九峪の独り言耶麻台体験記〜其の二〜

俺の名は九峪。九峪雅比古だ。
今年4月に高校三年に進級したばかりの、至って普通の好青年だ。

何と俺、古代日本、倭と呼ばれていた三世紀に、タイムスリップをしてしまったらしい。

らしいって言うのも、どうも純粋なタイムスリップとは違うようなんだな、コレが。

少なくとも俺が学校で習った弥生時代と全然違うんだよ。

だってなぁ、まず驚いたのが服装だよ。

伊雅とかいう元・耶麻台国副王のおっさんは、まぁ良いとしても護衛役である姉ちゃんを

見た時ぶっとんだね。

どう見てもコミケ等で見かけるコスプレだぜ。

レオタードみたいなセクシーな恰好しててさ、忍者だって言うんだぜ。

俄には信じられないよ。いや、本当に。

でも、まぁ、忍者ってぇのは本当みたいだけどな。

思いっきり小刀突きつけられて、怖い思いをさせてもらったし。いや、本気で怖かった

ぞ。

本物の凄みって奴を肌で感じたね。

しかし、この時代に忍者なんて居たのか?俺も勉強は嫌いだったから自信はないが、確か

いなかったよな?それとも居たのか?う〜ん、分からん。まあ、良いか、別に。

んで、まぁ、やっとまともな所で寝食が出来て一安心だぜ。

にしても、キョウ。お前食い過ぎ。一体どれだけ食ったら気が済むんだよ。

その小さな身体で、俺の倍は腹に収めてたような気がするが、それは俺の思い過ごしか?

饅頭が好きってえのも、驚きだ。一体どんな精霊だよ。

さて、久しぶりにゆっくりと寝れたもんだから、珍しく気持ちよく起きれたぜ。

で、外に出てみると、例の姉ちゃんが出迎えてくれたよ。

いや、朝早くから美人を拝めるのは嬉しいんだけどさ。もうちょっと愛想良くしてほしい

よな。

何か俺に対してやたらと突っかかってくるし、友好的じゃないんだよな。

まぁ、俺が「神の使い」を名乗っても、露骨に疑ってたし分からなくもないんだけどさ。

そんな気まずい雰囲気の中、伊雅のおっさんがやって来て脳天気に挨拶してきた。

まぁ、とりあえず、この場は助かったとしておこう。

するとおっさん、案内したい所があるらしく、俺を隠れ里から少し離れた所に連れていっ

た。

やれやれ、また歩くのかよ。

と思ったけど、さすがに口にはださない。

いや、一応、神の使いだからね。それらしい態度しとかないといけないでしょ。

で、着いた所は半壊している屋敷だった。屋敷で良いんだよな?違うのか?ま、良いよ

な。細かい事はナッシングだぜ。

えっ、使い方が違う?だから細かい所は突っ込まないでくれよ。学がないのは認めるか

ら。

で、おっさんが言うには、此処で子供達に文字や言葉を教えていたんだと。

今で言う学校だよな。昔風に言うなら寺子屋か?

にしても驚いたね。この時代で既に普通の子供達に言葉はともかく、文字まで教えていた

なんて。

という事は、王族や貴族?みたいな身分以外の人間でも文字を書いたり読んだり出来るっ

て事か?

何か凄くないか?戦国時代でも、字の読み書きが出来ない人間が多かったはずだよな。

俺の記憶違いか?

はっ!待てよ?という事は、今現在、この世界でこの世界の文字を読めないのは、もしか

して俺だけか!?

ちょっと待ってくれよ?今気付いたが、何でこの時代の人間の言葉が、俺分かるんだ?

それより何故、現代の言葉が通じる?何故、おっさん達、現代語を喋ってるんだ?

これは、ひょっとしてエル○ザードよろしくの、タイムスリップした事によって身に付い

た異能力なのか?

物凄く都合の良い解釈だが、そうなのか?う〜ん、分からん。分からんよ〜。

えっ、そういうのはお約束だから、突っ込みは無し?

うん、そうだな、そうしよう。そうしたぞ。そういう細かい事言ってら、この物語成立し

なくなりそうだもんな。うん、うん。

んで、此処で暫く俺は、この世界についてのレクチャーを受けた。

まぁ、自分から、この世界について教えてくれと頼んでいた以上、断れないしな。

というか、おっさんの申し出断ったら、横にいる姉ちゃんが小刀抜きそうだし・・・。

にしても、聞けば聞くほど、凄い世界という気がするぞ。

方術って何だよ?魔人、魔獣?!冗談でしょ?

