Space-time jumper〜時を駆けし者〜第三話(G:とらハ3&火魅子伝M:恭也・久遠・キョウ・清瑞・伊雅Jクロス) |
- 日時: 06/08 17:26
- 著者: インフェルノ
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リィーーン…リィーーン……
「ん?鈴の……音?」
いつの間にか眠ってしまったようだ。
「久遠?」
膝の上にいた久遠の重みと暖かさがない事に気づく。
薄暗い床下を目を凝らし辺りを見渡すがそれらしい影もない。
「外に………出たのか?」
久遠が魔獣とかいうものにやられるとは思えないが…………。
「仕方がないか」
俺は腰を上げ地面に書かれた円から外にでる。
「久遠?」
社内で見渡す
社の中はがらんとしていて何もない。
床の上には先程キョウが見ていた女物の服が散乱している。
ふと壁際に置いてある籠や葛篭が見える。
………中に入っているわけがないな。
「久遠」
「くぅーん」
「どこだ?」
薄暗い中を壁に沿って歩いていくと小さな扉があり開いていた。
「さっきは見つからなかったな」
「くぅーん」
「ここにいるのか?」
俺は頭を突っ込んで中を覗き込む。
「くぅん」
久遠が小さな部屋の中で不思議な形状をした細長いものを転がして遊んでいる。
「久遠?」
「くぅん♪」
俺が呼ぶとはじめて気づいたのか久遠は嬉しそうな声を上げて俺に飛びついてくる。
ビタッ
今の俺の状態……小さい扉から頭を入れて覗き込んでいる。久遠はそれに飛びついてきたのだから………
「久遠……何も見えん」
仕方なく狭い空間に上半身を押し込み、扉の枠に乗せた腰を始点にし、 振り子のように久遠がくっ付いた頭を下に振ると、頭が真下に来ると、 床に両手をつき、その勢いで扉の枠から足を抜くと足が部屋の床の上に降りた。
両手でそっと久遠を顔から引き剥がす。
「何で遊んでいたんだ?」
俺は目の前に転がっている細長い物体を見つめた。
片側の端に、丸い円盤状の皿のようなものがついている。
その中央に、細い芯のようなものが飛び出ているのが見えた。
俺はひざまずくと自由になった手で細長い物体を手にした。
それは青銅製らしく青緑色をしており手にずっしりとした重さが伝わる。
「これは……燭台というものか?」
しばらく眺めていると急に「ぼんっ」という音が響いた。
「っ!!!!」「くぅん!!」
手の中にある燭台が蝋燭も油もないのに、丸い皿の中央の芯に小さな炎が点っていた。
「どういう……ことだ?」
ありえない出来事に俺はそのまま固まってしまった。
その時、低く鋭い声が社の中に響いた。
「そこにいるのは誰だ!?」
なっ!
この燭台のせいで気配を消し損ねたか。しかし、どういうことだ?キョウが偵察にでたはずだが………。
「そこに隠れている奴、出てこい」
足音がだんだんとこちらに近づいてくる。
いきなり……か、話が通じるような相手ではないか?
「出てこないのならやむを得んな。清瑞、引っ張り出すのだ。抵抗したら、斬っても構わん」
今度は男の声………一人じゃなかったか……
「わかった。今から出る」
「ならば早く出てこい」
一か八か、か……
「ただし、ゆっくりとだ。妙な動きをしたら、斬り殺す」
女の声は冷徹で「殺す」という言葉に、何の力みもなかった。
まるで、以前の美沙斗さんのように人を殺すのをためらわずに行なうことが出来る人間の声だった。
俺が元の部屋に戻ると黒ずくめの衣装を着た女が立っている。
顔はマスクのようなもので半分ほど覆われていて素顔を見ることが出来ない。
もう一人の……男の方は何処だ?
