読んでいただける方へ
このSSは、一応単独で完結してはいますが、以前に書いた『火魅子伝 外記 珠洲伝』の後日談的な要素が含まれています。
ですので、できればそちらの方を読まれてから読んでいただけると嬉しかったりするのですが駄目でしょうか?
火魅子伝 外記 重然・愛宕・織部伝
二年もの間続いた九洲全土に吹き荒れた戦火は、火魅子候補の一人藤那が火魅子の座を戴冠した事で終息を向かえた。だが、それで九洲に平安が訪れたという訳ではなかった。国土は荒廃し、多くの人命が失われていた。それでも、戦火によって荒廃した国土も、半年が経った今じょじょにではあるが復興
を遂げつつあった。
那の津の沖合いに大型のガレー船を筆頭に数十隻の大小のガレー船が整然と集団をつくっていた。船団の船には一様に共通の意匠を縫い込んだ旗がはためいている。
少しばかりでも海の事情に通じる者がその旗印を見れば、その一団がこのところ勢力を伸ばしている海人集団であることがすぐにわかるだろう。
「頭ぁ〜」
船団の先頭をいく船に威勢のよい女の声が響き渡り、上下左右に大きく揺れる甲板をまるで夏草の草原かのように何の危なげなく、声を上げた女が疾走してきた。
短く髪を切りそろえ、下帯と胸を覆うだけの布から伸びた健康的な手足は綺麗な小麦色に日焼けしている。一見すると男性のようにも見えるが、柔らかな目元や体つきを見ればそれが間違いであることはすぐにわかるだろう。
「おう」
艦橋に立ち舵を握っていたは男が、後ろから近づいてくる女に振り返りもせず答えた。男は小山と見紛うばかりの小麦色の巨体に下帯のみの姿で、悠然と目の前に広がる海原をあくまで真剣なまなざしで眺めている。
今や、耶麻台国の海の半分を宗像系海人集団と肩を並べ牛耳るまでになった海人集団の頭重然である。
復興以前は中堅の海人集団でしかなかった海人集団をここまで大きくしたのは、ひとえに頭重然の際立った力にあったのは当然だが、それに加え、九峪が海人集団に持ち込んだシステムにもあった。。
九峪は元々自由な気風が強い海人集団を無理に国の枠組みに組み込む事には無理を感じていた。その結果思いついたのが十五〜六世紀イギリスで活躍した私掠船のシステムを簡略化したものだった。それは、耶麻台国に忠誠を誓う海人集団にはその印を渡し、組織としての自由を保証する代りにある程度のあがりを収めさせるといったものだった。
当初、耶麻台国の重臣のみならず、海人集団にも少なからずの当惑と抵抗があったが思いのほか早くこのシステムは定着しつつあった。
「そろそろ、那の津につきますよ〜」
重然の右後ろに控えるように駆け寄ってきた女、愛宕が立ち止まる。
まだ、視界には真っ直ぐに伸びる蒼い地平線しか見えないが、船が徐々にではあるが順調に那の津に向かっていた。風や潮の影響もあるだろうが、ここ数日は天気もよく波は穏やかだった。このままで行けば明日の昼頃には那の津につく予定だった。
「おう」
「……おうって、他にはないんすか」
ただ同じ返答を繰り返す重然に、愛宕は不満そうに呟く。
「うん?」
「ですから〜、みんなも、ほら、このごろ」
愛宕は重然の顔を直視せず、顔を伏せると口をもごもごとさせ言い淀む。
実はこの数ヶ月、重然率いる海人集団は新しく勢力圏となった海域の視察に忙しく、何度かの短い補給を除いては陸に上がってはいなかった。
それは海を生活の場とする海人にとってもそれなりにストレスの溜まる事だった。それなのに、頭の重然はまだ一度も次の寄港の予定について発言してはおらず、愛宕のみならず船員の間で不満が鬱屈していた。
結果、船員の間で何故か頭重然と仲が良いと見られている愛宕が押し出される形で陳情に上がったのだった。
「あぁ、今回はちと長い間停泊するぞ」
「ほんとっすか」
思いがけない重然の言葉に、愛宕の顔がぱあっとほころぶ。
「あぁ、俺はちと耶牟原城まで出向くつもりだしなぁ」
耶牟原城は女王火魅子の住まう城であり、耶麻台国にとっては首都とでもいうべき場所だった。
「えっ? じゃあ」
「あぁ、お前もつきあうよな」
「もちろんす、いくっす」
愛宕の顔はいっそうほころぶ。
「久しぶりに、火魅子様と九峪様の御機嫌伺いにもいかんとな」
重然は、九峪と火魅子になった藤那の顔を思い浮かべて口を端を上げるだけの笑みを浮べる。
日頃から海人集団の頭を務める重然は、復興軍の総大将として耶麻台国を復興させた九峪を人をまとめる事の苦労を知る立場の人間として誰よりも尊敬の念を抱いていた。
