火魅子伝 居場所 第2話(改訂版) (H:小説 M:九峪・キョウ・伊雅・清瑞 J:シリアス) |
- 日時: 07/30 14:40
- 著者: 蒼獅
―九峪が三世紀の世界へ来た直後。九洲、阿蘇山の奥地―
(…………今のは)
桃色の髪を濡らし、露天風呂に浸かっているウサギの耳をしている少女―魔兎族の女王、兎華乃―は、不意に立ち上がり、ある方向を見つめる。
「姉さま? どうしたの?」
「何? 何かあった?」
兎華乃の様子に、同じく露天風呂に浸かっていた金髪のこちらもやはりウサギの耳をした、兎華乃とは正反対と言っていいほどの、スタイル抜群な女性―次女の兎音―と、青い髪の色を持つ、兎音と同等のスタイルを持つウサギの耳をした女性―三女の兎奈美―が問い掛ける。
「……いえ、なんでもないわ(さっきの波動はもしかして…………)」
兎華乃は口ではそう言いながらもなにやら考え込んでいる。そんな姉の様子に、兎音と兎奈美は首を傾げるが、何も言ってこないならたいした事では無いだろうと思い、再びお湯に浸かりはじめた。そんな二人の妹の様子を、兎華乃はちらりと見ながら考える。
(もし、あの波動が本物なら…………これから何か起きるかもしれないわね)
兎華乃はそう思いながら再びお湯に浸かりはじめた。
―同時刻―
兎華乃が波動を感じて考え込んでいる時、此処にも波動を感じた者が居た。その場所は、夜よりも暗い闇が満ちている空間。その場にある者が佇んでいた。
(今の波動は、奴の…………)
その者の姿は闇が満ちている空間の所為で全く見えない。しかし、この場所に居る事は普通の人間では絶対に無理と言い切れる様な場所である。そのことから、この者がただ者ではないことを示している。
(今の波動が本物なら……彼の地へ赴かなくてはならないな……)
その者はそう思うとなにやら呟き、次の瞬間にはその場から姿を消していた。
―時間は少し進み、九峪が三世紀の世界へ来たその日の夜―
二人の女性が星空を見上げた後、お互いを見る。
「亜衣、さっきの星の卦、あなたにはどういう相が出た?」
「私の相には、なにやら『この世に在りし者再び現る』というような内容でした。星華様」
「そう……。私も同じ。……これが私達に関わりがあることなのかは、わからないけど…………何かか起きようとしている。それだけはわかるわ」
二人の女性の内、巫女服を着た女性―星華―は、眼鏡を掛けた切れ目の女性―亜衣―にそう言うと、再び夜空を見上げる。すると亜衣が声を掛けてきた。
「星華様、明日も早いです。もうお休みになりましょう」
「ええ、わかったわ」
そう言って二人は、自分達が一週間ほど前から寝泊りしている廃神社の中へと入っていった。
―九峪が三世紀の世界へ来た翌日―
九峪とキョウは木に体を預けて休憩している。
「ふうっ、……なぁキョウ。後どれぐらいで伊雅って人のところに着くんだ?」
「え〜とね……このぺースで後六時間位かな」
「このペースで後六時間って……昨日から歩きっぱなしで、まだそんなにあるのか? いい加減歩くのも疲れたし何処かで休みたいんだが……」
事実九峪は、昨日から今の休憩まで夜通しで歩き詰めだったのだ。流石に世界中を旅した九峪でも、疲れるのは当然だろう。それは実体化しているキョウも同じなようで、ある提案をしてきた。
「うん。実は僕もそろそろ疲れてきたところなんだ。それに、此処まで来れば後は伊雅の方から探してくれるだろうし……。それでね、此処から少し行った所に耶麻台国の神を奉った神社があるんだ。今は狗根国によって破棄されていると思うんだけど……。そこで休もうと思うんだ」
「わかった。じゃあ早速そこへ向けて出発だ」
