火魅子伝 DOD (改訂版)第01話 (H:小説+α M:九峪・キョウ +オリ J:シリアス) |
- 日時: 01/23 03:31
- 著者: 宮
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どこだここは…
一人の青年は目を開け、ゆっくりと起き上がった。
周囲の風景は彼の見覚えのあるものではなかった。
どう見てものどかな自然に満ち溢れた風景。
彼が先ほどまでいた地獄のような世界とはまったく正反対であった。
ふと自分の体に目を向ける。
青と黒で彩られた鋼の鎧。それは確かに彼が所属していた封印騎士団での彼の服装であった。
そしてそれらにべったりとこびりつくどす黒い血。もはや乾いているのか、動くたびに鎧から剥がれていく。
彼は傍らに落ちていた大剣を見つけ、手元に引き寄せた。
そっか…やっぱ夢でもないか。
「あれ!? 君、誰??」
突然彼の思考を邪魔する、やけに明るい声が聞こえてきた。
彼が声の聞こえた方へ顔を向けると、フワフワと浮く変なものがいた。
「なんだこれ…」
「おかしいなぁ。『ひみこ』を連れてきたと思ったんだけど……」
『ひみこ』という単語に彼が反応する。眉をひそめ、鋭い表情に変わった。
そしてゆっくりと口を開く。
「どういうことだ?」
「確かに鈴の反応はあったし…ブツブツ……」
彼の声が届いてないのか、浮いているそれは腕組みをしながら自分の考えに没頭していた。
「おい! 聞いてるのか!!」
浮いているそれをつかみ強引に目の前に連れてくる。
視線を強引に合わせ、睨みつけた。
「ちょっ、痛いって!! 離し…」
「日魅子がなんなんだ!!」
これがなぜ日魅子を知っている?
「落ち着いてー!! 苦しいってばっ!!」
彼はパッとつかんでいた手を開いた。
「ちょっとは気を使ってよね。これでも繊細なんだからさ!」
「日魅子がなんだって!?」
彼はそれの講義の言葉を無視し詰問した。日魅子という名前は彼にとって何よりも大切で、そして命をかけて守るべき『だった』人の名前だったからだ。
「ん〜、日魅子のこと? うんとね、君と同じぐらいの歳の女の子なんだけど……その鈴!!」
それは彼の首にかかっている飾りのついた鈴をみとめてスッと寄ってきた。
「この鈴!! どこで手に入れたの!!」
こいつの言ってる日魅子は俺の知る日魅子か…
「これは…俺の大切な人、日魅子の『形見』だ。お前、日魅子を知ってるのか?」
「そ、そんな…形見だなんて…まさか死んでるなんて…。安全な世界に送ったはずなのに!?」
それはよほどショックだったのか、フラフラとよろめく様に地に落ちてゆく。
『送った』? 話が見えないな…
「とりあえず、情報を交換しないか? お前の言ってることがよく分からない。」
彼は先ほどよりはるかに落ち着いた表情と声で話しかけた。
「俺の名前は、九峪雅比古だ。」
「あっ、オイラはキョウ、天魔鏡の精、キョウ。」
九峪は足元に落ちている鏡を手に取った。
細工が細密にほどこされ、鏡面もよほど大切にされていたのか、光を反射し、まばゆく光る。
「天魔鏡…これか?」
「そうそう、それは神器なんだから大切に扱ってよっ!」
約一時間ほど、九峪はキョウから大体の事情を聞いた。
九洲という地にあった耶麻台国、侵略してきた狗根国、日魅子が女王としてよばれはずだったことなど。
並行世界の存在は彼には理解しがたいことだったが、自分の現状を考えれば信じるほかなかった。
なるほどね…あの光はこういうものだったわけだ…
九峪は口元に手をあて、自分の思考に没頭する。
「次は九峪の番だけど…日魅子が死んだのはなぜ!!」
しかし、キョウはそんな九峪に詰め寄って詰問した。
日魅子…もう少しでここに来れたのに…ごめんな…
『封印』
それは神から世界を守るためのもの。
神は決して世界を生きるものたちを守るものではなかった。
ひとたび封印が解ければ世界は混沌へと突き進んでいくことになる。