何でそんなのが、あるんだよ&いるんだよ。

それじゃあ思いっきりRPGの世界じゃないか。勘弁してくれよ。

しかも、そんな奴等と闘うのか?俺にどうしろ、と言うんだ。

俺はドラ○ンクエ○トの勇者でも、ファ○ヤーエ○ブレムの王子でも、ファ○ナルファ○

タジーの主人公でもないんだぞ。

何か知らない方が良かった様な気持ちを抱きながら、この日はレクチャーだけで一日が終

わってしまった。

考えてみたら休み時間も無しに、ぶっ通しでレクチャーを受けちまったよ。

どうりで、疲労感が大きいと思ったぜ。やっぱ、休憩は必要だよな〜。いみじみ〜。

一夜空けて翌日。清瑞という姉ちゃんに叩き起こされた。

何でも軍事訓練をやるから来いだってさ。

まぁ、これからの事を考えれば、見ておくのは必要だよな。

本物の軍事訓練というのにも興味あるし。損はしないよな。

という訳で、訓練場に着いたのは良いんだが、何で俺に刀を持たせる?

そいでもって、直属の部下といって兵士を三人紹介されたけど、どういう事だ?

えっ?いきなり実戦形式の戦闘訓練に参加だってぇ!?

ちょっと待て!いくらなんでも省きすぎだろ!?

俺は素人なんだぞ?別に剣道部にいた訳でも、道場に通っていた訳でもないぞ!

そんな素人にいきなり、それか?順番が違う気がしないか?少なくとも俺は、そう思う

ぞ。

刀ってどう持つんだよ。野球のバットを持つ感じで良いのか?それともゴルフクラブの持

ち方か?

おい、誰か、ちゃんと教えてくれよ。剣の構えも振り方も知らないんだぞ。

えっ、姉ちゃんが教えてくれる?良かった、少し安心したぜ。

と思ったら、清瑞の姉ちゃん、即答で断りやんの!

おいおい、ちゃんと教えろよ!こっちは命がかかってんだぞ。いくら主人公でも、ゲーム

オーバーという死があるんだぞ。

えっ?無い?そうだっけ?まぁ、その辺はどうでも良いや。

とにかく、教えろよ。俺は一応、神の使いなんだから、多少は敬えよな。頼むよ。

で、結局、伊雅のおっさんに諭され、清瑞お姉さんの部隊運用教室がスタート。

ふむふむ、成る程。なかなか教え上手じゃん。コンボというのは難しい&よく分からなか

ったが、ようは必殺技って事だよな。それは分かった。理解した。ところで。

肝心の武器の持ち方、使い方はどうなってんだよ。一番大事な「基本」を教えてくれよ!

格闘技とかだって、いきなり最初から組み手なんてさせないだろう!おっさん、何とか言

ってくれよ。

って、おいっ!おっさんまで、何始めようなんて言い出すんだよっ!違うだろ〜!お〜いっ!

あぁ、結局始まっちまったよ。俺の下についた部下達も期待に満ちた目で俺を見るし、行

かない訳にもいかないよなぁ。

まぁ、相手は伊雅のおっさんだから、加減してくれるだろう。多分・・・。

と思って安心してたら、清瑞の部隊と伊雅のおっさんの部隊の闘いを見て気が変わった

ぞ。

何だよ、清瑞の『砕殺爆烈撃』ってえのは!?

思いっきり爆発してたぞ、おいっ!?しかも伊雅のおっさんは少ないダメージで済んでる

し。

あんたら、本当に人間かっ?!

そいでもって、今度はおっさんが『王撃払魔刃』なんて叫んだかと思うと、剣を一振り、

光りの刃が飛んでいったぞ!?

一体どんな技だよ!信じられない光景だ。今正に映画とかアニメでしか見られない様な光

景が目の前で繰り広げられてるぞ。凄えっ。

いや、待てよ。これは、あくまで訓練だろ?なのに何で、こんな凄い技が飛び出してるん

だよ。

もしかして、こんなのは序の口なのか?俺は、あんなのと対決しなけりゃならんのか?

対決?そうだよっ!この訓練、俺も参加してるんじゃないか!?

やばい、やばいぞ。清瑞は一応、今回の訓練では味方だけど、おっさんは敵側だぞ。

あんなの喰らったら、俺は間違いなく死ぬんじゃないのか?!