九峪は、天魔鏡を持って立ち上がると、廃神社の方へ歩き出した。
一時間程かけて、九峪とキョウは廃神社へたどり着いた。
「後は……この階段を登るだけだな。キョウ、先に行って人が居るかどうか見てきてくれ」
「わかったよ」
九峪の言葉にキョウは頷くと、フワフワと飛んで行く。
「さて……登るか」
九峪は一息つき、目の前の長い階段を登り始めた。
「ふぅ〜。やっと登りきったぜ。まったく無駄に長い階段だったな」
九峪が大きく息を吐き、登りきった階段を振り返って呟く。
「お〜い、九峪〜」
先に行っていたキョウが、慌てた様子で九峪の前まで飛んで来た。
「あそこ、誰かが使ってるんだ!」
「何だって!? ……ん? でもキョウ、あんなところを使ってるんだったら、使っている人たちは耶麻台国の人間ってのが一番確率が高いと思うんだが……どう思う?」
「あ! 言われてみれば……その可能性が一番高いね」
「だろ? それで今は誰も居なかったんだったらあがらせてもらって、使ってる人たちが帰ってきたら話してみればいいだろ?」
「うん。そうだね」
そして、九峪とキョウは廃神社の建物の中へ入っていく。建物の中を調べるため色々見ていた九峪が、ある物を見つけ手にとって見る。九峪が手にした物は…………。
「…………何でこの時代にブラみたいな物があるんだ?」
「……何を言ってるのさ」
と、アホらしい事を真剣に疑問に思って、呆れたキョウに突っ込まれたりしたが……。気を取り直して辺りを見渡す。
「どうやら此処を使っている人は全員女性の様だな。この服の数からして……四人くらいか」
「うん、そうみたいだね」
「じゃあ取り敢えずは……休むか」
「わかった。じゃあ僕も鏡の中に入って休むね」
そう言いながらキョウは天魔鏡の中に入っていく。九峪は、散らかした服を一箇所にまとめ、横になれる場所を確保すると、ごろんと横になり目を瞑る。
―四時間後―
「九峪、九峪、ねぇ起きてよ」
「ん…………どうしたキョウ?」
眠っていた九峪は、聞えてきたキョウの声に目を擦りながら起き上がる。
「あのね、誰かが此処に近づいて来るんだ。それも大勢」
「何!? 大勢ってどれくらいだ?」
「えっと……数十人位かな」
「数十人か…………。キョウ、お前ちょっと見て来い。神器の精なんだから気配を消せば大丈夫だろ? あんまりいい予感がしないんだ」
「うん。僕もそう思う。じゃあ行ってくるよ」
キョウはそう言って飛んでいく。飛んでいったキョウを見送った九峪は、もしものために何か役に立つものはないかと辺りを探し回る。
「ん、なんだここ? ……隠し扉か」
九峪は、壁に小さな扉があるのを発見し、扉を開け、扉の中へ入っていく。するとそこには、不思議な形状をした長細い物が転がっていた。その物の長さは、180センチ位あり、片側の端に、丸い円盤状のお皿のようなものがついている。その中央に細い芯のようなものが飛び出ているのが見えた。この時九峪は気づかなかったが、その燭台の皿の裏側になにやら紋章のようなものが描かれていた。
「これは…………燭台か?」
九峪は呟くとその燭台に手を触れる。その瞬間、紋章が小さく輝きだす。そして、紋章の輝きと共に、九峪の頭の中に、いきなり何かが流れ込んできた。
(…………様。それはいったい……)
(あぁ、これは俺の…………を変化させたものだ)
(なぜそのような事を? …………は、…………様にとって大切な物なのではなかったのですか?)
(もちろん大切さ。でも、もう…………との戦いは終わったから…………は役目を果たした。だからこの姿に変化させたのさ)
(そうですか…………。それで? それは何と呼ぶのですか?)