ふと目線を泳がせると、
「動くな……」
女の殺気が高まり手にもっている剣が俺に向けられる。
「隠れてないで出てきたらどうだ?元耶麻台国副王、伊雅?」
俺の視界の中に男が入ってくる。
「な、何?」
「貴様………何者だ!!」
「何者だと言われてもな、お前達ほど怪しくはないと思うが?」
「こんな廃棄された神社に潜んでいる奴の何処が怪しくないというのだ!? しかも見るからに怪しげな格好をしてるくせに……」
「俺の一族ではこれが戦闘服なんだがな」
これは嘘ではない……父さんはともかく宗家の人たちは黒装束を好んでいた。
「それにおまえも俺と似たような格好をしているだろうが」
「…………貴様は何者かと聞いている」
女の殺気が膨れ上がったその時、
「清瑞、私が話そう」
女の放っていた殺気が不意に萎んだ。
「ですが」
「よい。どうやら狗根国の乱破ではないようだ」
男は俺の前まで来ると頭を一度下げた。
「見れば、この国のお方ではないご様子。あなたは一体何者なのです?」
「俺か?俺は神の遣いだ」
「なんですと!?」
「耶麻台国八柱神のひとり、天の火矛の遣いだ」
「そ、それを証明するものは?」
「今、出かけている」
「そ、そんなこと信じられるわけないだろうが!!」
清瑞と呼ばれた女性が声を荒げ剣の剣先を再び俺に向ける。
「手に持っているものをゆか………っ!?」
「こ、これは?」
二人は俺が手に持っている不思議な熾台を見ると同時に固まる。
「貸せ!」
清瑞は俺の手から熾台を奪うとしばらく炎を見ていたがそっと後ろを振り返った。
「伊雅様、これは!?」
「信じられん……。天の炎が燃えている?」
男はそれをそっと床に置くと、手を合わせ目を閉じ頭を垂れた。 すると、すぐに清瑞もひざまずき、男に倣って燃える炎に向って合掌した。
「天の鳥船、天降ろし、天の八重雲かき分けて、天の御柱、国の御柱、人の御柱平けく知ろしめせ………」
「は、ははあっ、神の遣いとはいざ知らず、申しわけございませんでした」
伊雅は床に額をこすりつけ感激した口調で続ける。
「神の遣いであれば、天の炎も燃えるはず……、なんというありがたいことだ」
「い、伊雅様、そのようなことを軽がるしく信じても良いので?」
清瑞が横から心配そうに訊いたのを伊雅は顔をあげ睨みつけた。
「馬鹿なことを言うではない、清瑞。天の炎が燃えたのが何よりの証拠。 神の遣い以外にこのようなことが出来るのは火魅子様しかおらぬ」
「はあ、まあ、それは……。しかしこの男、神の遣いというには……」
清瑞が疑念に満ちた無遠慮な視線が俺を見つめる。
「確かに……いろいろと制限を受けているが、そこらの人間に負けるつもりはないが?」
「ほぅ……」
清瑞が感心したように目を細める。
「き、清瑞!!」
「安心しろ、伊雅。少々手合わせするだけだ」
「いえ、ですが」
「伊雅様大丈夫です、殺しはしません」
「清瑞、お前まで」
………………俺は柄に手を当てる。
「永全不動八門一派・御神真刀流、小太刀二刀術・高町恭也……参る!!」
まずは………俺の一番の得意で信頼できる技を…………
俺が一歩踏み出そうとした瞬間に、
「大変!大変だよ!!」
俺と清瑞が前かがみになり伊雅が立ち上がり振り返る。
「キョウか……」
「なんだ、貴様は!?」
清瑞が伊雅とキョウの間に入り仁王立ちに剣を構える。
「なんだはないだろう、これでもおいらは耶麻台国の神器の精なんだからさー」
「まさかっ!?」
伊雅が目を見開く、
「やあ、伊雅だね。こうして会うのは初めてだけど、元気、してた?蒼竜玉は無事みたいだけど」