「そうっすね〜。珠洲ちゃんをはじめ、皆さん元気にやってるすかね〜」
「やってるだろ、あの面子は殺しても死なね〜って連中の集まりだぞ」
神の御遣い九峪、今や火魅子となった藤那をはじめとして、重然の知る幹部連中は揃いも揃ってよくもこれだけの面子を、と言わんばかりの曲者ばかりだった。
「そうっすよね〜」
「それよりもだ、できれば宗像の奴らの取り分を少しでもこちらに引っ張り込まんとな。おい、お前からもよくお願いしろよ」
「あ〜、早く珠洲ちゃんに会いたいっす。ラブリ〜〜〜〜珠洲ちゃ〜〜〜ん」
はじめて振り返った重然が見たのは、何やら恍惚とした表情で宙を見上げ、常人には見えない物に向かって話しかけている愛宕の姿だった。
「って、こら。聞いてるのか、愛宕」
「もちろん、聞いてるッす、頭。今回は何としても珠洲ちゃんと町に買い物に行くっす」
「あのな〜。……まぁ、いいか。じゃあ、ほれ。行くぞ〜、野郎ども、うまい飯にありつきたかったら精出せよ」
まともな返答を返さない愛宕の姿に、出鼻を挫かれた重然だったがそれ以上は突っ込まなかった。愛宕には愛宕の目的があるように、海人集団の頭としてではなく重然としての目的があった。それを、後々愛宕に理解させれないいのだから。
「「おお〜〜う」」
重然の言葉に、船の船員全員が勇ましい声で答え、船はその速度を増して海原を突き進んでいった。
耶牟原城の一室に若い女の豪快な笑い声が響く。まだ日も落ちていない時刻ながら酒の甘い匂いが充満した部屋の中で、三人の男女が酒壷やらつまみの皿を中心に車座に座っている。
「で、なんだ。勇んで来てみれば空振りか」
笑いながら女の一人は、さもおかしそうに床をバシバシと叩いている。その震動で床に置かれた酒壷やつまみの盛られた皿がガチャガチャと笑い声に呼応するように響く。
「言わないでくれよ、お嬢。こう見えても、結構へこんでんだからよ〜」
その女の向かいに腰を下ろしていた重然が、普通の人のお茶碗ほどはある椀になみなみと注いだ白濁酒を一息に飲み干して巨体に似合わない繊細な溜息をついた。
重然は船が予定通り那の津についてから二日後には耶牟原城に着いていた。だが、肝心要の九峪と火魅子藤那は揃って地方の豪族との折衝を兼ねた復興視察で城を空けていたのだった。
「けっ、お前がへこんでるだって。嘘つけよ、御天道さまが西から上がったってそんな事あるかよ」
だが、女はそんな重然の様子を小馬鹿にするように意地悪く笑った。
女は、さすがに真向いに座った重然に比べる余地は無いが、女性にすれば大柄でがっしりとした体つきをしている。それでも、顔は目も鼻も口も大ぶりながら野性的な印象の美女であることには違いない。
織部である。織部は昔と変わらず志野の主催する劇団の劇団員であり、耶牟原城の中に一室を与えられながら耶麻台国の中でも正式な地位にはついてはいない。言わば客将といった所だろうか。
「ひでな〜、お嬢は」
織部にはそう言いながら、正直な話重然もそれほど気落ちしてるわけではなかった。元々、今回は今までの長い航海をしていた事もあり、はじめからそれなりに長い間耶牟原城に止まるつもりだったのだ。
「ところで、あっちの本当に落ち込んでるのはどうしたんだ?」
織部が指差した方向には、重然と共に耶牟原城に出向いていてきた愛宕が座っている。その愛宕は、何故かいつもの威勢の良さをそっくり剥ぎ取られたような暗い表情で、会話にも参加せず俯いたまま身じろぎ一つしていない。
「いや、まあ。触れねェでやった方がいいですぜ」
重然は、愛宕を見ようともせず今度こそ本当に困った様に答えた。
「はぁ〜〜〜」
愛宕が深い深い溜息をつく。いつもがいつもなだけに、場はお通夜の席のような沈痛な雰囲気に飲み込まれる。
「……お、おい、重然ちょっと」
「へ、へい」
その雰囲気に耐えられなかった織部は、愛宕をその場に残し重然を部屋の隅に連れ出した。
「なんであのボケボケ娘がこんなに落ち込んでんだ」
「それは、ですねぇ……」
真剣に嫌そうな顔つきで耳打ちする織部に、その理由を知る重然はばつが悪そうに苦笑を漏らす。
「……ボケボケはひどいっす〜〜〜」
いつのまにやら二人の後ろに来ていた愛宕が二人の間に、生気の抜けきった顔を突き出した。
「げっ……、わりい、わりい。で?」
「……聞かねぇ方が」
顔を引き攣らせて水を向けた織部に、重然が止めようとしたが一足遅かった。
「……珠洲ちゃんが」
少しの沈黙のあと、ぽつりと愛宕が織部にとって意外な名前を呟いた。