(これはな……俺の…………から一部とって、何時までもこの国を照らし続けるという思いを篭めて、『天の炎』と名づけた)
(『天の炎』……いい名ですね。ふふふ、この炎が消えない限りこの国は安泰ですね)
(あぁ、そうだな)
そこまで聞こえると、紋章の輝きが消える。それと同時に九峪の頭の中に流れ込んできた会話は聞こえてこなくなった。
「くっ、なんだ今のは? “あめのかぎろい”っていったい…………」
九峪が頭を抑えながら呟く。すると、何時の間にか握っていた燭台からぼんっと音がして燭台の先端が燃え出した。
「な!? どういうことだ?」
九峪は、次々起こる訳の判らない事態に混乱し、―普段の九峪なら気づくはずの―気配に気づかなかった。そして次の瞬間、外から殺気と共に女の声が聞えてきた。
「そこに居るのは誰だ!」
(!!! ちっ、俺としたことが………)
九峪は、内心で愚痴りこれからどうするかを考える。
(外に居るのは…………二人か。しかもこの二人、相当に強い。丸腰の今の俺じゃあ、ちょっときついな……)
「そこに居る奴出て来い! 出てこないなら死んでもらうぞ!」
九峪が考えている間にも、気配が近づいてくる。
「(ちっ、仕方ないな)わかった、出る。こっちは丸腰だ。ちょっと待ってくれ」
「ならば早く出て来い」
九峪はゆっくりと扉から顔を出す。扉の外には剣を持っている女が立っていた。冷ややかな目をしてこちらを見ている。どうやらもう一人は外に居るようだ。
(この娘だけならいいんだが…………いや、今は事を荒立てない方がいいな。キョウが戻って来るのを待つか……それに、俺の勘が正しければ……)
「外に居るあんたの仲間は、もしかして耶麻台国元副国王の伊雅さんかな?」
(!!!)
九峪は外に居る人が動揺しているのがわかった。九峪の言葉を聞いた女は目を見開き、九峪に剣の切っ先を突き付ける。
「!!! 貴様……何者だ!!」
「俺か? 俺は神の遣いさ」
「!! ふ、ふざけているのか貴様!」
九峪は、相手を警戒させないようにと思い、微笑みながら答える。場違いな九峪の微笑みに、女は一瞬言葉に詰まるが、馬鹿にされていると思ったのか女の殺気が増した。その時、外から男の声が聞えてきた。
「待て、清瑞。私が話そう」
「は、ですが…………」
「よい。お前は下がりなさい」
「…………はい」
男が剣の切っ先を九峪に向けている女―清瑞―を下がらせ、中に入ってくる。男は、九峪―正確には、九峪の握っている『天の炎』―を驚愕した顔で見つめている。
(な、何と!? 『天の炎』が燃えているだと!? し、信じられん。信じられんが……現に燃えている以上信じるしかあるまいな。だとしたらこの青年はいったい…………)
「ん、どうした? これが燃えているのがそんなに不思議なのか?」
九峪の問い掛けに、男ははっとなって九峪を見つめる。そして跪くと頭を軽く下げる。
「あなたは何者ですか? あなたが今持っている燭台『天の炎』は、本来耶麻台国の女王、火魅子様しか燃やす事が出来ないはずなのです」
「(な!? これが『天の炎』だと!? ……ってこのことについては後回しだ。それより確かキョウは……)俺は耶麻台国八柱神の頼みにより遣わされた神の遣いなのさ(って言ってたよな)」
九峪は、自分が握っている燭台が『天の炎』という先程頭に流れ込んできた会話の中にあった言葉だと気づき驚愕するが、顔には出さず、尋ねてきた男にキョウから予め教えてもらっていたことを口にする。すると男はいきなりひれ伏した。
「はあああっっ」
「い、伊雅様?」
ひれ伏した男―伊雅―を見ると、清瑞が困惑した声で伊雅の名を呼ぶが、伊雅はまるで聞こえていないようで、話し続ける。
「であれば、『天の炎』も燃えるはず! おお、なんとありがたいことだ!!」
「い、伊雅様、そのようなこと軽々しく信じてもよいのですか?」
「馬鹿なことを言うでない、清瑞。『天の炎』が燃えているのが何よりの証拠だ」
「はあ、まあ、しかし、…………(なんでこの男はこんな状況でも笑っていられるんだ?)」