こうなったら、近づく振りだけして、さり気なく遠ざかろう。おっさんの相手は清瑞の姉

ちゃんに任せとこう。

何か積極的だからな、清瑞の姉ちゃん。ドンドンおっさんに攻撃しかけていくし。

って、あれ?気のせいか、おっさん、俺を目指していないか?

何か近づいて来てる気がするのは気のせいか?

あれ、何故だ?いつの間にか、俺、間違えておっさんの部隊に接近しちまってたじゃん!

あ〜っちょっと待ったぁ、おっさん。タイム、タイム〜!

あぁ、ダメだ。音楽が変わっちまったぁ。画面も変わっちまったよ〜。

俺に戦えってかぁ?何でそうなるんだよ〜。とほほ。

え〜い、こうなったら破れかぶれだぁっ!!行くぜ〜、うおりゃあぁぁぁっ!!

何か知らないが勝っちまったぞ。最後、俺、何したっけ?

何かジャンプした後、おっさん目掛けて無我夢中で蹴りを入れてた気がするんだが・・・。

にしても、よくあんな高くジャンプ出来たなぁ。俺って、ひょっとして陸上部で高飛びの

選手になれたんじゃないのか?なんて思うのは、俺の自惚れ?

しかしまぁ、伊雅のおっさん、タフだなぁ。

一応、俺の勝ちという事になったけど、全然平気な顔してるぞ。俺、必死だったのに。

えっ?最後の技は何ですか?だって?いや、本当は俺が知りたいんだけど、そんな事言う

とまた清瑞の姉ちゃんに何か言われそうだから、適当に答えとこう。

う〜ん、う〜ん。蹴りが中心だったからなぁ。それらしい名前を・・・・。

ピーン!閃いたっ!

北斗流星脚だ。どうだ、凄いだろう。俺の好きな漫画「北斗○拳」と「聖闘○星矢」から

頂いたぜ。

おぉ、伊雅のおっさんは感銘を受けたみたいだぞ。それに比べて、姉ちゃんはもう・・・。

何だよ、それぐらい、して貰わねば困るってぇのはさぁ。ちょっとは褒めてくれても良い

じゃん。

はぁ、とりあえずはこれで、訓練は終了かぁ。良かった、良かったぁ。ゆっくり休める〜。

にしても、暫く風呂入ってないなぁ。風呂には入れんのだろうか?

トコトコと歩いて隠れ里に向かって歩いていたら、あれ?何か変だぞ。

空が赤くないか。いや、夕方だから、朱色に染まるのは分かるが、これはちょっと違うぞ。

おっさんも、姉ちゃんも異変に気付いたのか、急に駆け出した。

さすがの俺も疲れてヘトヘトだったが、これは下らん弱言は言ってられねぇや。

一目散に走っていくおっさん達に遅れながらも追いつくと、そこは驚愕の現場だった。

里が燃えている。そこかしこに人の遺体が横たわっている。

何だよ、これはっ?!嘘だろっ!昨日まで、いや、訓練に行く前まで、里の人達元気にし

ていたんだぞ。

俺に笑顔で挨拶してくれてたんだぞ!なのに、何でみんな横たわって動かなくて、血を流

してるんだよ!?

これも現実なのか?!ゲームならリセットしてロード出来ないのかよ!

あんまりだぜ。誰か、これは現実じゃないって否定してくれよぉっ!!

 

 

 

(あとがき)

どうも、小麦八郎です。

続きを書く予定はなかったのですが、参照数が200を越えるに至ったので、せっかく沢

山の人が読んでくれた以上、続きを書いても良いかなという気持ちになり書いてみました。

最後の方はさすがに人の生き死にといった展開になっていたので、その辺はシリアスモー

ドに入りました。

いくらなんでも、おちゃらけモードでは書けなかったですね。

今回は完全に続きを前提にした終わり方をしてますが、実際に続きを書くかは微妙でもあ

ります。ここで終わらせて、後はゲームで・・・。というのも悪くない気も少なからずあ

ります。

ただ今回の作も沢山の方に読んで貰えたなら、その時は書いてみようかなと考えておりま

す。

余所様のサイト様である以上、下手に連載モノは約束出来ませんので。(容量の問題や、

責任の問題等。)

無論、最初から連載する事を互いに了承&合意の上書き始めたものだったなら、こちらも

安心して書いていこうとも考えますが、さすがに突発的に書いたモノなので、皆様の反応

によって決めるのが適切と考えております。

それでは、またいつか、会える時がございましたら・・・。

2002年7月11日    小麦八郎