伊雅は懐に手を入れると、手のひらサイズの玉を取り出したまま浮いているキョウと玉を口を開いたまま交互に見やっている。
「そう、おいらは天魔鏡のキョウさ」
「ははあーーっ」
キョウの言葉で我に返ったのか伊雅がようやく口を開くと先ほどよりも深々と床に這いつくばった。
「い、伊雅様?」
清瑞の声には戸惑いが混ざってる。
それもそうか……自分の仕えている主人が二度もしかもどう見ても人間ではない存在に頭を下げているのだから………。
「これ、頭が高いぞ、清瑞。おぬしは知らぬかもしれんが、天魔鏡は耶麻台国王家の七神器のひとつなのだ。 この蒼竜玉と同様のな」
「し、しかし」
「あ、疑ってるね?じゃあ、恭也、見せてあげてよ。鏡は何処?」
「ああ、床下のバックの中だ」
キョウが清瑞を見る
「じゃあ、拾ってきてよ」
清瑞が目で伊雅に聞くと、伊雅は大きく頷いた。
「拾ってくるのだ。ただし、丁重にだぞ」
清瑞は床に開いた穴に身を躍らせるとバックを担いですぐに戻ってきた。
伊雅は清瑞からバックを受け取ると俺に手渡すと俺はバックから銅鏡だけを取り出しそれを伊雅に渡す。 しばらく伊雅は何度も丹念に鑑定していたがとうとう歓喜の声を上げた。
「間違いない!これぞ、天魔鏡!耶麻台国王家の神器だ」
「まさか、ほんとうに……」
清瑞はまだ信じられないといった表情で、浮いているキョウと俺に目線を送った。
「それよりキョウ……何が大変なんだ?」
俺は先程から気になっていたことを切り出す。
「そう、大変、大変なんだよ!」
「いいから落ち着け」
「う、うん……まずは…えっと伊雅と、そっちは……」
伊雅は改めて一礼すると、傍らの清瑞をさして応えた。
「こちらに控えておりますのは、清瑞。私の護衛役である、乱破でございます」
「え〜っと清瑞ね。じゃあ、二人とも良く聞いて。今は時間がないから詳しい説明は後にするから、 とにかく僕と、この神の遣いである恭也は、耶麻台国を復興させるためにこの地にやってきたんだ」
「ははーーっっ」
キョウの言葉を聞くや否や伊雅はまたもや頭を床にこすりつけた。
「ありがたきお言葉。神器の精と神の御遣いにきていただけた以上、耶麻台国の復興は叶ったも同然」
「まだだよ、伊雅。火魅子が要る。耶麻台国の復興のためには、女王火魅子が必要だろう?」
「まことに」
伊雅が力強くうなずく。
「その火魅子の資質を持った娘が近くまで来てるんだ」
「なんですと!?」
伊雅は思わず立ち上がっていた。隣の清瑞までもが腰を浮かしている。
「ま、まことですか、それは?」
うわずった声で問い掛ける伊雅に、キョウが冷静に応えた。
「あっ、神器の精の言葉を疑っているの?」
「いいえ、いえ、めっそうもございません。そのようなことは……」
伊雅は慌ててひざまずき頭を下げた。それを見た清瑞も仕方なくひざまずく。
「しかし、どうしてそのようなことが?」
頭を下げた伊雅がキョウに尋ねる。
「火魅子の血筋を見分けることが出来るからね。僕の能力、忘れたわけじゃないでしょ……あれ?」
キョウが不思議そうな顔で清瑞を見つめた。その視線を受けて、清瑞が不審気な顔を見せた。
「何か?」
清瑞の問いにも応えず、キョウは伊雅を見る。伊雅はキョウの視線を真正面から受けて重々しい様子でうなずいた。
「もちろん、忘れるはずもございません、ですから、そのことに関しては改めて後ほど詳しく……」
「あ……あ、そう。まあ、いいや、じゃあ、そういうことにしよう」
「ありがとうございます」
二人のただならぬ様子に俺と清瑞が交互にキョウと伊雅を見つめていると、伊雅が強引に話を戻そうとした。
「火魅子様の血を引く者が、この近くに来ているというのは?」
