Lovers Ver清瑞U (H:小説 M:九峪×清瑞 J:ほのぼの) |
- 日時: 03/20 00:12
- 著者: 宮
- ○読み始める前に○
この話はLovers Ver清瑞の続きとなります。
前回を読んでなくとも分かるようにしてますが前回を読んだほうがより楽しめます。
「忌瀬さん!ちょっと!」
「もう少し待って!!」
「こちらはどうしたら!?」
「もう!待ってって!」
ここは戦場のように慌しかった。
私は抱えていた汚れた布を多きな籠の中に入れた。
そして忌瀬さんの下に歩いていく。
「ああ、清瑞!いいとこに来た!ちょっとおとなしくさせて!!」
「え、ええ。」
私は忌瀬さんの前で暴れている男に近づいた。
もちろん前から近づくようなまねはしない。
背後からそっと近づき、トンと首筋に手刀を叩き込んだ。
男はその場に崩れ落ちる。
うん。これでしばらく起きないだろう。
「これでやっと手当てが出来るよう〜もう〜!!」
忌瀬さんと数人で男の腕を台の上にのせる。
確かこの人は骨折しているんだっけ・・・
忌瀬さんは手際よく添え木をあて、包帯を巻いていく。
まったく・・・痛みで暴れるなんて・・・ただでさえ忙しいのに時間を取らないで欲しい・・・
「ふう・・・完了!次っ!!」
忌瀬さんは次の患者のところへ飛んでいく。
私はその手伝いをするべく、忌瀬さんのあとを追った。
今私が働いているのは耶牟原城にある国立病院。
九峪様のいた世界では病気になったり、怪我をした人を治療する施設、病院があるそうだ。
今までこの国にはそんな施設はなく、病気や怪我のときは薬師を探したり、民間療法に頼ってきた。
それに薬師が一箇所に集まって治療のために働くという事はない。
大抵薬草などを求めて各地を歩き回る。
だから九峪様が病院の設立を提案した時私達にはそれがどういうものかよく分からなかった。
当時私は足に負った怪我のため乱破を続ける事は出来なくなってしまっていた。
九峪様の妻として家庭に入り、残りの人生を静かに暮らすという選択肢もあったのだが私はあえて病院での仕事に志願した。
実際に働いてみるとこれがまた大変だった。
ほとんどが無償であるため大勢の人たちが押し寄せてくる。
体力には自信があったのだが、一日が終わると一気に疲労が押し寄せてくる。
でも人のためになる仕事というものに私は充実感を感じている。
かつては人を殺すのが役目だったから・・・
「はあ・・・やっと終わったよ・・・」
夕方になりひとまず通常の業務は終わった。
忌瀬さんが椅子の背にもたれ掛かってもらした。
この病院には薬師が五人しかいない。
しかも忌瀬さんはそのまとめ役だし、本当に忙しい。
その働きには本当に頭が下がる。
「清瑞もご苦労様〜」
「忌瀬さんもご苦労様。」
私達は顔を見合わせ笑う。
今日はあとちょっと片づけをすれば帰れる。
当直ではないから残る必要もないし・・・
「清瑞、早く帰らなくていいの?九峪様が帰ってきちゃうよ?」
忌瀬さんがニヤニヤ笑いながら言った。
決して強制されたわけではないけれど私は帰ってくる九峪様を出迎える事にしている。
なんていうか・・・毎日がんばってくる九峪様を元気づけてあげたいと思っているからだ。
「だ、大丈夫ですよ!」
たぶん。
私があわてて帰る準備を始めようとしたそのときだった。
「すいません!!急患です!」
隣の部屋から大きな声が聞こえてきた。
「来ちゃったね〜今日も!」
急患は若い女性だった。
急な発熱でその容態から今夜は入院が決められた。
しかし大きな問題があった。
その女性には・・・生後数ヶ月の赤ん坊がいたということだ・・・
「はあ、今夜は彼女についていてあげないとなあ・・・」
忌瀬さんがため息をもらす。
「で、この子どうしよう?」
忌瀬さんが振り向き、私と目が合う・・・って私!?
「えっ!?私は無理ですよっ!!」
「え〜でも他に人がいないし。」
「他の薬師の人は!?」
「出来ると思う?」
忌瀬さん以外の薬師は皆男だ。
・・・出来るわけが無い。
「じゃ、じゃあ他の人・・・」
私は周りにいる人たちを見るが・・・皆遠巻きに私を見ながら首を横に振っている。
「ね?清瑞しかいないでしょ?」
忌瀬さんがにっこりと笑って言う。
「ほら、将来のためだと思って!」
忌瀬さんのにっこりがにやりに変わる。
私は自分の顔が熱を帯びていくのが分かった。
「な!?」
「ちょうどいいから九峪様も呼んじゃおうかな〜?」
「ちょ、ちょっと!?」
「じゃあ決定ね!」
私がまともに言葉をつむげないうちにすべては強引に決められてしまった。
そんな・・・
ホギャアアア、ホギャアアア・・・
「ええと、泣かないで。ええと・・・どうすれば!?」
部屋の中、先程から赤ん坊は火がついたように泣き続けていた。
私はその子を抱きながらあたふたと部屋を歩き回っていた。
「ええと・・・ええと・・・」
もはやまともな思考が維持できない。
赤ん坊の泣き声はそれだけの破壊力があった。
私は忌瀬さんにどうすればいいか聞きに行くため部屋から出ようとすると・・・
「ほら。食事。」
「く、九峪様!?」
入り口から手に器を持った九峪様が現れた。
・・・・・・しかも伊雅様まで!?