「はっ? あの珠洲がどうしたって」
「珠洲ちゃんがいないっす〜〜〜〜」
「どわぁぁぁぁ、何だよ、おい」
突然、そのつぶらな瞳から滂沱の涙を流し、鼻水まで流しながら絶叫する愛宕は凄惨の一言に尽きた。だが、どうにも元々生気が強すぎるせいか悲惨とか悲壮とか言う言葉とは程遠い。もっともそんな状態で詰め寄られる織部にしてみればたまったものではない。
「どうしてっすか? なんでいないっすか? 何か陰謀すか? 狗根国っすか? 病気? 怪我? それとも、あちきの事が嫌いになったすか? だったら直接言って欲しいっす。 ねっねっ、どうしてっすか? わからないっす〜〜〜〜〜〜」
「おっ、おい、重然」
あっという間に壁に追いやられ、鼻と鼻がくっつくほど接近された織部は情けない声で重然に助けを求めた。だが、重然はお手上げだと言わんばかりに頭を振るだけだった。
「……だから言ったでしょ、お嬢。聞かねぇ方がいいって」
「そ、そう、みたいだな」
織部は、何とか両腕でこれ以上愛宕が近づかない様に防ぎながらうめくように呟いた。
「どうせ、どうせ、あちきの愛は一方通行っす。あぁ、あのかわいいお顔が拝めないなんて。うぅ……」
「ほら、お嬢こっちに」
「あぁあ」
とりあえず、二人は何やらぶつぶつと呟きながら床にのの字を書いている愛宕を放っておいて、また喋り始めた。話題は当然、この事態の原因たる珠洲の話である。
「……どうにも、愛宕の奴珠洲の嬢ちゃんに会うのえらい楽しみにしてたみたいで」
「あの、珠洲にねぇ……」
織部は、重然の言葉に首をひねる。少なくても、織部が知る限りの珠洲は無愛想を絵にしたような可愛げの欠片も無い小娘である。会って楽しい種類の人間ではなかった。
「で、どうして、珠洲の嬢ちゃんはいないんですかい?」
「あぁ、珠洲の奴は志野の団長と故郷が見つかったんで出かけてるんだ」
「見つかった? また、変な言いまわしですな」
今度は、重然は首をひねる。
「わかんだろ。俺ン所と同じさ。珠洲んとこも狗根国に反抗したらしくてよ。ず〜っと昔にぺしゃんさ」
織部は、そう答えると両手を一度胸の前でパシンと音を立てて合わせてみせる。
「……そうですかい」
重然は神妙な顔で頷く。重然自身、狗根国によって故郷の瀬戸内の海から追い出された身だ。そういった境遇の人々がどういった道を辿るかはよく知っていた。
「……まぁ、あいつもあいつなりに苦労してるってことさ」
正直な話、織部はあまり珠洲をよく思ってはいない。何といっても可愛げといったものが無さすぎるのだ。志野以外の人間の言葉に素直に頷いた事など一度も織部は見た事がない。
織部も幼い頃狗根国の為に故郷と両親を失った身だった。故郷を追い出され、まだ幼い身で生き残るのは並大抵の苦労ではなかった。そして、珠洲は織部よりもさらに幼くして一人で生活をしなければならない身だった事を思えば、その頃から自分を助けてくれた志野に寄りかかるのは仕方のない事かもしれないとも思う。
だからと言って珠洲の可愛げの無さをそれだけで許せるものでもないのだが。
「……うぅ」
「なぁ!!」
思いもかけず近くから聞こえてきた泣き声に、織部と重然は顔を引き攣らせ恐る恐る振り返る。そこには涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにした愛宕が正座をして泣いていた。
「……あ、愛宕聞いてたのか?」
「かわいそうっす、珠洲ちゃん。もう、涙止まらないッすよ〜〜〜〜〜」
言葉通り愛宕の両目からは、どこにそんな量が蓄えられたんだと聞きたいくらいの涙が滝のごとく流れ落ちる。
「お、おい、愛宕」
「あの愛らしい顔に似合わず苦労人っす。くっ〜〜〜、呑むッす。呑まずにいられないっす。ぷは〜〜〜〜〜、しゃ〜〜〜〜〜」
愛宕は、手近にあった酒壷をひったくるとそのまま口をつけ、口の端から滝のように流れ落ちる酒など気にせず豪快に呑みはじめた。
「お、おい、重然。どうすんだ、これ」
「い、いや、どうすんだって言われましても」
「な〜〜に、やってんすか、頭も織部様も、ほら呑むッす」
顔を突き合わす織部と重然に、すでに座った瞳の愛宕が酒壷を突きつける。
「い、いや、その〜、なあ、重然」
「ねぇ、お嬢」
二人とも逃げ場を探して周りを見渡すが、落ち着くさきは先ほどと同じお互いの顔しかなかった。
(おい、重然。お前、あいつの保護者なんだろ。なんとかしろよ)
(無茶言わんでくださいよ、お嬢〜)
(何が無茶なんだ、何が)
(お嬢が、理由を聞いたせいじゃねえかよ)
