火魅子伝 居場所 第3話 (H:小説 M:九峪・キョウ・伊雅・清瑞・星華・亜衣・衣緒・羽江・伊万里・上乃・仁清・ J:シリアス)
日時: 02/19 00:13
著者: 蒼獅

九峪達が、捕虜を救出するための準備をし終えてからしばらくして、林のほうから捕虜を連れた狗根国の一団が神社へ近づいて来た。近くまで来た狗根国の一団から3人の兵士が、神社の中へ入っていった。



ここで現在の九峪達と狗根国兵と捕虜達の状態を説明しよう。
まず九峪は、神社の中(九峪達が作戦会議をする時に使った部屋のこと。)の、天の炎があった部屋に、気配を絶って清瑞から借りた刀を持ち、何時でも攻撃できる様な体勢で居る。
さらに天の炎と、キョウが入った状態の天魔鏡を、すぐ手に取れる場所に置いてあるという状態だ。

次に、伊雅と清瑞は、神社の中へ入るための階段から降りて、神社から少し離れた木の上に上り、気配を消して、敵が通り過ぎるのを待っているという状態だ。

最後に狗根国兵と捕虜達は、階段より離れたところで捕虜を先頭にして、神社の中へ入っていった兵士の報告を待っているという状態である。

以上が現在の九峪達と狗根国兵と捕虜達の状態である。



神社の中へ入って来た3人の狗根国兵は部屋を見渡し、奥の部屋で気配を消して隠れている九峪に気づかず、誰も居ないと思い1人の兵士が外へ出て行った。

「深川様、何処にも異常ありません」

神社の中から出てきた兵士の報告を聞いた深川と呼ばれた女が、兵士に命令した。

「よし、捕虜を連れて来い」

深川の命令で、狗根国兵が4人の捕虜を連れ神社の中へ入るため階段を上ろうと近づいていたら、
突然、階段の上にいた兵士が死体となって落ちてきた。

「何事だ!?」

深川は上を見上げる。そこには、天の炎と天魔鏡を持った九峪がいた。                                                                                                   

「貴様、何者だ!?」

深川は叫ぶが、九峪は天の炎を天魔鏡の鏡面に映し出し、予め設置しておいた人形の方向へ向けた。すると、神社の周りにある木の上で炎が上がった。天魔鏡によって反射された天の炎の光に発火札が反応し、人形に火をつけたのだ。

人形が炎を纏いながら狗根国の兵士めがけて落下してくる。それを敵の襲撃と勘違いした兵士は、剣を抜いて人形に斬りかかった。九峪が次々に人形へ向けて天魔鏡を向けると、樹上から炎を纏った人形が立て続けに落ちてきた。

「うわあ、敵だ!」
「こっちにも敵だぞーっ!」

狗根国兵の混乱した。

「慌てるなっ、これは敵ではない、ただの炎だっ、陣形を乱すなっ」

九峪を見上げていた深川も、いまは味方を落ち着かせるのに躍起になっていて、九峪どころではではなかった。さらに木の上から伊雅と清瑞が、混乱している狗根国兵の背後から襲い掛る。

これにより狗根国兵はさらに混乱する。

半数ほど狗根国兵を倒し終えたところで、炎を纏った人形が全て燃え尽きようとしていた。

「おい、あいつを捕まえろ!」

人形が燃え尽きたことにより、落ち着きを取り戻しつつある狗根国兵に深川が九峪を指差しながら叫ぶと、数人の狗根国兵が、九峪へ向かってくる。

「あんた等に恨みは無いが、此処で死ぬわけにはいかないんでね」

九峪は呟き、天の炎と天魔鏡を神社の入り口付近に置き、刀を構えて階段を駆け下りながら狗根国兵に向かっていった。

九峪と狗根国兵は、階段の半分ぐらいのところで戦っている。
階段ということもあり向かってくる狗根国兵に対し、実際に戦う人数は2人がいいところだ。

九峪は、下からすくい上げるように剣を振ってきた兵士の攻撃を、左半身になって避け、振り上がった敵の腕を、肘の先から斬りとばした後、腹に回し蹴りを当てて吹き飛ばした。
さらに、腹を狙って突いてくる兵士の剣を、右に捻ってかわし、そのままの勢いを使って、突いてきた兵士の顔めがけて後ろ回し蹴りを放つ。

