなければ、怪しまれる。

その為、有利な地形と防衛施設を用意して、最もらしく、戦うふりをしなければならない。

親衛隊の指揮は、雲母、哥羽茉莉、琉度羅丹に任せていた。

日魅子は、個人戦闘は得意であったが、集団戦は未経験だったので、実戦での指揮は雲母達に任せていたのだ。

”一匹の狼が率いる羊の群は、一匹の羊に率いられた狼の群を駆逐する”という言葉があるように、弱兵揃いの親衛隊でも、それなりの指揮官を当てれば、何とか戦うまね位は、出きるだろう。

久根国兵が出撃したとなると、戦闘開始も近いのだ。

いよいよか、この戦いが耶麻台国復興軍にとって最初の試練になることだろう。

そして、私の望みを叶えるにしても・・・。

「九峪・・・」

日魅子は、元の世界に残した、恋人の名前を呟いた。



一夜明けた、次の日。

当麻の街から出撃した久根国軍は、耶麻台国復興軍親衛隊に付近に来ていた。

当麻の街の守備隊長の多李敷は、直系の火魅子を捕らえ、本国に栄転したいと思っていた。
今回の反乱で、手柄を立てればそれも十分に考えられるのだった。

はやる気持ちを抑えつつ、多李敷は反乱軍の本陣に突撃を命じた。

「全員、突撃!」

多李敷の合図と共に、久根国軍は突撃を開始した。

後に、伊尾木が原の合戦と、いわれる戦いがこうして始まった。



「弓兵隊構え!」

久根国の突撃に対して、雲母は、掛け無しの弓兵隊を用意した。

「よし、放て!」

雲母は、完全武装した久根国兵を倒すために、弓兵部隊に久根国兵を十分に引き付けてから、弓を放たせた。

「ぐわっ!」

弓兵隊の攻撃で何人かの、久根国兵が倒れたが、他の兵士達は動揺せずに、そのまま突っ込んできた。

突っ込んできた久根国兵は今度は、落とし穴に次々と落ちていった。

しかし、落とし穴の数もそれほど多くなく、多くの久根国兵がそのまま突撃する。

久根国兵が防御用の木の棒を取り除こうとして、一時動きが止まる。

「槍隊、突けえ!」

雲母の命により、槍隊が木の棒を取り除こうとする、久根国兵を突いた。

しかし、それでも久根国兵の動きは押さえられない。

強兵の久根国兵と乱戦に持ち込まれれば、弱兵揃いの親衛隊では、勝ち目がない。

あまり被害が出ないよう、そろそろ撤退しなければならない。

そのとき、防御用に柵が破壊され、久根国兵が押し寄せてきた。

「潮時だな、退け!」

雲母の命により、只でさえ崩れ始めていた、雲母達と親衛隊は敗走していった。

予定の地点へと。



「はあああ!」

日魅子の斬撃により、久根国兵が鎧ごと真っ二つになった。

雲母達が敗走したとき、本陣にも久根国兵が押し寄せていた。

日魅子は、本陣に押し寄せてきた、久根国兵を尽く切り捨てていた。

この時代の武器は、非常に脆く、人間を一人二人程切ると、使い物にならなくなるが、日魅子の持つ禍曲剣は、尋常な武器ではなかった。

完全武装の兵士を鎧ごと、紙の如く、次々と切り捨てていたのだ。

「日魅子様、味方が敗走いたしました」

兵士の報告を受ける。

「では、私たちも逃げるわよ。私についてきなさい」

日魅子はそういうと、予定地点に走っていった。

その場にいた部下達も、日魅子の後ろについていった。