(何〜〜〜)
小声でお互いに責任を押しつけあっている二人に焦れた愛宕が、ずずいと膝を前に押し出してくる。
「くぅ〜〜〜〜〜、いいから、呑むッすよ」
「……はぁ」
「……あぁ」
……こうして、狂乱の宴は始まったのだった。
「……寝たな」
「……あぁ、すまねぇなぁお嬢」
宴が始まって二時間ほどがたち、織部と重然は愛宕を酔い潰す事にやっと成功していた。愛宕は特に酒に弱いというわけではないが、織部と重然が並みの人間とは比べ物にならないほど酒に強かったのでそう難しいものではなかった。
愛宕は呑み、唄い、踊り、叫び、泣き、笑う事で鬱積したものを全て吐き出してすっきりしたのか、気持ちよさそうに部屋の隅で規則正しい寝息を立てている。
「まぁ、いいさ。しかし、どうにも飲んだ気がしねぇなァ」
すでに、部屋にあった酒壷は半分以上が空になっている事からも織部自身愛宕を酔い潰す為かなりの量の酒を呑んでいるはずなのだが、どうにも愛宕に気を取られすぎていたせいか織部は呑み足りない気分だった。
「そうだなぁ、どうだ、お嬢もう少し呑まないか?」
重然も同じ気分だったらしく、織部に杯を差し出した。無論、織部に断る理由はなかった。
「お嬢、お話があります」
「なんだよ、あらたまって」
二人で呑み始めて少し経った頃、重然が不意に部屋に散乱する空になった酒壷を押しのけて場所をつくるとあらたまった表情で織部に向き直った。
「俺達の船に、いや、海に戻ってくるおつもりはありませんか」
「……何、言ってんだ? お前」
重然のあまりに突然な誘いの言葉に、織部はぽかんと間の抜けた表情を浮べた。重然が酒気に侵されていないのは、そのいつになく真面目な顔を見ればよくわかった。
実は今回、わざわざ耶牟原城にまで重然が出向いた大きな目的こそが織部を海に連れ戻す事だった。
国内はすでに安定している、劇団の団長たる志野も王族としての地位が認められ耶牟原城に落ち着く事になるだろう。そうなれば、劇団は自然消滅し、織部がこの耶麻台国内においてする事がなくるはず。
というのが、重然の読みだった。だからこそ、半年が経ち国内がある程度の安定を見た今の今までこの話を持ち出さなかったのだ。
「何言ってんだも糞もねえぜ、お嬢。お嬢は元々は海人じゃあねえか」
「まあ、そりゃあ、そうだけどよ〜」
織部はまるで見たくない物を突き付けられた子供のように目をそらすと、困ったように頬を掻いた。
「しかも、瀬戸内の海でその人ありと言われた播磨親分の一人娘なんだぜ」
「まあ、そうだがよ〜」
「まだ、瀬戸内には播磨親分を信奉してる奴らはごまんといる。狗根国が弱まった今、お嬢が乗り出せば瀬戸内に前以上の海人集団を作り上げる事だって」
そう言い募る重然の顔は、すでにどこか夢見心地といった風情だ。
重然の頭の中にはその青写真が出来あがっていた。播磨親分の弔い合戦という旗印に、耶麻台国からの援助を引き出されば、昔の勢力をも越える一代勢力圏を瀬戸内に作り出す事は夢物語では決してない。重然の中ではそれだけの自信と計算が成立っていた。
「……おい、重然。お前、そっちが本命なんじゃないのか?」
だが、重然の意気が上がるのを尻目に、織部は表情を一変させ半眼を向けた。
「へっ、な、なんの事だよ」
「とぼけるんじゃないよ。あたしを旗頭にして要は瀬戸内に自分の勢力を広げたいだけなんだろ」
顔を背け惚けようとする重然に、織部が一喝する。
「ち、ちがう、違うぜ、お嬢。そ、そりゃあ、まあ、そういう事も、考えなかったわけじゃあねえが。俺は、ただ本当に昔世話になった播磨親分に恩をお返ししたいだけで……」
織部が言うような下心がないわけではなかった重然の声は話が進むにつれて小さくなっていった。
「ふ〜〜〜〜ん、恩ねぇ……」
「お、お嬢」
二人の間に緊張感のある沈黙が降りる。だが次の瞬間、織部はそんな雰囲気を弾き飛ばす様に大口を開けて笑い出した。
「はっはっははは、そんな辛気臭い顔するんじゃないよ。わかってるよ、お前にそんな知恵がない事ぐらい」
「お、お嬢、そりゃあねえよ」
重然が、先ほどとはまた異なる情けない声で抗議すると、今までだらしなく床に胡座をかいていた織部が姿勢を正し、重然の目をしっかりと見据えた。
「お前の言いたいことはわかるよ……けどな。今はそのつもりはないよ」
「ど、どうしてだよ、お嬢」
腰を浮かしかけた重然を、織部が視線で制する。
「ここがね、どうにも気に入っちまった。それじゃあ、理由にならないかい?」