「ぎゃぁぁぁー!」
「うわー!」

肘を斬りとばされた兵士が、叫び声を上げながら下にいた兵士を巻き込み、その後に顔を蹴られた兵士が
続いて転がり落ちていく。
落ちてくる兵士を避けて再び向かって来る兵士を、九峪は、地の利を巧みに使い次々と兵士を倒しながら下へと降りていった。


九峪が、階段の半分ぐらいのところで狗根国兵と戦っている間、伊雅と清瑞はというと、落ち着きを取り戻しつつある狗根国兵に苦戦しつつあった。とその時、林の中から2つの影が飛び出してきた。

「助太刀する!」

凛とした声と共に、飛び出してきた2つの影が、狗根国兵に向かって斬りかかる。
同時に、捕虜の近くにいた兵士から悲鳴が上がり、瞬く間に数人の兵士が倒れる。倒れた兵の体には矢が刺さっていた。

「て、敵だ!?」
「今度は本物だぞっ!」
「どっ、どこから射ってやがる!?」

兵士は叫ぶが、斬りかかって来た2つの影と、2つの影を味方だとすぐさま判断した伊雅達の攻撃により、狗根国兵は全員倒されてしまった。
2つの影が立ち上がった。2人とも女性で、革をなめした服が敵の返り血で真っ赤になっていた。服だけではない。顔まで血に染まっているが、2人の美しさは損なわれることはなかった。
1人の少年が林の中から出てきて、その2人に向かって近づいて行く。どうやら、先程の矢を射ったのは彼のようだ。3人は捕虜にされていた人たちの方へと向かって行く。

九峪が階段から降りて来る途中、捕虜のほうへ向かって行く3人を見つめていると、天魔鏡から出てきていたキョウが驚いたような顔をした。

「キョウどうかしたのか?」

階段を下りながら、九峪がキョウに尋ねると、驚いた顔をしたまま九峪の方を見た。

「あの子、火魅子の資質を持ってる」
「何!?どの子だ?」
「たぶん赤茶色の髪をした剣を持ってる女の子だよ。」
「そうか。だがまだ確定した訳じゃないし、今はそれどころじゃないし後で本人に聞いてみよう」
「うん、分かった」

キョウから聞いたことに驚きを隠せない九峪だが、まだ敵が1人残っているので、一時そのことを頭の隅に追いやった。

「九峪様、キョウ様、ご無事ですか!?」

伊雅と清瑞が九峪達の元へ駆け寄ってくる。2人とも敵の返り血で真っ赤に染まっていた。

「ああ、伊雅と清瑞も大丈夫そうだな」
「ふん、神の遣い様も少しは出来るようだな」
「これ、清瑞。九峪様に失礼であろう」

清瑞の物言いに、伊雅が清瑞を叱るが、清瑞はぷいっと顔をそらした。

「い、いが!?」
「伊雅様!?」
「いが・・・様?」

九峪達の会話が聞こえた捕虜達と3人が、いっせいに伊雅に視線を送った。
全員の注意が伊雅に向けられたその瞬間に、深川が左道の呪文を唱えていた。

「禍し餓鬼」
「あ、しまった」

 清瑞が小刀を投げるのと、左道が放たれるのとほぼ同時だった。

 清瑞の投げた小刀は深川の左の腕に突き刺さり、彼女は思わず片膝をつく。しかし、放たれた左道は、まっすぐに九峪めがけて飛んでいった。

「九峪、避けてっ!」

 キョウが叫んだが間に合うはずもない。九峪は、自分に向かってくる闇の塊を、ただ見ているだけしか出来なかった。とその時、「リーン」という音が九峪の耳に聞こえてきた。そして、次の瞬間「ゴォォォー!」と音を立てながら天の炎が燃え出し、九峪を守るかのように、炎の壁を作り闇の塊を打ち払った。

「なにいっっ!」(今のは!?)

 左腕に刺さった小刀を気にもとめず、深川は驚愕に目を見開いた。一方九峪は、困惑していた。

(さっきの炎の中に女の姿が見えたと思ったんだが?いったい誰だったんだ?)

