火魅子伝~霊狩人~第21話(火魅子伝×魂響) |
- 日時: 07/15 13:52
- 著者: ADONIS
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「清瑞が行方不明に?」
都督府方面の物見に出していた、清瑞が行方不明になった。
日魅子はその報告を受けたのは、玉が瀬川の合戦の終了直後であった。
この報告に、伊雅が動揺していた。
「どういうこと?清瑞ほどの者が、そう簡単に討たれるとは思えないけど」
日魅子は、不審に思っていた。
乱破としても剣の腕も清瑞は一流だ。
いくら何でも物見もこなせず、行方不明になるとは思わなかったのだ。
「敵の手練れにでも、討たれたのかしら?」
日魅子の言葉に伊雅の青ざめた。
それにしても、この忙しいときに・・・
日魅子は、苛立ちながらも、真姉胡を呼び、清瑞の捜索を頼んだ。
「真姉胡殿、清瑞を探してきて下され!」
伊雅が真姉胡に頭を下げて必死で頼んだ。
あの誇りの強い伊雅が、素姓も知れぬ真姉胡に頭を下げたのだ。
これには、その場にいた日魅子や亜衣も驚いた。
日魅子と亜衣の視線に気付いた伊雅は日魅子に向かって話した。
「日魅子様、清瑞は儂の娘なのです」
「なっ!!」
清瑞が伊雅の娘?
では、清瑞は耶麻台国王家の血を引く女子ということである。
「でも、キョウは清瑞が火魅子候補だなんて・・・」
そこまで言って、日魅子は気付いた。
そう何も王家の血を引く女子なら、誰でも火魅子の資格を有しているわけではないのだ。
「つまり、清瑞は王家の血を引く女子であるけど、火魅子の資格は無いのね?」
日魅子の質問に伊雅が頷いた。
しかし、清瑞が王族とはね。
では、清瑞の復興後の扱いも考えておく必要がある。
いくら何でも、一介の乱破と王族では、待遇が違うのは当然である。
それはともかく、
「真姉胡、聞いての通りよ。清瑞の捜索は重要な仕事だから、しっかり頼むわね。それとこの事は、私の許可があるまで、口外しないようにね」
日魅子は、真姉胡に念を押しておいた。
「亜衣、伊雅だけど清瑞の事で、動揺が激しいみたいね。伊雅は刈田の街で落ち着かせた方がいいと思うけど」
日魅子は、亜衣に聞いてみた。
これには、亜衣も同感であったようだ。
日魅子は他にもやることが一杯あった。
まず、合戦の後始末、主に死者の埋葬、負傷者の治療や捕虜の武装解除と拘束などを進めていた。
取り敢えず、負傷者と捕虜は、監視の一個中隊を付けて、刈田の街に移送する事にした。
これには、伊雅も向かわせた。
実際には、伊雅は動揺が酷く、とても指揮の取れる状態ではなかったので、同行する中隊長に指揮を任せて、刈田の街に送ったのだ。
皆には、伊雅は体調が悪い様なので、刈田に送ったと伝えた。
「別方向に向かった千五百が都督府に引き返している?」
日魅子には、物見より報告が入っていた。
また、都督府で反乱が発生したとの報告も入った。
反乱の首謀者は天目であった。
つまり、千五百の部隊は、天目の反乱を知って都督府に戻ったのだろう。
何にしても、これは好機だ。
まず、天目と千五百の久根国兵が戦っている間に、川辺城を取って、残りの久根国兵軍千を撃破する。
後は、一気に都督府に進撃をして、天目と久根国軍の戦いの勝者の方を、強襲すればいいだろう。
日魅子は四千を率いて、川辺城に向かった。
川辺城は、斗善拍将軍に駐留部隊を預けていたため、残っていた久根国兵は五十程度でしかなかった。
玉が瀬川の合戦で、川辺城には久根国軍三千五百が反乱軍に惨敗したことは既に伝わっていて、戦意を喪失した国主と守備隊長は、川辺城を包囲した復興軍が降伏を要求すると、城門を開きあっさりと下った。
日魅子がわざわざ降伏を要求したのは、城攻めを強行して街の住民に被害を出すのを避けたかったからだ。
また、川辺の街で、復興軍は九洲兵や住民の志願兵を吸収した。
こうして、川辺城を落とした復興軍は、こちらに向かってきていた久根国軍千を迎え撃つことになった。
まず、日魅子は、川辺城に続く街道に防御陣を用意して千五百の兵で守りを固めた。
久根国軍千は、天目から万難を廃して、川辺城に入るように厳命されていた。
その川辺城がすでに復興軍に落とされていることも知らずに、猛攻を防御陣に突撃をする久根国兵に左右から千の復興軍の突撃を受けた。
更に、後方に回り込んだ五百の兵の攻撃により、四方より包囲殲滅させられた。
この久根国兵千は元々紫香楽親衛隊だけに、降伏や撤退もせずに、全滅した。
日魅子は死者の埋葬と負傷者を川辺城に送ると、都督府の方面に進撃を開始した。
日魅子としては、久根国兵と天目軍の戦いの結果が気になっていた。
そろそろ、戦いが行われているはずだから。
天目軍、破れる。
日魅子がこの知らせを受けたのは、都督府に進撃を開始して数日がたった頃だった。
事の顛末はこうであった。
九洲中の久根国兵をかき集めて、東火向に投入した天目は、半島から来た大陸船より傭兵部隊を海上輸送して、一気に征西都督府を占拠した。
そして、都督府長官の紫香楽を討ったのだ。
その後、各地を制圧するために軍を派遣したが突如、久根国軍千五百が引き返してきて、都督府に進撃してきたのだ。
各地の制圧の為に兵を分散させていた天目は、手持ちの三千でこれを迎撃しようとした。
しかし、この久根国軍には、いつの間にか百匹以上の魔人が加わっていて、その魔人達の猛攻で、天目軍は総崩れとなったらしい。
これは、征西都督府が防御にまるで向いていなかったために、天目軍が籠城戦ができなかった事と、天目軍には魔人に対抗できるのが天目一人しかいなかったのが、大きかった。
現在は、久根国兵は天目軍の掃討戦に移っているらしい。
「百匹以上の魔人か・・・」
その報告を受けて、復興軍の幹部達は青ざめる。
確かにそれでは、兵力に勝っていても、大敗するであろう。
日魅子は魔兎族三姉妹を呼びだして、この事を知らせた。
彼女たちは天目が敗北したとの知らせに驚いていた。
「そういうわけだから、貴女達にはこの魔人達の迎撃に協力して欲しいの」
日魅子は彼女たちに協力を要請した。
「でも、下級魔人が百匹程度なら、貴女だけで始末できると思うけど?」
兎華乃が意外そうに言った。
先の魔人襲来の事を言っているのだろう。
「確かに、下級魔人だけなら、百匹程度は私だけでも排除できると思うけど、上級魔人がいたら厄介だもの。それに、久根国がこうもやたらと魔人を召還できるのも気になります」
そう言って、日魅子は兎華乃達に頼むと、兎華乃達は快く引き受けてくれた。
日魅子は、久根国が大量の魔人を、短期間で揃えているのを不審に思っていた。
先の魔人達と合わせると二百以上だ。
いくらなんでも、数が多すぎるのだ。
とわいえ、今なら天目軍との戦いで消耗しているだろう。
日魅子は、一気に都督府に強襲する事にした。
こうして、復興軍は九洲奪還の為に、都督府の久根国軍と決戦をすることになった。
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