「お嬢」
「できれば、あたしはこの国で一生を終えたいと思ってる。……それに、まだ団員だしな」
「……お嬢」
惚けた口調ながら織部の視線と言葉の奥に硬い決意を秘めている事を、重然は認めないわけにはいかなかった。
「ああ、ほら。でかい図体して情けない顔するんじゃないよ、まったく。もう餓鬼じゃないんだ」
「あの頃はよくお嬢に泣かされたからな」
しみじみと重然が昔を懐かしむように呟く。
重然の記憶の中の織部は常に輝いていた。自分より年下のはずなのに、いつでも子供達の先頭に立っていたのは織部だった。織部が、頭の娘だったという事が子供の世界にまったく介在していなかったわけではなかったが。それ以上に、織部は周りの皆に自然と愛されていた。子供も大人も誰もが彼女の将来に大きな期待を抱いてしまうほどに。
「まったく、お前はでっかい図体してよく泣いたからなァ」
織部もけらけらと懐かしそうに笑う。もっとも、重然の美しい思い出とはだいぶ趣が異なるようであったが。
「……お嬢、そりゃあねぇよ」
「とにかく、これでこの話は終わりだ」
(……今更、どの面下げて戻れってんだよ)
織部は、重然に聞こえない声で呟く。
織部が陸に上がってもうずいぶんと年月が経っていた。海に生きるには若かったという事もある、だが重然のように海人としてやっていく事ができなかった訳ではなかった。しかも、織部は海人集団の頭の娘だ。本来なら、自ら率先して集団を立て直していかなければならなかったはずだった。
結局の所、わずらわしかったのだ。頭の娘として生きる事も、狗根国と戦っていく事も、今日一日を楽しく生きていければ織部にそれでよかった。だから海人としての自分から逃げた。
一度、海から逃げ出した自分が今更戻れるとは到底思えなかった。
それにそんな自分が、成り行きとはいえ狗根国との戦に身を投じたのはやはり志野せいだったと織部は思う。冷静な判断力と、大胆な行動力、事の大小を呑み込めるその包容力。織部は会ったその日には、こいつの為に力をつくしてやりたいと決意していた。
俗な言い方をすれば、惚れたのだ。あの志野という人間に。
「そ、そんなぁ、もう一度考え直してはくれねえか」
「終わりったら、終わりだよ。これ以上、その話するつもりなら叩き出すからな」
織部は一方的に最後通牒を叩きつけるように強い口調で断言すると、ごろりとその場に寝転がってしまう。
「はぁ〜〜〜」
重然には、それ以上溜息をつく事しか出来なかった。
火魅子伝 外記 愛宕・重然・織部伝 弐話
眼の奥に忍び込んでくる眩しい光に、床から体を起こした愛宕が現状を認識するには幾らかの時間が必要だった。
「はれ? ここは? あぁ……お頭はどこっすか?」
「おう、起きたか。重然なら九峪様が帰られたんで、早速会いに行ってるぜ」
愛宕が声の方を見ると、織部が昨日の宴会が嘘のように綺麗に片付けた部屋の中で今で言う筋トレのような訓練をしていた。
「……そうっすかぁ」
「なんだ、元気がねぇなあ」
いつもの元気なく額を押さえて答える愛宕に、織部は訓練を止め流れ落ちる汗を拭きながら心配そうに尋ねた。さすがに、昨日の事もあって腰は幾分引けていたが。
「……頭割れるようっす」
「はははは、あれしきの酒で二日酔いとは情けないね。ほれ、顔でも洗ってきな」
うめく愛宕を見て織部は安心したようにひとしきり笑ってから、手拭いを放ってやった。
「へ〜〜〜いっす」
愛宕は放られた手拭いを拾うと、のたのたと織部の部屋を出る。
「ううう、辛いす〜」
廊下を一人かみ締めるように歩きながら愛宕は生まれて始めて自分が海の上以外にいる事を感謝していた。もしここが揺れる海の上だったら、さすがの愛宕もまいっていたかもしれない。
「……愛宕?」
「へっ、誰っ……す……」
厠まで後少しという所で思いがけず名前を呼ばれ、振り向いた瞬間愛宕は完全に停止した。
「…………愛宕?」
その先には怪訝そうな表情を浮べた旅装束の童女が立っていた。
「すずちゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん」
そして、次の瞬間、愛宕はその顔を確認するや否や名前を叫びながら獲物を射程に入れた鷹のごとく一瞬で飛びついた。
「……何?」
「会えてうれしいっす〜〜〜〜、感動っす〜〜〜〜」
自分の半分ほどの背しかない珠洲の腰に、感動のあまり泣きながらすがりつく愛宕の姿は滑稽を通り越して奇異にしか見えない。
「……そう」
「どこ行くっすか、もし暇だったら買い物にでも行かないすっか?」