困惑する九峪をよそに、全員が呆然として九峪を見つめていた。

(九峪は、僕が間違って連れて来たただの人間なのに、火魅子ですらあんなこと出来なかったのに・・・
九峪、君は一体何者なの?)

キョウは、唖然とした顔で九峪を見ながら思う。そう、本来こんなことがあるはずがないからだ。


深川は左腕に刺さった小刀を抜いて腕を押え、みんなの注意が今度は九峪に向けられた隙に後方に飛び、九峪や伊雅達から間合いを取った。

「おい、悪あがきは止めておけ」

途中から戦いに参加した3人の内の赤茶色の髪をした剣を持ってる女が、深川に切っ先を突きつけた。

「そうよ、そうよ。もう残ったのはあなただけなのよ、おとなしく捕まんなさい。まったく往生際が悪いわね」

続けて3人の内の青い髪をした槍を持った女が息巻く。捕虜にされていた女達もすでに解放されており、深川を睨んでいる。

「深川とか言ったな。この亜衣様をこけにした代償は高くつくぞ」

 捕虜にされる時何かあったのか、亜衣という女は、4人の中で人一倍深川を睨んでいる。
だが突然、深川が笑い出した。

「なに?」

 全員が身構えた。

「あっはははは、残ったのがわたしだけだと。そのとおりだな。貴様ら、見事に我が兵達を殺してくれたものだ。だが、それが仇になる」

深川は自由になる右手を懐に突っ込むと、呪文を唱えつつ札を引っぱり出した。 

「根の国、常世の国、大通返し、魂返し、不治なる不「そんなことさせるかよ!」ぐっっ!」

 手にした大量の札を空中高く撒き散らし、呪文を唱えていたが、飛んできた刀により右腕を貫かれ、呪文を唱えきることができなかった。

「おのれっ、貴様!!」

 刀を投げた体勢で止まっている九峪を見つけ睨みつける。

「へっ、呪文なんて唱えさせるかよ!」

九峪は、両腕をだらんと垂らした状態で睨みつけてくる深川に言い放つ。

「九峪様、今のうちに始末しましょう」

伊雅が九峪にそう言いながら深川の方へと向かっている。他の者も深川の方へと向かっていくが、深川はなにやらぶつぶつと呟いている。

「(何なんだ?あの男は?わたしの邪魔ばかりして、くそっ許さんぞ!あいつだけは殺してやる)ころしてやる、ころしてやる、ころしやる、ころしてやる・・・・・・・・・・・・・・」

 ぶつぶつと呟いた後、まるで憑りつかれたかのように同じ言葉を繰り返している深川を、伊雅達は「こいつ、狂ったのか?」と怪訝な顔をするが、ゆらりと立ち上がった深川を見て武器を構え直す。

「此処で貴様らに捕まるぐらいなら死んだほうがマシだ!だがな、ただでは死なん。貴様らを道ずれにしてやる!」

深川の声と共に散らばっていた札が、まるで、意思を持っているかのように、死んでいる狗根国兵の体に張り付いた。
 
むくり。

すると死んでいた狗根国兵が起き上がり、深川の周りを囲むように集まりだした。

「むっ!左道か!」

 叫んだ伊雅が手近の死人兵に斬りかかり、一刀両断に斬り捨てた。しかし、死人兵は体を真っ二つにされても、なお、立ち上がってきた。
 内臓をずるずると引きずり、血を滴らせながらも、攻撃してきた伊雅のことなど無視して、再び深川の元へ歩き寄っていく。

「ちっっ」

 伊雅は斬っても動く死人兵を見て舌打ちする。

「あはははははあはは、そいつらはもう死んでいる。先ほど貴様らが殺したではないか。そして、これから貴様らに目にものを見せてやる」

狂ったように笑い出す深川の周りに、全ての死人兵が集まったのを確認すると、さらなる呪文を唱えた。

「さあ来よ、闇の者ども。闇よりも黒き血を持つ魔界の住人よ、黒き水の民の呼びかけに応えよ」

深川の呪文に反応して、死人兵に張り付いた札が闇色に輝き、次の瞬間には、深川を中心として集まっていた死人兵の姿が消えており、代わりに闇の空間が深川の周りを包み込んでいた。

