第1話『こんな運命も珍しいもんだけどな』


9月―――

季節は夏。そよそよと心地よい風に背中を押されて、渚耕介は引っ越してきたばかりの街をぶらぶらと歩いていた。

彼、渚耕介は、艶のある美しい黒髪を肩まで伸ばし、耳にピアスを開け、首には十字架をかたどったネックレスをつけているという、どこぞの不良っぽい格好だったが、不思議とそんな感じはせずに、むしろ、どこか人懐っこそうな感じだった。

「…………」

黙って、どこを目指すわけでもなくぶらぶらする。

前に住んでいたところではこんなことはできなかったな―――

彼は、そんな当たり前のことを、幸せだと感じている。

「…………」

道路を挟んで隣にある歩道を見ると、仲の良さそうな男子と女子が、笑いながら歩いている。

あの制服を見る限り、澄空だろうか?

「…オレが転校するところかぁ……」

彼がそんなことを、微笑混じりで言った時、彼はようやく、目前まで迫ってきている通行人に気がついた。

「!?」

この距離ではかわせなかった。流石の彼でも、頭が理解していても体がついていかなかったのだ。

前の通行人は、どうやら、自分が両手に抱えている多数の本のせいでこっちに気付いていないようだった。

一人は気付いていない、もう一人は体が反応しない。

これから導き出される答えは―――

「あっ」

と耕介。

「えっ?」

と通行人。

―――どしーん!

衝突である。

景気良くすっころぶ通行人、なんとか受身をとる耕介。周りに転がる本、本、本―――

「ご、ごめん!大丈夫!?」

「もうっ!…あ…いえ、大丈夫です」

少しだけ崩した表情を、またすぐに戻す相手の女性。

見る限りでは、自分と同じくらいだろうか?

綺麗なアッシュ・ブロンド(かなぁ?)の腰まである髪。やや灰色のかかった美しい瞳。

そして、どこか冷めたような独特の雰囲気―――

通常の耕介ならば、おもわず見とれているところだが、彼は今そんな状況ではなかった。

「…ごめん、立てる?」

そう言って、耕介は右手をすっ、と女性に向かって差し出した。

女性はその手を、ちらっ、と見てから。

「大丈夫です」

――と言って、手を取らずに立ち上がった。

刹那、耕介の額に無数の脂汗が浮かぶ。

(まずい、これはマジでまずい、まずいまずいまずいまずいまずい!)

この非常にまずい状況を、どうにか打破しようと耕介の頭のコンピューターがフル回転する。

だが、激突のショックで、彼のコンピューターはフリーズしていた。

コンピューターを再起動させる。エラー

画面をリセットする。なぜかエラー

マウスのカーソルも動かない。何も動かない。ただHDはキュイーンと大きな音をたてている。ただそれだけ。完全にバグっている。

(ううう……)

だらだら、と脂汗を垂らして苦悩する彼。その足元で散らばった本を黙々と集める女性。

「……あっ!」

頭のコンピューターは、やっと再起動までこぎつけた。

エラーをチェック。クリア。

眼下の本を集めるために必要なアプリケーションを起動させる。

それも終わった耕介は、かがんで自分も本を集め始める。

女性はそれをまた、ちらっ、と見てから、何もなかったかのように本を集めるのを再開した。

高校生ぐらいの二人が、地面を這って本を集めている姿は、周囲の人からは、さぞ怪しく映った事だろう。

そんなことを気にせず、本を集める耕介。ふと、一冊の本が目に止まった。

(……紅茶の歴史?紅茶が好きなのかな?)



1分後、全ての本を集め終えた彼は、なんとかして女性の機嫌を直さねば!と決心していた。

「それでは」

「あ、待って!!」

本を抱えて、歩き出そうとした女性を呼びとめる。

「……なんですか?」

微妙にイヤそうな顔をして、女性は振りかえった。

うっ―――

しかし、こんなところで退くオレじゃないぜ!