「……用事があるから」
「じゃあ、手伝うっす」
「……勝手にしたら」
愛宕は、珠洲の隣に立つとそのまま並んで廊下を歩く。珠洲は、いつもの通り何も喋らずただ歩を進めるが。愛宕にそんな器用な真似ができるわけがなかった。
満面の笑みを浮べながら、愛宕は二日酔いなど一気に抜け去ったのか実に活発に咽喉と口を動かし続けた。今日の天気から始まって、おいしかった三日前の夕食に入り、次々と話題を尽きさせることなく喋り続ける。
「で、その時頭がすね」
「……あのさ」
さすがに堪りかねたのだろう珠洲は、頭を抱えながら嫌そうに口を挟んだ。
「なんすか?」
「……何しに来たわけ」
「そんなの決まってるッす。珠洲ちゃんに会いに来すッよ」
「……そう」
何の迷いもなくそう断言する愛宕に、呆れたと言わんばかりに珠洲はそれだけ呟く。
「お頭は織部の姉さんに会いに来たみたいっすけど」
「重然も来てたの」
特別驚いた様子でもなく珠洲が呟く。珠洲でなくても、愛宕と重然がセットである事は周知の事実だった。
「そうっす。織部の姉さんを引き抜きに来たみたいっすよ」
「織部を」
愛宕の言葉に、さすがの珠洲も今度は多少驚いたような声を出した。
織部と重然が随分と昔から知り合いだった事は珠洲も知っていたが、そういった話がでることは想像もしてはいなかった。
「知らなかったんすか。織部の姉さんは何でもお頭のお頭の娘さんなんだそうっすよ。で、織部の姉さんがいれば故郷の瀬戸内を取り戻すのも目の前だって言ってましたっす」
愛宕は、耶牟原城に来るまでの間重然からその辺りの話を聞かされ続けていた。もっとも、重然の狙いは何とか愛宕にも自分の口添えをさせようとしていたわけだが、すでに頭の中が珠洲の事でいっぱいだった愛宕がそこまで理解している訳がなかった。
「ふ〜ん、で織部はなんだって?」
「よくわからないっす」
重然と織部がその話をしていたまさに時、愛宕は夢の中にいたのだから織部の返答を知っているわけもなく気楽そうにそう答えた。
「……だけど、そこに織部の故郷がある訳」
珠洲は、先ほどまでより表情を引き締めた。だが、もう夢見心地といった愛宕はそのわずかな変化に気がつかなかった。
「まあ、そうっすね。わたしはよく知らんすけど」
「愛宕は、どうなの?」
「あたしっすか? あんまり、よくわからんす。まあ、あたしにとっては船と海が故郷みたいなもんす」
愛宕には重然ほど瀬戸内の海に対して思い入れはなかった。愛宕にとって海人としてより長く暮らし見知った火向灘一帯の海こそ故郷と呼ぶに相応しい場所だった。
「……そう」
珠洲はそれだけ呟くと、きょとんとした表情でこちらを見ている愛宕を置き去るように足を速めた。
重然と愛宕が耶牟原城に来てから、二週間がたっても二人は耶牟原城に残っていた。一つは、重然が織部説得に未練を残していてこのまま耶牟原城を去る事に抵抗があった事。二つには、愛宕が張りきって珠洲の舞台の手伝いをしていたからだった。
そして、二週間と一日が経った今日、耶牟原城内に特別に作られた舞台が開かれる日を迎えていた。日々悶々と手持ちぶたさを抱えた重然も早い内から舞台を見るべく、混雑した劇場の中で場所を確保していた。
もちろん、劇場とはいっても今のように席が設けられているわけでなく、舞台の前に天井だけ作られた広々とした剥き出しの地面が広がっているだけだった。そこに、集まった人々が各々好きな場所に茣蓙をひいたり、食べ物を持ち込んだりして騒がしく今や遅くと舞台が開くのを待っていた。
「よう、重然。ここ空いてるかい?」
重然に後ろから近づいた織部は、一言そう断ると重然の返事も待たずひょいと隣に腰を下ろした。
「あっ、お嬢。いいんですかい、舞台の方は」
もうすぐ幕が上がるというのに、普段着の姿で客席にいる織部の姿を不信に思い重然は声をかけた。
「今回、俺の出番はねぇよ。珠洲の一人舞台みたいなもんだからなぁ」
「そうですかい、たのしみですねぇ」
「おや、あんたが人形劇を楽しみにすることなんかあるのかい」
そのでかい体にまるで似合わなずこれから始まる舞台に子供の様に期待でわくわくとしている重然を、織部が茶化した。
「ひでぇなぁ、お嬢。こうみえても、餓鬼の頃から爺や婆の御伽噺を聞くのが大好きだったんだぜ」
「そりゃあ、すまなかったな」
悪びれた様子もなく謝ると、織部は目の前のまだ幕が上がってはいない舞台を見つめる。重然はと言えば、どうやってあの話を切り出すべきか迷っていた。へたに切り出せば、逆に織部の態度を硬化させるのではないかという思いがどうしても先に立つのだった。