清瑞が九峪に疑念に満ちた視線を向けてくる。しかし九峪は、伊雅がいきなりひれ伏したのには驚いたが、すぐに笑顔になり、ひれ伏している伊雅に話し掛ける。
「とりあえず、伊雅さんでいいのかな? 何時までもそうしてないで顔をあげてくれ。話が出来ない」
「しかし、……「いいから」……わかりました」
伊雅は顔をあげ、ずりずりと下がっていく。九峪は、隠して置いてあった天魔鏡を持ち、伊雅達の側へ近づいて行く。その時、外からキョウの声が聞えてきた。
「九峪〜大変だよ〜!!」
伊雅と清瑞は、聞えてきた声にはっとなって振り返る。そこにはフワフワと飛んでくるキョウがいた。
「な、なんだ貴様!?」
「なんだはないでしょ。これでもおいらは耶麻台国の神器の精なんだから!」
「ま、ま、まさか!?」
「やあ、伊雅。こうして逢うのは初めてだね。蒼竜玉は無事だったようだね」
伊雅は、懐から玉を取り出してみる。すると、その玉―蒼竜玉―が元は深い蒼色から真紅に変わっていた。伊雅は目を見開いてキョウを見つめる。驚いている伊雅を見ているキョウに九峪は話し掛ける。
「キョウ、一応確認しなくちゃいけないだろ?」
「あ、そうだね」
九峪の言葉を聞いてキョウは頷く。そして九峪が、いまだに驚いている伊雅と、キョウを見て困惑している清瑞の方へ話し掛ける。
「さて、確認するけど、あんたは耶麻台国元副国王の伊雅さんであってるよな? で、そっちの娘は?」
「その通りです。神の遣い様。そして、こちらは清瑞。私の護衛役をしている乱破でございます」
「ん? ……キョウ、乱破って?」
九峪は小声でキョウに尋ねる。
「九峪の世界だと工作員とか、スパイとかのようなものかな」
「ふ〜ん……」
九峪はキョウの答えを聞くと話を進める。
「じゃあ今度は俺だな。俺の名前は九峪。さっきも言ったけど、耶麻台国の神の遣いだ。この世界に来た目的は耶麻台国を復興させることだ」
「はあああっっ、ありがたいお言葉。神器の精と神の御遣いに来ていただけた以上、耶麻台国復興は果たせたも同然」
九峪がそう言うと伊雅は再びひれ伏した。次にキョウが話しはじめる。
「まだだよ伊雅、火魅子がいる。耶麻台国を復興するには、火魅子が必要だ。そうだろ?」
「まことに」
「でね、その火魅子の資質を持つ娘がこの近くまで来てるんだ」
「何ですと!?」
伊雅は、キョウの言葉に思わず立ち上がる。隣の清瑞も腰を浮かしていた。
「あれ、僕の能力忘れたわけじゃないでしょ?…………ん」
キョウは不思議な顔で清瑞を見つめた。そして、次に伊雅を見る。伊雅は、キョウの目を見つめながら重々しい様子で頷く。
「もちろん忘れるはずもございません。ですからそのことに関しては改めて後ほど詳しく…………」
「あ、うん、わかった」
「ありがとうございます」
二人の只ならぬ様子に、清瑞は困惑する。その様子を見た九峪は……。
「(この二人訳ありか?……でも今は……)それで、キョウ、さっき言ってた火魅子の資質を持つ娘が近くまで来てるってのは?」
「あ、うん。あのね、此処に近づいてくる一団がいるんだ。狗根国の兵士が四、五十人、それに捕虜が四人、四人とも女の子だよ。それでね、その捕虜の中に火魅子の資質を持った娘がいるんだ。誰かはわからなかったけど、間違いないよ」
「では、すぐにお助けせねば……」
伊雅の言葉に、キョウは頷く。
「でもね、さっきも言ったように、狗根国の兵士が四、五十人位いるんだ。それにこっちの戦力は、伊雅と清瑞の二人だけ……「おいキョウ。俺も戦うぞ」……へ?」
キョウは、九峪の言葉の意味が分からず間抜けな声を上げる。
「え、ええ〜〜!! な、何言ってるのさ!? ダメだよ! 九峪にもしもの事があったらどうするのさ!?」
キョウが、慌てて九峪を止めようとするが……。
「大丈夫さ。こんな所で死ぬつもりなんてさらさらないしな。それに伊雅と清瑞っていう仲間も出来たんだ。大丈夫だって」
九峪は笑顔でそう答える。
(九峪様は、私達のことを仲間だと……なんとありがたい言葉だ!!)
