秋の風が吹いていた。涼しい風が俺と詩音の頬を掠めてゆく。 智也「もう秋なんだなぁ。そういえば、俺達が付き合いだしたのは2年前だったな、詩音」 詩音「そうね、智也」 俺達が付き合ってもう2年が経とうとしている。色々あったなぁと今懐かしく思っている。 あの時の事はもう忘れられない想い出となって俺達の心の中を駆け抜けていた。 智也「もうすぐ、あいつの..................................彩花の命日だな」 詩音「ええ、そうね」 智也「行かないと夢の中でどやされそうだしな」 詩音「もう智也ったら.........................フフフ」 智也「あっそーだ。みんなも誘って行こうぜ。久しぶりに会いたいしな」 詩音「ええ」 この彩花の墓参りが俺と詩音にとって忘れられない想い出になろうとはこの時 俺は思っても見なかった。 そしてこれが俺と詩音の第2のスタートだった。 -------------------------------------------------------------------------------- -------------------------------------------------------------------------------- -------------------------------------------------------------------------------- ----------------Shion's Story 第1話---------------- 『snow again』 詩音「智也!早く早く!」 智也「ちょ、ちょっと待ってくれ!詩音」 詩音「もう、早くしないと置いて行くよ〜!みんな待ってるんだから」 詩音が家の前で急かしている。今日は彩花の墓参りの日だ。だが、例のごとく俺が寝坊して しまったために完全に遅刻だ。 (はぁ................................俺って大学生になっても寝坊するのね............................それにしても みんなど〜してっかな〜?) あれから2年......................みんなそれぞれの道を歩んでいる。 唯笑は少し遠い大学の教養学科に通っている。あいつ突然 唯笑「唯笑、保母さんになる〜!」 とか言って。かなり不安があるが、まぁあいつなら大丈夫だろう。 信はこの近くでは1番レベルの高い理工科の大学に通っている。何を とちくるったかは知らないが事実である。まぁ、3年になって急にガリ勉始めたからな 当然と言えば当然か。 みなもちゃんは推薦で美大が決まって、今絵描きのバイトをして学費をためている。 大変だなと言うと みなも「そんな事ないですよ〜。これでもけっこう楽しんでるんですから〜」 と笑って答えていた。 かおるは高校在学中に受けたアイドルオーディションで賞を取り、卒業してすぐ芸能界に デビューした。 しかもその濃いキャラでたちまち人気者になり、今はもうすっかり人気アイドルとして TVに出まくってる。 小夜美さんは今も澄空学園の購買部に顔を出している。みなもちゃんが言うには みなも「小夜美さん、また妖しげなパンを購買部に出したんですよ〜。 しかもそのパンのおかげで何人か病院送りにされたとか............................... みなもは食べなかったですけど、聞いた話によるとあれは人間の 食べるものじゃないって.................ちょっと怖かったです」 らしい。何か俺らがいた時よりひどくなってるような............................ あまり深く考えないようにしよう。 そして、俺と詩音は近くの大学の英文科に通っている。最初は英米文学なんて あまり好きじゃなかったけど、今では英米文学もいいなと思っている。 詩音「智也」 智也「ん?どうした、詩音」 詩音「もうすぐ着きますよ。ほらみんなそこに」 考え事してるうちに、着いてしまったらしい。澄空駅の向こうでは、みなもちゃん、 信、唯笑が俺達を待っていた。 みなも「あーっ!智也さーん、詩音さーん、遅いですよ〜!」 信「おせーぞ、智也!」 唯笑「もう、ど〜せ寝坊でもしたんでしょ。まったく.................................」 智也「悪い」 唯笑「はぁ...............................大学生になっても寝坊だけは変わらないね」 ったく、唯笑のやつ言いたいこと言いやがって。 詩音「本当、起こすの大変だったんだから」 智也「うっ.........................詩音まで言わなくても」 詩音「フフフ、冗談ですよ」 信「さぁ、こんな所にいてもしょうがない。早く行こうぜ」 信「しっかし、音羽さんと小夜美さん、来れないなんて残念だな」 墓地に向かう道を歩きながら、信が言った。 智也「ああ、そうだな」 かおるはTVの収録があって行けなくなった。