火魅子伝〜霊狩人〜第17話(火魅子伝×魂響) |
- 日時: 07/11 20:59
- 著者: ADONIS
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耶麻台国復興軍が、当麻城奪還にきた久根国軍四千を壊滅させた。
これは、復興軍の幹部や将兵ですら、想像できなかった完勝であった。
この知らせに、当麻や美禰、去飛の街の住民と留守部隊の兵士達は驚愕し、そして狂喜乱舞した。
しかし、日魅子は何時までも喜んでいる訳にもいかない。
日魅子は取り合えず美禰の街に入り、次の戦略を練っていた。
日魅子は、此処で川辺城に一気に攻め込むのではなく。
まず、復興軍の足場を固めておきたかった。
その為に既にいくつかの手を打っていた。
まず、南火向を手に入れて置きたい。
何故なら、南火向を手に入れないと、後方を警戒して、兵力を割かなければならないからだ。
南火向は人口が少なく、道路もあまり整備されていない。
そのため、海上輸送で南火向に行った方が良いだろう。
その為、海人集団との繋がりを持つ星華の大隊にやらせた。
星華には、海人集団と亜衣、衣緒を付けた。
伊万里には、山人独自の繋がりから、刈田の街の近くまである、いくつかの山人の里を味方につけるなり、せめて中立になって貰う工作をして貰っている。
あと藤那も大隊を率いて、刈田の街の近くあたりまでの、村を味方に付ける工作をして貰うことになった。
最も藤那は私の指示を、酒を飲みながら聞いていた為、日魅子は内心かなり不安に思っていたが。
まあ、本人が大丈夫だといっていたので問題ないであろう。
そして、日魅子は美禰の街で、紅玉や伊雅達と共に、残りの兵士達の訓練を行っていた。
その日、日魅子と雲母は親衛隊百名と共に、美禰の街から一キロ程離れた所で訓練をしていた。
日魅子は、美禰の街に向かって行く、複数の魔人の気配に気付いた。
それも、百匹を超えている。
「日魅子様どうなさいました」
雲母が日魅子の様子がおかしい為、尋ねてきた。
「雲母、私は急用を思い出したので、一人で美禰の街に戻るわ。後の訓練は頼みましたよ」
「は、はい」
雲母は戸惑いながらも返事をした。
その返事を聞く時間もない日魅子は、一気に美禰の街の方へ駆け抜けて行った。
日魅子は、親衛隊を連れていっても、足手まといにしかならないので、置いていくことにした。
美禰の街では、突如襲い掛かってきた魔人の集団に混乱していた。
それでも、何とか兵士達が魔人が城に侵入しないように、必死で阻止していた。
その時、一人の兵士に襲い掛かっていた、一匹の魔人の首が切り飛ばされた。
「ひ、日魅子様!」
魔人と戦っていた兵士が驚いた。
何しろ、日魅子がいきなり現れて魔人の首を刎ねたのだから。
「・・・やはり魔人か。しかし、やけに集まっているわね。まあ良い、この剣の餌となるが良いわ」
日魅子の禍曲剣が黒い霧を纏うと、日魅子は魔人達に突撃をした。
魔人達は自分たちに突撃をしてくる、人間の小娘を始末しようとしたが、魔人達の攻撃は日魅子の虚構守鎧(アイギス)で尽く弾かれた。
「ナニッ!!」
自分たちの攻撃が弾かれた事に、魔人達は驚愕した。
そして、日魅子は禍曲剣で、魔人達を切り裂いた。
その戦いは、一方的だった。
魔人達の攻撃は、日魅子の虚構守鎧(アイギス)に防がれて、まったく通用せず、日魅子は人間離れした身体能力と、禍曲剣は恐るべき切れ味で、魔人達を切り捨てていった。
魔人達は致命傷を受けずとも、次々に魂を禍曲剣に喰われていった。
それは、まさに虐殺と言えるものであった。
しかし、日魅子に次々と殺されているのは、本来人間を虐殺している魔人達であった。
魔人達を殺す日魅子の顔には、暗い笑みが浮かんでいた。
禍曲剣と契約してから、日魅子は禍曲剣の剣霊の影響を受けていた。
普段は、それ程でもないが、やはり戦いの時などは、残虐性が増すのだ。
禍曲剣には、剣に喰われた魂の成れの果てである、微細な怨念の集合体が、存在していた。
それは、原始的ながらも意志を持っており、あたかも自我を持っているかの様に見えるのだ。
日魅子は、その怨念の集合体を取り込んで制御していたが、それによって人格面に影響が出ていた。
日魅子のあまりの強さに、逃げだそうとした魔人もいたが、日魅子はその魔人も、容赦なく殺していった。
そして、十分とたたずに、日魅子はその場にいた百あまりの魔人達を全滅させた。
日魅子が襲撃して来た魔人達を全て殺して暫くすると、彩花紫と伊雅がやって来た。
その頃になると、日魅子は戦闘の高揚感を抑えて、落ち着きを取り戻していた。
「日魅子様、大丈夫ですか?」
彩花紫が尋ねてきた。
「ええ、大丈夫です。それより、被害はどれぐらいでているの?」
「残念ながら、百名程死傷者が出ています」
日魅子はその言葉に、頭を抱えたくなった。
折角、兵士を苦労して集めてきたのに、こんな事で消耗するのは勘弁して欲しかった。
「そう、怪我人の治療なども急いでね」
「わかりました」
後は、日魅子に出来ることはないので、大人しく部屋に帰ることにした。
しかし、この魔人達は一体?
日魅子は、百匹もの魔人が襲撃してきた事に、驚きを隠せなかった。
魔人を使役しているのは久根国だろうが、いくら久根国が左道士を総動員しても、これだけの魔人をそう簡単に用意できるはずはなかった。
魔人を召還できるのは、限られた優秀な左道士だけである。
それでも、生け贄を用意したりしないといけない上に、召還後は左道の力が大きく落ちるのだ。
つまり、これだけの数の魔人は簡単にはそろわないのだ。
しかし、魔界の力を得ている久根国だ。
何らかの裏技の様な物で、魔人を大量に召還できたのかも知れない。
その場合は、今後は魔人や魔獣の集団に襲撃されるといったことも、想定しておく必要がある。
そうなってくると、私と紅玉以外は、魔人とまともに戦えないのは痛い。
早急に魔人対策を錬らなければならない。
日魅子は、今後の計画を考えていた。
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