(伊雅様はともかく私のことまで……私など一介の乱破に過ぎないのに……こいつ、いやこの方は……)
九峪の言葉と笑顔に、伊雅は嬉しさと頼もしさを感じ微笑む。清瑞は、自分のことまでも、仲間と言ってくれたことに、驚きと嬉しさを感じ、九峪の笑顔に僅かに頬を染めながら九峪を見つめる。同じくキョウも、九峪の笑顔を見て、止まりそうにないと思い、渋々諦める。
「と言っても、……とにかくもう少し情報がいるな。キョウもっと詳しく教えてくれ」
「わかったよ」
キョウは、九峪達に捕まった捕虜や、狗根国兵がどのような配置で此処に向かっているのか話し出した。
「………………って感じで此処に向かって来てるんだ」
キョウの話を聞き終えた九峪は、腕を組んで考えている。
「う〜ん、キョウ。後どれ位でその一団は此処につく?」
「たぶん一時間半位で階段の下ぐらいだと思うよ」
「そうか…………よし! 伊雅この建物の中で何か使える物はないか?」
「そうですな…………ん? これは火砕岩……」
九峪に言われて、伊雅はあちこち見て回る。五分くらい見て回ると、伊雅の目に箱に入ったある物が目に入り、その物の名を呟く。
「伊雅、その火砕岩ってのは何だ?」
「火砕岩とは、衝撃をあたえると炸裂する岩のことです。ただ、かなりの衝撃を与えないといけませんが……」
「その衝撃はどの位必要かわかるか?」
「この位の大きさだと…………」
伊雅が考えていると、横から清瑞が答える。
「この位の大きさだと、此処に入る前の、あの階段の上から落せば、炸裂すると思います」
「そうか……わかったよ。ありがとう清瑞」
「いえ……(うっその笑顔は反則だ……)」
答えてくれた清瑞に、九峪が笑顔で礼を言うと、清瑞の頬が僅かに赤く染まる。清瑞が九峪の笑顔に頬を染めるのを見た伊雅は、目を見開いて清瑞を凝視する。
(なんと! あの清瑞が頬を染めるとは…………確かに九峪様の笑顔は、惹かれるものがあるとはいえ……まさか清瑞が普通の女のような反応をするとは……しかもさっき逢ったばかりだというのに……。もう九峪様に惹かれているということなのか……)
そう思いながら、清瑞を優しい目で見つめる。九峪は伊雅の思っている事など知らず、さらに話しを続ける。
「じゃあ、此処を使っていた人には悪いけど、この火砕岩を使わせてもらおう。伊雅と清瑞は、階段が良く見える位置から、持てるだけ火砕岩を持って待機してくれ。そして、俺が天の炎の炎を、天魔鏡で反射させて二人に合図を送るから、二人はその合図と共に、最後尾を狙って火砕岩を全部落してやれ。もちろん勢いをつけてな」
「はっ」 「はい」
「次に、火砕岩を全部落したら、伊雅は狗根国兵を逃がさない為に背後から一人残らず殲滅していってくれ。俺は前から殲滅していくから。清瑞は、俺と伊雅が狗根国兵の相手をしている間に、捕虜を救出してくれ」
「「わかりました」」
「じゃあ早速準備に掛かってくれ。あと伊雅、刀を貸してくれないか?」
「わかりました。どうぞ九峪様」
「ありがと」
九峪は伊雅から刀を受け取り腰に差すと、二人を真剣な表情で見つめる。
「今回の戦いは、捕虜の救出と敵を一人残らず倒さなくてはダメだが…………二人とも無茶をするなよ。いいな?」
「「はっ!」」
伊雅と清瑞は、九峪の最後の言葉に笑顔を浮かべると、持てるだけ火砕岩を持ち、建物の中から出て行く。二人が出て行くと、キョウが話し掛けてきた。
「ねえ九峪。本当に戦うの?」
「ああ、俺が此処で、敵の注意をある程度引き付けないとダメだからな。そんなに心配するな。あの二人は相当強いし、俺は少し時間稼ぎをするだけだ。じゃあキョウ。お前は天魔鏡の中に入っていてくれ」
「うん。わかった……気をつけてね」
「わかってる」
キョウは天魔鏡に入っていく。九峪は天の炎と天魔鏡を持って建物の奥へと入っていった。
あとがき
どうも蒼獅です。第二話改訂版如何でしたか?
話の内容はあんまり進んでいませんが、魔兎族三姉妹や、もう一人の人物。彼らは何か知っているようですがそれはまた後ほど……。
それと、第三話も改訂版を出す予定です。
では、これにて失礼します。何かあれば、感想掲示板の方へお願いします。
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