「なっ、なんだあれは!?」

 驚愕する九峪達をよそに、深川が闇にむかって再び呪文を唱え出した。

「我が呼びかけに応える者には、約束しよう、うまし血、うまし肉、うまし骨を捧げることを」

 深川は、闇にむかって血が出ている両腕を差し出した。
 ぞわりと闇が動いた。
闇が深川の両腕に覆い被さった。
深川は両腕に被さってきた闇を見て口元をゆがめて、九峪達を見ながら最後の呪文を唱えていく。

「さあぁ、来よ、魔界の住人よ。我を贄に我と魂の盟約を交し、我に刃向かう愚か者どもを殺し尽くせ!!」

 呪文を唱え終えた深川の体全体に、闇が覆い被さってくる。
闇の中から肉の千切れる音や、血が噴出す音が聞こえ、九峪達は青褪めた顔で口を押さえた。
数分間そんな音が聞こえてきた後闇が凝縮し、そこから人の形をした者が出てきた。

「一体なんだったんだ?」

九峪達が凝縮した闇から出てきた人の形をした者を見つめていると、だんだんと姿がはっきりとしてきた。
 そこには、先ほど闇に覆い被され、体を食われて死んだと思っていた深川と、同じ姿をした者が立っていた。

「何であいつが生きてるんだ?」

驚愕している九峪達をよそに、深川と同じ姿をした者は自分の体を見ている。

「ふっふっふっ、この体と魂は素晴らしい。力が全身に溢れてくるぞ」

 深川と同じ姿をした者が、自分の体を微笑みながら見た後、九峪達の方へ目を向ける。

「どうした?何をそんなに驚いている?あぁ、何故わたしが、先ほどの女と同じ姿をしているのか疑問に思ったのか?いいだろう、冥土の土産に教えてやる。先ほどの女は、死人兵を贄に我々を呼ぶに値する闇を作り出し、さらに自らの肉体と魂を持って、今回はわたしを呼び出すことに成功したのだ。わたしは実体を持っていないからな、この女の肉体を貰うことになったという訳だ」

深川と同じ姿をした者(以下、深川と同じ姿をした者の事を、深川(魔)とします。)

 深川(魔)は体を動かしながら、さらに続ける。

「それにしても、あの女の魂は下級魔人など足元にも及ばない狂気を持っていてな、わたしとの相性もかなりいい。それに、そう貴様、貴様のことは殺しても殺したりないほど憎んでいたようでな、あの女の好みに合わせて、いたぶって、いたぶって、命乞いをしてからも、いたぶり尽くしてから貴様を殺してやる」

 深川(魔)は九峪の方を見て、にやりと笑い物凄い威圧感を発してきた。




「まずい!!」誰もがそう思った。相手は体を動かして具合を確かめているのか、まだこちらに襲い掛かってはこない。しかしまだ襲い掛かってこないだけで、襲ってきたら、此処にいる全員で戦っても勝ち目は無いだろう。それほどまでに深川(魔)は物凄い威圧感を発していた。



「ど、どうしよう伊万里!?」

 途中から戦いに参加した3人の内の槍を持った女が、剣を持った女に聞くが、体は震え、その声も震えている。

「ど、どうしようって、戦うしかないだろ上乃」
「伊万里の言う通りだよ上乃」
「仁清まで・・・」

伊万里と呼ばれた女が剣を構え、仁清と呼ばれた少年も弓を構えながら、震えていたがしっかりとした声で聞いてきた女、上乃にむかって答える。

「(2人が戦おうとしているのよ!わたしだけが震えているだけじゃ駄目じゃない!)」

上乃はそんな二人を見て心の中で自分を叱咤し、震える手で槍を構えた。




「星華様、どうしましょうか?」

 眼鏡をかけた女が巫女服の女に問い掛ける。

「亜衣、・・・戦うしかないでしょう。」
「やはり、それしかありませんか」

巫女服を着た星華と呼ばれた女が、眼鏡をかけた女、亜衣に答える。

「ちょ、ちょっと星華様、亜衣お姉様正気ですか?相手は魔人なんですよ?勝てるわけ無いじゃないですか」
「そうだよ逃げようよ」
「だがな衣緒、羽江、戦わなくても魔人がわたし達を見逃してくれると思っているのか?そんなわけないだろう?それなら戦ったほうがマシだ」
「お姉様・・・」
「お姉ちゃん・・・」