「ねぇ、さっきの謝罪もかねて、そこらへんでお茶しない?」

「結構です」

即答―――

また歩き出そうとする女性。だが、それでも必死に食い下がる耕介。

なぜ、自分がこんなにも未練がましいのか分からないが、なんとなく、この女性とお茶がしたいと本能が告げていた。

「いやいや、おごらせてくださいよ!じゃないとオレの気がすまないからさぁ」

えへへー、と笑いながら耕介は言う。

「……」

怪訝そうな彼女の目。

ここで、彼はリーサルウェポンを作動させる。

「実はさぁ、ここいらでおいしい紅茶がでる店知ってんだよオレ。そこでどう?」

「!」

少しだけ、彼女の表情が変わったのを彼は見逃さなかった。

―――ほほう、図星のようですな。

内心、くくく、と笑みを漏らす。

ちなみに、『おいしい紅茶がでる店』と彼は言ったが。

無論、彼が知っているのは『噂で聞いたおいしい店』ではなくて、『一息ついでにたまたま入った店』である。

―――まぁ、アイツがいれてくれたのよりうまかったからな。

彼は少しだけ苦笑した。

彼女はあきらかに興味を示していた。こうなれば後にはひけない。

「ねぇ、どう?」

彼女は少しだけ思案する素振りを見せてから。

「……やはり、お断りします」

と言った。

耕介は、がっくりと肩を落とした。

「……ああ、そう。じゃ、オレもこれ以上は誘わないよ。あ、でも、一応名前だけ教えてよ。オレは渚耕介。君は?」

彼女は、また考える素振りを見せてから、躊躇いがちに言った。

「…双海詩音です」

「双海…詩音か。ふーん

彼は、ありがちに『いい名前だな』なんて言いかけたが、さすがに恥ずかしいからやめた。

「高校生?」

「……はい。今はまだ入っていませんが」

ちょっと待て、それは話しが食い違っている。

「……はい?じゃあ中学生?」

「いえ、今月転校してきました」

ほほう、オレと一緒だな―――

耕介は、ちょっとした親近感みたいなものを感じていた。

「へぇ、それじゃあオレと一緒じゃん。オレは澄空ってとこに転入するんだけど、君は?」

「え?…澄空…ですか?」

彼女の表情に、ちょっとだけ驚きが混じる。

彼は、それからいろいろな能力、NT能力や念動力等、はたまた手力を経て、一つの答えを導き出した。

―――まさか!

「……もしかして……君も?」

「…はい、澄空学園2年に転入する予定です」

「……マジ?」

こんな偶然が起こるなんて―――

よく、マンガでこんな出来事が起こるが、まさか本当に実現するとはな。

自分のヒキの強さに少しだけ驚く耕介。

「……へぇ、じゃあさ、前言撤回するわ。やっぱり紅茶飲みに行かない?偶然続きにさ」

「……いえ、やはりやめておきます」

「あ、そう……こんな運命も珍しいもんだけどな…」

耕介はふぅ、とため息をついた。

「はい、そうですね。それではごきげんよう」

そう冷たく言うと、彼女はすたすた、とどこかへ歩いて行ってしまった。

ぽつん、と取り残された耕介。また頭のコンピューターが停止する。

だが、今回は簡単に再起動できたようだ。

(双海詩音か……ま、いいっかぁ……)

そうは言ったものの、9月の風は、少し、彼の心には肌寒かった。

第1話終わり




座談会もどき(すんませんっ!!)

耕介「どうも〜!作者のネタがないので、ぱくらせていただきました〜!」

作者「こら!そういうこと暴露するな!!」

耕介「でも本当だろう?」

作者「くっ……」

耕介「まぁ、それはおいといてぇ。この駄作についての説明を少ししたいと思いますねぇ」

作者「それナイス」

耕介「私が主人公の渚耕介です。まぁ、ありきたりな設定の高校2年生ですな。ちなみに、
   名前の原案は、名字は好きなアニメのキャラからパクり、下は作者の友達からです
   ね」

作者「そういうことですね。ちなみに、話しの流れも、某PCゲームをぱくってる可能性
   があります。」

耕介「まぁ、ようはあんまりオリジナルじゃないってこと?」

作者「くっ…そうだ」

耕介「…まぁ、いいか。それじゃあ、次回予告を双海詩音さんに!!」

詩音「次回、OMOは、『渚耕介』です。なにか、某『未曾有の不条理の渦』っぽいですね」

作者「ネタがないからな、それじゃあさようなり〜♪」