「ああ、あのね、この神社に近づいてくる一団がいるんだ。狗根国の兵士が四、五十人、 それに捕虜が四人。四人とも女の子でね。その中に火魅子の資質を持つ娘がいる。 四人の中の誰かまではわからなかったけど、間違いないね」
「で、では救い出さなければ!」
伊雅の言葉にキョウが大きくうなずいた。
「そう、救い出さないと。ただし、今もいったとおり狗根国の兵士が四十人以上もいるんだよ。 それに対してこっちの戦力は伊雅と清瑞の二人だけ」
「ちょっと待て、俺は入らないのか?」
「いいえ、もしも乱戦になり恭也様に万が一にでももしものことがあったら」
俺の言葉に反応したのはキョウではなく伊雅だった
「その通りだよ、本人の前で悪いけど、伊雅や清瑞には代わりがいる。 だけど神の遣いである恭也には代わりなんていないんだ」
「……………」
俺はキョウを睨みつける。
「なんの!」
いきなり伊雅は荒々しく立ち上がった。
「王家の血を引く女子を救うためなら、たとえ、この伊雅、ひとりであろうと……」
「まあ、そういうことであれば……」
清瑞がゆらりと立ち上がった。
「敵の不意を襲えば、四十人ぐらい伊雅様と私で何とかなるでしょう」
「頼もしいね。でも、王家の血を引く人質がいるんだよ。もし、人質に危害が加えられたら、元も子もない」
「しかし……」
「いや、待て清瑞。たしかにキョウ様のおっしゃるとおりだ。王家のものを危険にさらす真似はしたくない」
伊雅にたしなめられても、なお清瑞は不満そうだ………。
「伊雅様だからと言って手をこまねいているわけにもいかないでしょう」
「うう、まあそうだが」
困り果てた顔で、伊雅がキョウを見つめる。
「なにか、お考えはございませんか?キョウ様」
「まあね、ないこともないんだ」
キョウは自慢そうに胸を張った。
「おお、それは?」
「じゃあ、作戦会議。ちょっと集まって」
ふわりと床の上に降下したキョウが、ちょいちょいと伊雅と清瑞を手招きする。
俺もキョウの前に移動する。三人を前にしてキョウは説明を始めた。
「ここに脱ぎ捨ててある服とか着替えを使って…………ここで…………恭也が………」
「なるほど………だが……」
「なに?どうしたの?」
「間に合わなかったら俺も戦うからな……」
「う〜ん、恭也にはあんまり危険なことはして欲しくないんだけど」
「そんなことも言ってられないのが現状だろうが。それに耶麻台国復興はこれ以上に難しいのだろう? これぐらいのことが出来なくてどうする」
「う〜ん、だけど」
「まあ、俺にも作戦がある」
「作戦?どんなの?」
「見ての楽しみだ。さて、あんまりのんびりとしていられないんだろう?早々に準備を済ませてしまおう」
俺の言葉に伊雅と清瑞が立ち上がり床に散乱している服や着替えを集め始める。
………………キョウの作戦がうまくいくといいのだが……。
あとがき
……ほとんど原作と同じ、ただ九峪と違って勘がいいです。
さて次はいよいよ戦闘ですかw
ここから原作と変えていくつもりなのでちょと時間がかかるかも、本格的に改訂してるのも次からですし、 それに九峪に恭也のような戦闘力がないように恭也にも九峪のような戦略眼とひらめきがないのでまったく同じ戦略は使えません。
しかも当間の街落とすのに使おうとしていたトロイの木馬…見事に本編十巻で使われてしまい…… まあ、小説そのままではなかったんですが、結局は新たに考えないといけなくなってしまい…
戦略を思いつくのに時間がかかるかも(^^;
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