かつて二度封印は解かれ、そのどちらのときも世界に大きな被害を与えた。
九峪の所属した『封印騎士団』は封印を守るために結成された世界的な軍事組織だった。
そして、『女神』
封印は女神の身に宿る。
体に封印を宿した証であるオシルシがあらわれ、常に彼女を苦しめた。
しかし女神の死は封印の解除。騎士団は女神とそれを支える神殿を守護していた。
九峪は誰よりも女神に近く、そばで守らなければならなかった。
日魅子に与えられた役目は『女神』だった。
そして『戦争』 封印の解かれた時代から何百年とたち、当時のことを伝えるのは古びた書物と、時を失い幼い姿で生きつづける神官長だけだった。
いつしか言い伝えは歪められ、「女神を手にするものは世界を手にする」というものに変わってしまった。
いくつもの国家が女神をめぐり争い続け、そして封印騎士団も本来の役目を失った。
俺は守りきれなかった。
目の前で日魅子が自害するのを見た。「守ってね」 そう言われたのに。
「そうして封印は解けて、世界は地獄へ、ってわけだ…」
九峪は近くの川で鎧についた血を洗い落としながら語った。この血もすべて生き延びるために、戦場を駆け回った証だった。
「で、逃げてる最中に天魔鏡を見つけたんだな、…たぶん。」
「そっか…」
九峪は洗い終わった鎧をわきに置き、服を絞り、それをぬれたまま着込む。
「俺の話はこれぐらいだな。…すまん。」
「ううん、しかたなかったんだきっと…」
二人とも何かをするわけでもなく、座り込んでいた。
これからどうしようか…
【ここは…どこだ?…クタニ?…】
突如、九峪の頭に重々しい声が響く。何かが九峪に呼びかけてきた。
それは彼の半身。『契約』を結んだものだった。
アンヘルもこちらに来てるのか!?
「ねえ、九峪、」 「悪い。ちょっと待ってくれ。」
キョウの言葉を遮り、九峪は意識を集中させた。
【俺はここだ!!】
ゴオオオオォ!!
ザアアアアァ!!
強烈な風と咆哮が共に九峪とキョウの頭上から降ってくる。
灼熱の炎を思わせる真紅の体。巨大な翼と尾。鋭い牙が並んだ口元からは炎がチロチロともれている。
人知を超えた絶対的な力を待ち、優れた叡智を持ったそれ。
九峪の世界ではこう呼ばれていた。
『ドラゴン』と
「なっ、 なにっ!?龍っ!?」
「アンヘル!!」
九峪はアンヘル、とドラゴンに呼びかける。ドラゴン、すなわちアンヘルは九峪達のそばに舞い降りてきた。
その巨大な迫力のある姿に、キョウは思わず後ずさりするかのように、後方に飛び退った。
「ね、ねえ、九峪!!」
「安心しろ。こいつは俺の友人みたいなものだから。」
アンヘルは物珍しそうにキョウに視線を注ぐ。
『ほお…、精霊か…。』
「ああ、まあな。」
『まあいい。いったい何が起きている?』
「それについては…説明するよ。」
九峪とアンヘルはキョウそっちのけで話し始めた。
無視されたかたちとなったキョウはじっと二人を見る。
巨大な龍と九峪。
キョウにはどちらも強大な力を秘めているように感じられた。
彼らなら耶麻台国の復興の大きな力となるのではないか、そんな考えが浮かぶ。
「ねえ、ちょっといい?」
キョウは自分の考えを話すべく、彼らの会話を中断し、話しかけた。
続く
どうも。お久しぶりです。
まだ忙しいのは変わらないのですが、最近投稿が少ないようなのでとりあえず一個SSを投下。
えっと・・・だいぶ設定を変えました。
アンヘル、つまりレッドドラゴンを投入しました。
やっぱDODならドラゴン出さないと!!って思ったものでw
さしづめ九峪はカイムって感じですね。性格はだいぶ違うけど・・・(DODをやったことがない人はごめんなさい)
九峪の装備もDOD1のカイムの装備をイメージしてます。(DODをやったことがない人はごめんなさい)
まだいろいろと書きたいことはあるのですが・・・その辺は第02話のあとがきで。
多分早く出せるかと。
では!
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