「……なぁ」
「なんだい、お嬢」
少しの沈黙の後、織部は重然の方は見ず劇場の方に視線を止めたまま突然そう切りだした。
「この前の話なんだがよ」
「えっ」
重然は驚いて弾かれたように隣に座っている織部を見た。前の態度から、まさか織部の方からこの話を振ってくるとは考えもしなかった。
「……ちょっとなら、考えてやっても良いかなと思ってよ
「ほ、本当かい、お嬢」
思いがけない織部の言葉に、重然が息せき切ったように興奮して顔を体ごと突き出した。
「そんなに顔近づけるんじゃないよ。暑苦しい」
「わ、わりいなぁ。でも、どうして突然心変わりしてくれたんだ」
「まぁ、何だ、あいつのせいだよ」
織部は怒ったように、目の前の舞台を睨みつけた。
「あいつ?」
「あの野郎がさ……。まったく、柄にもねぇ事言いやがって」
織部は、そう答えながら少し前の事を反芻していた。
それは織部が、劇場の舞台裏に珠洲を表敬訪問という名のからかいに行ったときの事だった。
舞台横に作らた控え室は、すでに大小色々な道具類で溢れかえっていた。その中で、珠洲はすでに黒子の衣装を身にまとい、織部が今まで見た事のない男女の人形を何やら弄くっていた。
「よう、珠洲。お客さんは一杯だぜ」
日頃、娯楽と呼べるような物がほとんどない人々は織部が言う通り劇場に殺到していた。実際、この控え室にも観客のざわざわとした騒ぎ声がうるさく鳴り響いている。
「そう」
もっとも、幼い身ながらこの手の舞台に馴れている珠洲は、顔色一つ変えず実に冷静に返事を返した。
「やれやれ、少しは緊張しろってんだ」
「……織部」
珠洲はあくまで織部の方は見ず、人形を弄くりながら言葉を続けた。
「なんだよ」
「重然について行かないの」
「……愛宕に聞いたのか。まぁ、なんだ、それは」
織部は、ばつが悪そうに頭をかいた。すぐに情報源が誰かは思いついたが、正直珠洲がこの話を持ち出してくるとは思わなかった。どういった類の事にせよ珠洲が志野に関係する事以外に積極的に関係するとは思わなかった。
「もし」
「もし?」
「織部が必要とされてるなら、そこに行った方がいい」
「……珠洲」
「待っている人がいるなら、そこに行った方がいい」
「…………あ、あのな」
織部は、何と言っていいかわからず黙り込んでしまった。これが志野に言われたなら、織部も普通に返答を返すなり、はぐらかすなり出来ただろう。だが、珠洲にこんな言われる事など想像だにしてなかった織部は少なからずの感動すら覚えていた。
「それに」
織部の言葉をさえぎって珠洲は今まで以上に強い口調でそう言うと、はじめて織部にまともに向き直って怒ったように睨みつけた。何故か珠洲の頬は朱に染まっている。
「志野には私がいるからいいの」
「結局、それかい」
織部は思わず叫んでいた。
思い返してみても、結局の所織部は、未だに珠洲に言われたことが嬉しいのか、悔しいのか、腹立たしいのかどうにも判断がつかなかった。ただ、一つだけはっきとわかる事があった。
(……あいつは、どこまでいっても可愛げのねえ餓鬼だ)
「……はぁ。まあ、それはいいや。じゃあ、さっそく馴染みに話を通して」
何やら劇場を見つめ、満足そうなしかしどこか苦笑めいた笑みを浮べる織部の姿に、重然はそれ以上の追求を諦めた。それよりも今は、織部がまた気まぐれな心変わりを見せる前に段取りをつけてしまう事こそ重然にしてみれば重要な事だった。
「待ちな、まったく話が早いんだよ。考えてやってもいいって言っただけだろ、まだ」
腰を浮かしかけた重然を、織部が強引に片手一本で引きとめる。
「そ、そうか。ああ、焦れッてえなぁぁ」
「そう、焦るんじゃないよ。まあ、今度お前の船にでも乗りに行ってやるよ。話はそれからさ」
「そうか、じゃあ、船上げて歓迎するぜ」
「楽しみにしてるよ、まあ今は珠洲の劇でも楽しもうぜ」
重然のあまりに嬉しそうな声に、織部も苦笑ながらやはりどこか嬉しそうに答えた。
あの懐かしい潮の香りをこの胸にいっぱいに吸い込んでみようと織部は思う。隣に座っている下心ありありの重然の誘いに乗るかどうかはそれから考えてみてもいい。でも、それはまだ先の話だ、今はしっかりと見ておかなければならないものがあった。
「ああ、そうだな。おお、幕があがるぜ、お嬢」
「わかってるよ、まったく煩いね、お前は」
