九峪の独り言耶麻台体験記〜其の一〜
俺の名は九峪。九峪雅比古だ。今年4月に高校三年に進級したばかりの、至って普通の好青年だ。
なのに何故にこんな事になってしまったんだろう。
俺はカールフレンドの姫島日魅子に連れられ、彼女の義祖父である考古学教授を訪ねる事となった。
そこまでは良い。そこまでは以前にも何度となく経験してる事だし、時には珍しい発掘品とかを見せて貰って楽しい事もある。
だが今度ばかりは「おいおい、そりゃないよ!」状態だ。
今回新しく発見された銅鏡、それを手にした日魅子が何やら怪しげな影を観たとか観ないとか言い始め、挙げ句の果てにはペンダントにしていた鈴が鳴るなんて言い出す。
そりゃぁ今まで鳴らなかった鈴が鳴ったら「えっ!?」と思う気持ちは分かるが、だからって夜中に銅鏡が保存されてるプレハブ棟に行くか?
まさか一人で行かせる訳にもいかないから、一緒につき合ったらとんでもない事になっちまった。
なんと保管してあったはずの銅鏡がいきなり違う場所に出現したかと思うと、訳の分からない妖怪みたいなのがウ
ヨウヨと出始め、俺達の周りにまとわりついてくるんだぜ。
冗談じゃないぜ。映画や漫画を観てるんならともかく、自分が体験するなんてまっぴらゴメンだ。
御丁寧に天井の裸電球は派手に揺れまくるし、書類棚などの引き出しとかは思いっきりポルターガイストしてくれるし、どうなってんだか誰か説明してくれと言いたくなる。
でも困った事にここには地獄先生はいないし、ゴーストスィーパーもいない。説明お○さんも専門外だろうし、勿論下駄履いて黄色と黒のちゃんちゃんこを着ているお化け退治の専門家はいない。
でも銅鏡から出てきた妖しげな影が光りを放ったら、まとわりついていた小っこい化け物達は消えてしまった。
それは良い。それは嬉しい。でもなぁ・・・。
だからって今度はこっちに矛先を変えないでくれよ。
驚いた事に日魅子が何かに操られるかのように鏡に近づいていくと、急に日魅子の身体が泡状に消えていくじゃないか!
何でそうなるかなぁ。まだ恋人と言える程の関係には至ってないんだぜ。
俺が言うのも何だが、日魅子は可愛い。明るく元気でスタイルも抜群。クラスでも人気者だ。
そんな日魅子とガールフレンド状態になれているってのは、ちょっとした自慢でもあるんだぜ。
こうして一緒に教授のとこに遊びに来れるのも、今のところ俺だけだ。
義祖父の教授にも「日魅子との関係はどうだい?上手くいってるかい?」なんて声をかけられるぐらいになってたんだぞ。
それなのに、そんな俺から日魅子を消そうってのか?
そんな事許されるか!許さないぞ!という訳で俺は原因と思われるペンダントの鈴を日魅子から奪ったね。
日魅子、あとで「何でペンダント引きちぎったのよ!」なんて怒るなよ。お前を助ける為なんだからな。
そいで結果はと言うと、やったね。日魅子は見事救ったぜ。
でもなあ。困った事に鈴を握った手が代わりに消えるなんてなぁ。そんなの聞いてないぞ。まぁ、当たり前だが。
しかも、どうゆう訳か俺、銅鏡の中に入っちまったらしい。
えっ?何でそんな事が分かるかって?
そりゃあ、俺も一瞬「あれっ?」て思ったよ。
だってさぁ、突然周りがよく分からない景色になったかと思うと、目の前には丸い窓みたいなのがあって、そこに日魅子の姿があるんだぜ。
いくら突然の事とはいえ、余程のバカでもない限り、そう思うんじゃないのか?
俺だけだって?いや、まぁ、断言はしないけどさぁ。
そんで焦った俺は思わず、その丸い窓に向かって手を差し伸べたんだよ。
そしたら手がちゃんと抜け出るじゃないか。こりゃ助かると思ったね。
えっ?何で抜け出たなんて分かるんだってか?
分かるんだよ。抜け出たっていう感触が伝わったんだからよ。
いや、少なくとも俺は、そう感じたんだよ。そう思ってくれよ。
日魅子も俺の手を握り締めようとしてくれてさ。嬉しかったね。劇的な場面だよな。助かってれば。
そう。そうなんだよ。
惜しい事に、俺の手は日魅子の手に触れる事はなかったんだよ。
何で?どうして?俺、何か悪い事したか?
そりゃあ、学校さぼったり、喧嘩したり、時には親に隠れてHなビデオや本を観たりとかしたけどさぁ。
それで、こんな仕打ちを受けるのは勘弁してほしいよ。
んで、暫く意識が飛んでたんだけど、ふと目覚めたね。
目覚めたという表現が正しいのかは別として。
どういう訳か俺、森の中に佇んでいたんだな、これが。
森という表現が正しいかは知らんけどね。
当然、俺は困惑したよ。普通、誰でもそうだろ?
