詩音「智也........」 現実世界の病室............あれから10日がたった朝。未だに智也の意識は戻っていない。 私は毎日智也の病室を訪ね、意識が戻るのを待ちつづけている。 唯笑ちゃんに励まされながら、私はがんばっている。 私の1番大好きな智也の声が聞きたいから.......... ------------Shion's story 第三話------------ 『Love Angel〜天使の羽ばたき〜』 智也「あ、彩花!!」 彩花「久しぶりね、智也」 俺は信じられなかった。彩花が今この場にいる事が。 智也「な、なんでお前がここに?」 彩花「それは........ここがこの世とあの世の狭間だからよ」 智也「こ、この世とあの世の狭間?」 彩花「そう........」 俺は何が何だかわからなかった。ここがなんなのか、こうして彩花がいるのか。 智也「ど、ど〜ゆ〜事だ?」 彩花「そのまんまの意味よ。智也は今、生と死の狭間にいるの」 智也「...........」 彩花「どうする?生きるも死ぬもあなたの自由よ」 智也「生きるも死ぬも俺の自由か......................」 彩花「.さぁ、ど〜するの?死んで私と一緒にいるか、それとも生きて詩音さんの所に帰るか」 ・ ・ ・ ・ ・ カチッ 時計の針が12時を指していた。私は今読んでる本をしまい、少し古びた本を出した。 その本は「フォース」私が愛読している本だ。智也にとっては まだ悲しみが消えていない本なのかもしれない。 私は最初のページを開いた。最初は主人公が自分に能力がないと苦悩する場面から始まる。 詩音(この本、何度読んだんだろう.................やっぱりおもしろいからかな。それとも........................) 苦悩の末に主人公は「自分探しの旅」に出る。だが、その旅は決して楽なものではなく、いつも 死と隣り合わせの状態にある、過酷な旅だった。 そんな彼の支えだったのは「希望」だった。その「希望」のおかげで困難を乗り切ることができた。 そう、彼の能力は「希望」に支えられた「幸福」だったのだ。彼はこの事に、自分の能力に気づいてなかった。 詩音(最初は何とも思ってなかったのに、いつからだろう..................こんなに智也の事好きになったの) 私は「フォース」を読みながら、智也を見つめていた。 ・ ・ ・ ・ ・ 彩花「さぁ、ど〜する?」 智也「..................................」 俺は彩花の表情が気になって顔を覗きこんだ。 彩花「..................................」 彩花は顔色を何1つ変えずに俺の答えを待っていた。答えはもう出てるのに俺は迷っていた。 まだ、彩花の事完全には吹っ切れてないから。このまま、詩音の所に帰っても詩音だけを 見つめていられる自信は俺のはない。どうすれば、俺は..................... 彩花「ねぇ、智也」 ふいに彩花が声をかけてきた。 智也「何だ?」 彩花「まだ、私の事吹っ切れてないの?」 智也「え.......」 俺はあきらかに動揺していた。 彩花「まだ私の事吹っ切れてなくて詩音さんの所に帰れないって言ってるなら、それは 逃げてるって事だよ」 智也「!!」 彩花「智也にとって大事な事は今の自分の気持ちだよ」 智也「今の..........自分の気持ち..................」 彩花「そう、だから私の事は気にしなくてもいいよ」 智也「で、でも」 彩花「でももへちまもないの!!そんなんじゃ詩音さんがかわいそうよ。それにもう智也も 自分の未来へ向かって歩んで行かないと。そして、その隣にいるのは私じゃない」 智也「............................」 彩花「だから、ねっ、智也」 大事にするのは今の自分の気持ち...............俺は.........................俺は! 智也「ごめんな、彩花。俺、詩音のとこに帰るよ。今の俺の居場所は詩音のとこだから」 彩花「うん!やっと自分の気持ちに気づいたね..........................あっ」 いつの間にか雨が上がっていた。そして、その雨上がりの空には眩しい夕日の光が差し込んでいた。 彩花「さて、智也を現実の世界へ戻さないと.............もうお別れだね」 彩花は右手をすっと上げた。やがて、この世界が白い光に包まれていく。 智也「彩花..................また逢えるか?」 彩花「それはわからない。でも、逢えるって信じてればまた逢えると思うよ」 智也「そうか」 白い光がいっそう強くなっていく。 