わくわくと体を動かす重然を黙らせて、織部は多く幕が上がっていく舞台を見た。これから、可愛げのない餓鬼がさぞや子供の可愛げもないすばらしい舞台をしてみせつけるにちがいないのだから。
〜了〜
後書き座談会
「ど〜も、こんにちわ〜。みなさんお元気ですか〜、本当にひさしぶり〜な登場の火魅子で〜す」
「……いや〜な刺があるように感じるのは私だけかな?」
「そう感じるのは、単にあんたに負い目があるからでしょ」
「さぁ、時間もありませんのでさっさと話を進めましょう」
「……逃げたわね」
「ええっと、今回はず〜っと前に後書きで書いた愛宕と重然、織部の三人が主役です。公約を果たしたとお考えください」
「誰も覚えてないわよ」
「うるさいな〜。いいんですよ、自己満足なんですから」
「あっそう、じゃあ勝手に進めて」
「うぅ、ひどい。でも、僕負けない」
「やめなさい、気持ち悪いから」
「じゃあ、やめます。ええっと、今回はですね、愛宕と珠洲のからみですね」
「……それだけなの?」
「それだけです(きっぱり)」
「……もう、あんた帰っていいわ」
「ひどい。僕がちょっと正直に答えただけなのに」
「正直であれば好いってもんでもないでしょ。それに、正直に答えるならもっと他に言うべきことがあるんじゃないの?」
「え、そうですね。実は、当初この三人が主役で海洋冒険談なんぞやりたいな〜などと思ってたりしてたんですけど」
「ですけど」
「え〜〜〜、まあ、何て言うんですか。ネタ不足により断念しました、はい」
「書けなかったとはっきり言うべきだと思うけど」
「力量不足ゆえ書けませんでした、すみません」
「よろしい」
「……こんなことして楽しいですか」
「え〜〜〜〜〜、とっても」
「……サド」
「何か言ったかしら」
「いや、一度でいいから佐渡島で金取りのロウ人形を見てみたい、と」
「……それで」
「結構リアルらしいですよ、一見の価値はあるかと。という訳で話もまとまったので。これで、また〜」
「早。しかも、また〜、とか言ってるし。この前科者が」
「……前科者ってひどい言われようですね。それに全然書かなかったわけじゃなくて、ちょっと雁山さんの本HPで浮気SSを書いてたから間が空いただけなんですよ」
「……浮気」
「だから決して書いてなかったというわけではって? どうかしました。火魅子さん」
「……浮気、二股、同時攻略」
「あの〜、本格的にどうしました」
「説明しよう」
「わあ、九峪君。どうしたんですか、突然」
「些細な事を気にするな。今、気にすべきなのは毎回ごと着実に減っている俺の出番の事だ」
「いえ、それはどうでもいいので。説明を」
「ううぅぅ。まぁ、いい。ここが俺の見せ場だ。では、改めて説明しよう」
「……ネタ古くないですか?」
「話の腰をいちいち折るでない。説明しよう、火魅子はあるゲームのせいで浮気・二股・同時攻略等の言葉に深いトラウマを持つに至っているのだ」
「……それは、きっぱりとあなたのせいですが」
「 (無視) そのせいで、火魅子はその単語を聞くとE0Aや某ガン0ムもびっくりのバーサーカーモードに入り、目に入るもの全てを破壊するまでとまら」
ごす
「ああああ、九峪く〜〜〜〜〜〜ん。そんなお約束な」
「ふしゅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
「……吐く息が白いです、火魅子さん。それに、両手にはなぜに赤バットと黒バットを」
「ふしゅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
「止めて、許して、こないで、きゃあああああああああああああああ」
ごす、めが、ぼき、どか、ぐしゃ×5
「ふしゅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。……って、あれ高野? なんで血まみれで倒れてるの? はっ、もしかして、これは神が私に与えてくれたチャンスね。ええっと、確かこの辺に高野のカンニングペーパーが……」
「……た、たすけ……」
「五月蝿い」
ぼぐ
「これだけ、しけてるわね。まあ、いいわ。……それでは、今回のサンクスです。雁山さん、高瀬さん、HAL93さん、Catoさん、そして私の奇特な某友人ズありがと〜〜〜だそうです。見捨てないでやってくださいね。……また、後ろ向きな台詞ね、しかし。それじゃあ、これで切りがいいようなので、次回「火魅子の反乱〜主役はあたしよ〜」でお会いしましょう、See you〜」
「……た、たすけてぇぇ……」
〜了〜