 亜衣の答えに、引き締まった体をした女、衣緒と、まだ幼い少女、羽江が、慌てて聞き返すが、返ってきた答えと苦渋に満ちた顔の亜衣に言葉を掛けることが出来なかった。

「そうですね、どうせ死ぬなら戦って死んだほうがマシですね」
「羽江、あなたは戦いに巻き込まれないところまで離れていなさい」
「うん、分かった」

 星華、亜衣、衣緒が戦闘態勢をとり、羽江は星華達から離れていった。




「伊雅様どうしましょうか?」

清瑞が伊雅に問い掛ける。

「やはり・・・戦うしかないであろうな」

 清瑞の問い掛けに、伊雅は少し間をおき、答える。

「そうですか・・・分かりました」
「すまんな、清瑞」
「いえ、かまいません」

 伊雅と清瑞は短い会話をした後静かに構えをとった。




「おいキョウ。あいつ魔人なんだよな?」
「う、うん、そうだよ」
「ふ〜ん。魔人ってのはもっと凄いのを想像していたんだがああいうのが特別なのか?」
「うん、多分そうじゃないかな。僕が知っている魔人は九峪の想像どうりのがほとんどだよ、って九峪、何でそんなに落ち着いていられるの?相手は魔人なんだよ!?」
「そう言われてもなぁ、確かに威圧感はバカみたいにあるけど、外見が人間だからかもしれないが、あんまり怖いとは思わないな」
「そ、そう。」

 九峪は、あれが魔人だとはあまり思えなかったのでキョウに聞いてみると、やはりあれは魔人らしい。
この状況を何とかする為、放たれる威圧感を受け流しながら九峪は考える。

「(あいつを相手にどこまで持つことが出来る?ここにいる全員であたっても、持って10分が良いところだろう。何かないだろうか?このままでは死ぬのを待つだけになってしまう。逃げるなんてことはさしてくれそうに無いし、しかもどうやら俺を狙っているらしいし。さて、どうしたものか)」

 九峪は少し考えたが、すぐにいい考えが浮かぶはずもなく、九峪が考えている間に他の者たちは、すでに戦闘態勢にはいっていた。

「(こうなったら、やれるだけやってみるしかないな)キョウお前は天魔鏡の中に入っていろ。巻き添えを喰らうぞ」
「うん、分かった。」

 キョウが離れていったのを確認し、九峪は伊雅の元へと近づいて行く。

「伊雅、俺も戦うぞ」
「なっ!?九峪様正気ですか?相手は魔人なのですぞ」
「分かっている。それに奴は、俺を狙っているみたいだしな。俺が逃げたところで、伊雅達を殺し俺を追ってくるだけだろ?だったら此処で皆と戦ったほうがいい」
「しかし・・・「此処で仲間を犠牲にして逃げるような男が復興なんて出来るはずがないだろ」・・・分かりました」
「すまないな、伊雅」
「いえ」
「清瑞もな」
「・・・はい」

 九峪が伊雅と清瑞と話し終え、深川(魔)に向かって戦闘態勢をとると、深川(魔)が笑みを浮かべて口を開く。

「さて、別れの挨拶はすませたか?まぁそんな事をしなくとも、わたしが全員まとめて殺してやるから必要ないと思うがな」

その言葉と共に、深川(魔)の体から放たれる威圧感が増した。

「さぁ、少しは楽しませてくれよ」

口元に歪んだ笑みを浮かべながら深川(魔)が動き出した。






あとがき
どうも蒼獅です。第3話いかがだったでしょうか?
1話2話よりはマシに書けたと思っています。

今回はオリジナルの展開を加え、深川を退場させることにしました。
また、炎の中に見えた女と九峪とは何か関係があるのかどうか等、今後の話に関わってくる部分も少し出しました。
それから、初の戦闘シーンの描写ですがとても難しいですね。

次回は、深川(魔)との戦いなので、戦闘シーンを沢山書くことになると思いますが、ちゃんと書けるかどうか不安です。

まだまだ未熟な私ですので、できれば感想掲示板に指摘等をお願いします。

ではこれにて失礼させて頂きます。

最後に私のSSに感想を下さりました青樹様、Ken様、七子様、龍虎様、影竜様どうもありがとうございました。