忙しいからしかたないけど。 小夜美さんは新しい購買パンの開発に忙しくて行けないと信に言ってきたらしい。 しかし、小夜美さんはまた妖しげなパンを作るのか...........................想像するのやめよう。 詩音「智也」 智也「何?詩音」 詩音「彩花さんに会うの久しぶりです」 智也「そうだな。俺たちの元気な姿を見せてやらないとな」 詩音「ええ」 唯笑「唯笑ね〜、おもしろい夢を見たんだ〜」 突然、唯笑が妙な事を言い始めた。 信「えっ?どんな夢?」 みなも「聞かせて、唯笑ちゃん」 唯笑「うんとね〜、うんとね〜..................................................」 智也「どうした、唯笑?」 唯笑「.............................」 詩音「どうしました、唯笑さん?」 唯笑「てへ。忘れちゃった」 一同「..................................................」 バカか、お前は..................... 智也「あっ、そー言えば夢で思い出したけど俺も昨日変な夢を見たんだ」 一同「変な夢?」 智也「ああ。なんか広い草原の中にいて、その中には幼稚園くらいの男の子が1人、 女の子が2人いたんだ。誰なのかは分からなかったがな。そして3人で広い草原の 中を走り回ってた」 みんなは俺の話を静かに聞いていた。しかし、前にも似たような事が あったような........................ 信「どうかしたか?」 智也「いや、別に」 詩音「智也、続きは?」 智也「ああ、それがな................................そこでぷつりと途絶えたんだ」 信「途絶えた?」 智也「ああ」 信「な〜んだ。俺的にはギャグを期待してたんだけどな〜」 智也「唯笑と一緒にするな」 唯笑「あ〜、智ちゃんひど〜い。詩音ちゃんもそう思うでしょ?」 唯笑は顔を膨らませながら詩音に同意を求めた。無駄だな、唯笑。 詩音「フフ、そうですね」 へっ? 智也「そりゃないぜ、詩音」 詩音「フフフ、冗談ですよ」 それにしても、あの夢はいったい何だったんだろう................................... 唯笑「あれ、雨?」 ふと上を見上げた唯笑が呟いた。いつのまにか、雨がぱらぱらと降り始めていた。 信「おっかしーな、天気予報では晴れだって言ってたのに」 詩音「ええ」 唯笑「うん、そうだね。天気予報はずれたのかな?」 彩花の命日に雨か...............................何かの因果だろうか、それとも...................... 信「みんな、着いたぜ」 信が言ったその先には墓地の入口があった。 唯笑「彩ちゃん、久しぶり。元気だった?」 彩花の墓石に水をかけながら唯笑が言った。幸い雨も小雨だったので、 傘をささずにすんだ。 詩音「彩花さん。お久しぶりです。私たちは元気にやってます。だから、 これからも私たちを見守っててください」 詩音が手を合わせながらそう言った。 そして墓参りも終わり..................................... 信「さーて、墓参りも終わったことだし、智也の家でハデにパーッと盛り上がりますか」 智也「まったく信は宴会好きだなぁ..............................ってちょっと待て!おい信、今どこで やるって言った?」 信「智也の家」 智也「そうさらりと言いのけるなよ..................................ハァ、ったく分かったよ。どーせダメだと 言っても聞かないしな」 信「さっすが、分かってんじゃん。それでこそ俺の親友だ」 そんな事で褒められてもうれしくない。ハァ....................................... 『智也』 智也「えっ?唯笑、何か呼んだか?」 唯笑「ううん、呼んでないよ。どうしたの、智ちゃん?」 智也「いや、誰かに呼ばれたような気がしたんだけど.......................................気のせいか」 いつのまにか俺と唯笑以外は、もう入口で待っていた。早く信たちと合流しよう。 『智也には私の声が聞こえなかったか...........................智也、気をつけて。何か不吉な予感が するの。詩音ちゃん、智也を守ってあげて』 信「智也〜。早く来いよ」 墓地前の道路の向こう側に信たちが待っていた。 智也「おう....................今行く」 そして俺が入口前の横断歩道を渡っているとき、1台のトラックが俺に向かって 走って来た。 詩音「智也、危ない!!」 そう詩音が叫んでももう遅かった。そのとき俺は、トラックと衝突して体が宙を浮いている 状態だった。そして地面に叩きつけられた。 詩音「智也ーーーー!!」 第2話に続く