「よっ!がんばってる?」
「う〜む・・・なにやらめずらしというか・・・」
伊雅様は腕を組みながらうなるように言った。
「ほんとになぁ・・・」
って九峪様まで!
「そ、そんな事言ってる場合では!」
「はいはい。ほらその子の食事。」
九峪様はさじで器の中のものをすくうと赤ん坊の口元にそれを運ぶ。
途中で少しこぼれたりしたがそんな事は少しも気にならない。
「ほい、あーん。」
赤ん坊はそれを口に含むと泣きやみ、ゆっくりと食べ始める。
はああ・・・よかった・・・
「赤ちゃんはさあ、数時間おきに食事をするわけよ。しかも一回に食べる量は少ないし。」
「そ、そうなんですか・・・」
たしかに赤ん坊は少しだけ食べるともうさじを口に含まなくなった。
「はあ・・・今日はたぶん寝れないな・・・」
九峪様がつぶやく。
「あ、九峪様はなぜここに?」
「ん?忌瀬がさ、教えてくれたから。」
あの人は〜!!
絶対楽しんでやってるんだ!!
私はここにはいない元凶を呪った。
「う〜む、こうして見ると・・・本当に家族といった感じがしますなぁ・・・」
横で私達を見ていた伊雅様が腕を組みながらしんみりとした調子で言う。
そ、そうなのかな・・・
「いやあ、だって夫婦だし。」
九峪様がさらっと言う。
そ、そんな事をはっきりと言わないでくださいよ!
少しは照れて欲しい。
「そうですな。・・・ところで孫の方は・・・まだですかな?」
「!!??」
「いやあ、がんばってるんだけどな!」
「って九峪様の馬鹿ぁ!!」
「ぬああ!!」
私は九峪様の足を思いっきり踏みつける。
九峪様は足元にうずくまりうめく。
「い・・・いてえよ清瑞・・・」
「そ、そんな事をはっきりと言わなくてもいいじゃないですか!!」
そばでそんなやり取りを聞いていた伊雅は笑みを浮かべる。
「いや、夫婦仲は円満なようで・・・わしも安心ですな。」
まあ、九峪様はやさしいし・・・
確かにそうですけど・・・
けど、恥ずかしい事は恥ずかしいんですから!
私は心の中で絶叫する。
しかしその時・・・
ホギャアアア、ホギャアアア・・・
私の腕の中にいた赤ん坊が泣き出す。
また食事!?
って・・・
「あああっ!!」
私の腕に生暖かい液体が!!
「やべっ!!おもらしか!!」
「か、かえのおむつは!?」
「九峪様、伊雅様いそいでぇ〜!!」
再び混乱が巻き起こった。
「あ〜、なんかもう朝?」
九峪様が窓の隙間から差し込んでくる光を見てつぶやく。
九峪様が言ったように私達はほとんど眠る事が出来なかった。
さすがに伊雅様は帰って寝てもらったが九峪様は一晩中付き合ってくれた。
本当に母親は偉大だなぁ・・・
こんなのを毎日続けたら・・・死んじゃうよ・・・
「う〜ねみい〜」
九峪様は机に突っ伏してしまっている。
私は腕の中の赤ん坊を見つめた。
今は静かに寝ている。
やわらかくて小さくて、すっかり私を信頼してくれているのだろうか・・・
私はこの子に言いようの無い愛おしさを感じた。
「おっはよ〜元気ですか〜」
戸が開いて忌瀬さんが顔を出す。
「あれ、せっかく二人にしてあげたのにらぶらぶしてないじゃないですか!」
「それどころじゃねえっつーの・・・」
九峪様が力なく言った。
忌瀬さんはがっかりした様子を見せると私の傍に寄ってきた。
そして赤ん坊の顔を覗き込む。
「う〜ん、かわいいなぁ。」
忌瀬さんはそう言うと手を伸ばし、私の腕の隙間から手のひらをすべりこませ赤ん坊を抱き上げた。
「あ!」
「もうお母さんの方が目を覚ましたからね。会わせてくるよ。」
そう言うと忌瀬さんは部屋から出て行く。
後に残ったのは・・・
私は自分の両手を見た。
まだ残っているぬくもり。
何も残っていないような気がする。
大切な自分の体を切り取られたような。
そんな気分。
「ほら、俺達も行くぞ。」
いつの間にかそばにいた九峪様が私の肩を叩いた。
笑みを浮かべている。
「いつか本当の子供が出来るって。」
「そうですね。」
私は九峪様の腕を取ると部屋の外へ歩き始めた。
この愛情は全部これから生まれてくる私達の子供に注ごう。
いつになるかは分からないけれど・・・きっと・・・
私はこのときの気持ちを忘れない。
【あとがき】
なんか清瑞っぽく無いなぁとか思ったりしますが清瑞です。
だれがなんと言おうと清瑞です。
文句は受け付けませんw(嘘ですw)
え〜、清瑞の第二弾。
短時間で書き上げたのでちょっと練りこみ不足かもしれません。
ラブ度も低いし。
甘くないしね。
その点ではちょっと不満。
ですが今回のテーマ上これが限界。
次は誰にするかといいますと、たぶん衣緒かと。
しかも舞台は現代!
まあお楽しみにw
では次回!感想もお待ちしてます。
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