智也「じゃあな、彩花!!」 彩花「さよなら、智也。詩音さんを大事にしてね!!」 微笑む彩花を見つめながら、俺は光に包まれていった。 『お幸せに................』 詩音「智也....................」 私はまだ目の覚めない智也を見つめていた。またあれから4日がたった。私は毎日お見舞いに行き、 智也の目覚めるのを待ちつづけた。 唯笑「やっほ〜、詩音ちゃん!」 いつもの調子で唯笑ちゃんが入ってきた。 詩音「唯笑さん.........................」 みなも「こんにちは、詩音さん!」 かおる「元気してる?双海さん」 小夜美「詩音ちゃん、小夜美さん特製バナナパンでも食べない?」 信「小夜美さん、双海さんはバナナ嫌いなんすよ〜。−−やぁ、双海さん!」 唯笑ちゃんに続いてみんなが病室に入ってきた。 詩音「みなさん.....................」 唯笑「詩音ちゃん、気分転換にみんなで騒がない?みんなも今日は暇だから、久しぶりに」 みなも「そうですよ〜。明るく元気にが1番ですよ!」 かおる&小夜美「Yes,thats right!!」 信「そうそう、何事も前向きに行かないと」 詩音「みなさん........................」 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 久しぶりにみんなで騒いだ後,私は1人病室に戻った。片づけをするためだ。 詩音「さて、始めますか」 私は智也の寝てるベッドの周りを片付け始めたーーーーーーその時、 ???「う、う〜〜ん................................」 詩音「えっ?」 私は声のした方を向いた。そして、驚きを隠せなかった。なんとそこには............ 詩音「と、智也.................」 意識不明だった智也が目を覚まして私の方を見ていた。 智也「詩音................」 私は声にならないくらい嬉しかった。そして、何も言わず智也を抱きしめた。 智也「し、詩音!?」 詩音「よかった!よかったよう〜!」 私は泣いていた。今まで張り詰めていた気持ちが一気に溢れ出てきた。 智也「詩音.......................」 智也は何も言わず私を抱きしめてくれた。今までできなかった分、力強く......................... そして、お互いの唇を重ね合った。輝く夕日の中で................................. ・ ・ ・ ・ ・ エピローグ あれから、2年後の秋......................俺達は今結婚式を迎える。気が遠くなるくらい、長い道のりだった。 もう離れる事はない。ずっと一緒にいられる。 信「どうした?智也」 ふいに信が目の前にやってきた。 智也「いや、長い道のりだったなと思ってさ」 信「はは、確かにな」 信は唯笑と1年前に結婚した。俺自身予想してなかったから、驚きだった。 信「なぁ、智也」 智也「何だ?」 信「俺さ、お前と親友になれてよかったよ」 智也「な、何だよいきなり」 信「さあな、ただ何となく言いたかったんだ」 智也「信..................」 信「さぁ、行くぞ。お前のお姫様がお待ちかねだぞ」 牧師「新郎の入場です」 ドアが開かれ俺はゆっくりと歩いていく。今までの道のりを振り返りながら..................... 席の最前列に唯笑がいた。唯笑は微笑みながら、俺達を祝福していた。 智也(唯笑..........................ありがとう) そして、その隣に............... 智也(彩花......................................俺は大丈夫だ。だから俺達を見守っててくれ) いろいろな決意の中、入場が終わった。 牧師「続いて、新婦の入場です」 ドアが開かれ、詩音が入場する。そして、 牧師「では式を行います。では新郎よ。汝は双海詩音を妻とし,一生をかけて愛する事を誓いますか?」 智也「はい、誓います」 牧師の問いかけに、俺はゆっくりとしっかりとした声で答えた。 牧師「では、新婦よ。汝は三上智也を夫とし、一生をかけて愛する事を誓いますか?」 詩音「はい、誓います」 こうして、式が終わり、俺達は夫婦になった。これで終わったわけではない。新たなスタートを 切っただけだ。これからもいろいろな障害が立ちはだかるだろう。でも、詩音と一緒なら乗り越えて いける。ずっと、ずっと..................................詩音と一緒に。 そして、心地いい秋の風が吹いていた。 『それでは、ごきげんよう!!