火魅子伝〜霊狩人〜第14話 (火魅子伝×魂響)
日時: 07/08 21:22
著者: ADONIS
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「美禰の街が反乱軍三千により包囲されました。敵は飛行機巧まで用意しており、本格的な城攻めに出ています。このままでは五日と持たず、城が落ちる恐れがあります。直ぐに後詰めを」

それだけ言うと伝令は力尽きて、倒れた。

当麻の街奪還の為に、派遣されていた常慶将軍の元へ、美禰の街からの驚愕の報告が来た。

「なんだと!!」

「馬鹿な!!」

次々と幕僚達が驚愕の声を上げた。

常慶将軍は何を言ってるんだこいつと思っていた。

もしやこやつ反乱軍の乱破では、と疑った。

「おい、この伝令を見知っている者はいるか?」

「はい、確かに美禰の街の兵士です」

常慶が尋ねると、兵の一人が、答えた。

となると、本当に美禰の街に反乱軍三千に包囲させている事になる。

「直ちに全軍で、当麻の街を攻めるぞ」

常慶の言葉に、皆が驚く。

「美禰の街の後詰めを送らないのですか?」

「三日で当麻の街を落として、美禰の街に向かう。美禰の街には石にかじり付いても五日持たせろと伝えろ」

常慶は、美禰に三千もの反乱軍がいる以上、当麻の街は、手薄となっていると判断した。

そこで、当麻の街を速攻で落として、美禰に向かう事にした。

こうして、日魅子の敵を分断させる作戦は空振りした。



「何、敵は後詰めを遅らず、全軍で此方に来ていると」

当麻の街の籠城部隊に、真姉胡より驚愕の情報が伝わった。

「日魅子様の偽兵工作が失敗したのか?」

「いえ、そうじゃありません。美禰の街が、三千の反乱軍に包囲させたから、後詰めを送ってくれって、伝令が来ていました」

「なに、それでは敵は三千の部隊に包囲された美禰の街を無視して此方に来ているのか?」

伊雅が驚愕した。

「ともかく、日魅子様の逆上陸部隊にも、この事をお知らせしないと」

彩花紫が提案した。

「そうだな、そうすれば日魅子様が何か手を打ってくれるでしょう」

亜衣もこれには同意した。

「真姉胡すみませんが、日魅子様にもこの事を伝えて下さい」

彩花紫が真姉胡に頼んだ。

「分かりました」

そう言うと真姉胡は、美禰の街の方へ走っていった。



「ほう、敵は後詰めを送らなかったのね」

当麻の街から、真姉胡が来た。

「それと、常慶将軍これ久根国の将軍の名前です。その常慶将軍が五日持たせろと伝える伝令は途中で殺っちゃいました」

「殺っちゃいましたって」

星華が驚くが、

「そうね。その伝令が来ると敵が余計な希望を持つものね。良くやったわ真姉胡」

日魅子が真姉胡を誉めた。

「しかし、こうなったら当麻の街の救援に向かわなければ」

音羽はそう主張する

「でも、美禰の街の久根国兵が私達が撤退するのを、黙って見ているかしら。船に乗り込む時に追撃をくらったら大変な事になるわ」

紅玉が疑問をいった。

古来より、撤退戦は難しいのだ。

寄せ集めの復興軍が、それに耐えきれるとは思えない。

皆が、頭を抱えた。

そんな中、日魅子は笑みを浮かべていた。

「あら、却って好都合よ」

日魅子は余裕を持って話す。

「撤退するわ」

「しかし、日魅子様。それでは、敵の追撃を受けます」

「あら、何も本当に撤退する訳では無いわ。撤退する振りをして、敵の追撃を誘うのよ。後は囮を使い、敵をおびき出して、伏兵で始末するわ」

「おお、流石は日魅子様」

その場の皆が、この窮地を救う日魅子の策に感心した。

「清瑞、確か敵の物見を何人か、捕らえていたわね」

「はい」

日魅子の質問に、清瑞は答えた。

「なら、彼らの前で、兵士達に”久根国の後詰めが来たから撤退する。遅れると置いて行くぞ”と言いなさい。そうすれば、美禰の街の久根国兵は、私達が久根国の後詰めが来たから、急いで撤退していると、確信するはずです」

「わかりました」

「では、囮部隊と伏兵部隊の編成とかは、任せますわ」

皆が頷き、早速相談し始めた。



「何、反乱軍が撤退していってるだと」

留守がその報告を聞いた。

「はい、反乱軍は旗を降ろし、陣を引き払っているようです」

「これは、一体どういう事だ」

「恐らく、常慶将軍の後詰めが来ておるのでしょう。それで、反乱軍が撤退をしているのです」

「おお、そうに違いない」

留守は喜んだ。

何しろこのままでは、城を枕に討ち死にを覚悟せねば、ならなかったからだ。

そこに、敵に捕らえられていた物見からの報告で、味方の後詰めが来たために、反乱軍が撤退していることが確認できた。

「よし、追撃だ」

ここで、手柄を立てたいと思った留守と隊長は追撃を決意した。



音羽が率いる二百の部隊に、城から打って出た久根国兵百五十が追撃に出た。

音羽の部隊が逃げると久根国兵は、ここぞとばかりに追撃を仕掛けていた。

その時、久根国兵が伏兵の奇襲攻撃を受け、更に、9機の飛行艇の爆撃を受けて、大混乱になった。

元々、強兵の久根国兵といえ、寡兵で伏兵による奇襲まで受けると総崩れとなった。

久根国兵は、次々と投降していった。

一方、清瑞は、二百を率いて、空になった美禰の街を奪取した。

その際、街の住民は復興軍を歓迎してくれた為、彼らの抵抗は全くなかった。

こうして、美禰の街は耶麻台国復興軍の支配下となった。