火魅子伝〜霊狩人〜第9話(火魅子伝×魂響)
日時: 06/13 00:57
著者: ADONIS
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火魅子伝〜霊狩人〜第9話(火魅子伝×魂響)



久根国軍隊長の多李敷は、反乱軍が敗走していったのを見て、焦っていた。

折角、火魅子の資格を持つ女性を捕らえる機会なのに、未だに捕らえたという、報告が来ていないのだ。

このまま、逃げられたら、捕らえることが出来なくなる。

只でさえ、国司の命令を無視して、出撃をしたのだ。

手ぶらでは、帰れない。

先ほどの戦闘では、反乱軍の死傷者が思ったほどではない。

多李敷の元には、日魅子がうち捨てた火と書かれた旗が届けられていた。

此処に火魅子の資格を持つ女性がいたのは、間違いない。

だが、先ほどの戦闘では逃げられた。

こうなったら、追撃をして、反乱軍を撃滅しなければならない。

「追撃をするぞ」

多李敷の命により、久根国軍は敗走した反乱軍の追撃を開始した。



日魅子親衛隊は、予定どうり伊万里のいる地点へと合流していった。

「日魅子様、御無事でなによりです」

日魅子と合流した伊万里や彩花紫が、日魅子に話しかける。

「ええ、ありがとう。ところで其方の方々は?」

伊万里の側には、この世界では、魏服と呼ばれる、大陸の服を来た二人の女性と、セーラー服の少女、それに大男がいた。

何故この時代に、セーラー服があるのかは、平行世界ということで無視するとして、他の魏服の女性と少女、それに大男はかなりの強者のようだ。

「彼らは、耶麻台国復興軍に武器や防具等を売りに来た来た商人の一団です。復興軍に加わりたいという人達と一緒に此方に来たんです」

「商人と志願者ですか?」

「こちらが商人の代表の只深さんです」

「うちが、商人の代表の只深です。あんさんが復興軍の総大将どすか?」

伊万里の紹介に、セーラー服の少女が、自己紹介をする。

「ええ、私が元耶麻台国王の実子で、耶麻台国復興軍の総大将。秋月日魅子よ」

「こちらは、只深さんの護衛の伊部さんです」

「どうも、よろしゅう」

伊部は、軽く挨拶した。

「此方は、紅玉さんといって、大陸から来たそうです」

紹介された、紅玉は日魅子に、頭を下げた。

「復興軍司令官である日魅子様には、誠にご機嫌麗しく、祝着至極に存じます」

紅玉は、大陸から来たばかりとは思えないほど、流暢に倭国語で挨拶をした。

「あ、あの、ふこう・・・不幸軍司令官、日魅子様、ごきげんうらめしく・・・あ、ちがうか?う、うらめいらい・・・」

香蘭の方は、倭国に来たばかりで、倭国語をうまく話せないようだ。

ぼくっ

紅玉が娘の頭をどつくと、香蘭を頭を下げさせる。

「私が紅玉、こちらが娘の香蘭ですわ。はるばる、大陸からやってきましたよろしくお見知り置きを」



「ひ、日魅子!!」

日魅子と紅玉が、話しをしているとキョウが、日魅子に話しかけていた。

「なによキョウ?今は話し中よ」

話を中断されたため、日魅子はやや憮然とした顔で、キョウに聞いた。

「この子達、火魅子の資格を持ってるよ」

そういって、キョウは只深と香蘭を指さした。

「「なんですって!!」」

これには、只深や日魅子達も驚いた。



只深と香蘭が、火魅子候補であることで、その場が騒然としたが、今はそれどころではないと、日魅子がその場を取りまとめた。



「雲母、親衛隊で戦える者は、どれ位いますか?」

「そうですね150人位です」

「そんなに、少ないの?」

「ええ、ちゃんと此方に来ていない者、負傷した者、敗走する途中で、武器を捨てた者などが多いですから」

「なら、戦える者に、武器を持たせて、突撃部隊を編成しなさい」

「はっ」

雲母は、日魅子の命令に従い、突撃部隊を編成していった。



「日魅子様、敵と伏兵部隊が交戦いたしました」

物見から報告が入る。

伏兵部隊が、奇襲に成功したらしい。

「そう、では伊万里、当初の予定道理に、突撃しなさい」

「わかりました」

伏兵部隊と敵が交戦したため、伊万里の第三軍団は、直ちに出撃していった。

「雲母、此方の突撃部隊の準備はいい?」

「はい、日魅子様。用意が整っております」

「そう、さて紅玉さん、私たちはこれから久根国軍に突撃しますが、どうしますか?」

「勿論、加勢いたしますわ」

日魅子の質問に紅玉は答えた。

「わいも手伝うで」

続いて、伊部も応じた。

「琉度羅丹、貴方はここで彩花紫と商団の護衛をしなさい」

「はい」

琉度羅丹が答えた。

「では雲母、哥羽茉莉これより、日魅子親衛隊、突撃を開始します」

「はっ」

日魅子親衛隊は突撃を開始した。



久根国軍隊長の多李敷は、苦戦していた。

先ほどの戦闘で、反乱軍を蹴散らし、追撃をしたところ、いきなり伏兵の奇襲を受けたのだ。

伏兵に側面を攻撃され混乱しつつも、何とか反乱軍と交戦していたが、正面から反乱軍の新手が突撃してきたのだ。

そこに、さらに現れた紅玉、香蘭、伊部、日魅子、哥羽茉莉といった一騎当千の剛の者が、久根国兵を文字道理薙払っていった。

復興軍は、ここぞとばかりに攻め込み、久根国軍を壊滅させていった。

多李敷は何とか、崩れ始めた部隊を、持ち直そうとしたが、久根国兵は、朝からずっと戦闘をしていて、疲労しきっていた。

そんな状況では、一端崩れた味方を立て直すことは出来なかった。

「ば、ばかな、こうなったら・・・」

多李敷は、敗北を悟って、部下をおいて、逃げだした。

こうして、伊尾木が原の戦いは、耶麻台国復興軍が勝利した。