そんな時、声がしたね。声からすると女の子!かなと思ったのにさ。
目の前にいたのは、訳の分からない生物?だった。生物で良いんだよな。
えっ?違う?精霊?精霊ってぇのは、生物には当てはまらないのか?
まぁ、とりあえず話を聞いたね。だってそれしかないでしょ、この場合。他に選択肢はないよな、普通。
で、驚いたのは、こいつが原因という事。思わず怒りをぶつけたね。いや、当然の感情だろ?
しかも声はルリルリなのに、何でこんな姿なんだよ。しかも自分ではプリティだと言いやがる。
まぁ、不細工じゃない事は認めてやるが、せっかくルリルリの声しててその姿はないだろう。
えっ?この声と知ってたら、もっと違う姿になってたかもしれないだって?
何を意味不明な事を言ってるんだ?知ってる人は知ってるけど、知らない人は知らないんだぞ。
しかも何だよ。お前が出した条件は。火魅子となる王女様を見つけ、滅亡した耶麻台国を復興させようだって?
そうしないと元の世界に還れない?ほとんど脅迫じゃないのか?それって。この時は思わず納得しちゃったけどさ。他に選択肢、用意されてないじゃん。
ゲームじゃないんだからさ。そんなの出来っこないだろ、普通。いや、ゲームなんだけどさ。
えっ?伊雅?誰、それ?何!耶麻台国の元・副王!?そんな人がいるのか?!それは助かる。
はぁ?単純?お前に言われたくはないだろう。その、おっさんだって。しかも御丁寧に似顔絵なんか描いちゃって。
でも絵、上手いなぁ。本当にそっくりだったぞ。この後に実際に逢って、内心驚いたもんなぁ。
結局、済し崩し的に俺はキョウと共に、その副王だったというおっさんに逢いに旅立つ事になったんだけどさぁ。
一体、いつ着くんだよ!
もう何時間歩いたんだ?陽が落ち始めてるじゃん。
確か近いとか言ってたような気がするんだがな。二十世紀人は軟弱だって?悪かったな。でも今は二十一世紀だぞ。いや、確かに生まれは二十世紀だし、ゲームの発売も二十世紀だったんだけどさ。
考えてみたらみたら俺、一睡もしてないぞ。飯も食ってない。これじゃあ疲れて当たりマエダのクラッカーじゃん。
えっ?ネタが古すぎる?スマン。確かにそうだよな。俺も知識として知ってるだけだし。
とにかく疲れたぞ。休ませてくれ?えっ、駄目?鬼だな、お前。見かけによらず。
何?熊が出る?冗談だろ。えっ、本気?否定出来ないところが、ちょっと悔しいぞ。
くそぉ、歩き続けるしかないのかぁ。せめてア○エリ○スとか飲みてぇなぁ。いや、贅沢は言わない。水飲ませてくれぇ。この時俺は、ほんの少しだけ力石くんの気持ちが分かったのであった・・・・・・・。とほほのほー。
結局俺は一昼夜通して歩きつめる事となり、ようやっと到着したね。
何だ、俺、意外と体力あるじゃん。何たって、着いた時には全然眠気無しだつたし、元気になってたし。
まぁ、見方を変えればハイになってとも言えるんだけどね。
それにしても、これが隠れ里かぁ。何か普通じゃん。全然隠れてるように見えないんだけど。
いや普通にしてるから分からない、ばれないって事なのか。
それにしても、ここは本当に三世紀なのか?俺が授業で習った弥生時代の服装と全然違うぞ。
キョウの話では平行世界というか、俺達のいる世界とは微妙に違う世界という事だが、微妙どころじゃない気がするのは俺だけか?
いや、俺だけか。ここに来た人間は俺だけだもんな、一応。
にしても、結構美人が多いなぁ。多分エキストラなんだろうけど、十分美人な女性達キャラだぞ。
えっ、何の事だって?すまん、気にしないでくれ。頼む。
さて、ここに副王とかいうおっさんがいるのか。えっ?名前は伊雅だって?いいじゃん、別にって、良くないか。
何だ、キョウ?はっ?俺に任せた?ちょっと待て、無責任だろ、それは。
って、おいっ!あ〜あ、鏡の中に入っちまいやんの、狡いぞ。
仕方ない。こうなったら、堂々と呼び出すか。
て事で、呼び出したら怖い姉ちゃんが出てきたよ。しかも、いきなりドスだよ、ドス。えっ?ドスじゃない?
じゃあ、何て言うんだ、この銀色の模造品とは思えない、怖〜い光り物は。
まぁいいよ、そんな事はどうでも。
俺が神の御遣いだって言っても信じてくれないじゃん、こいつら。
まぁ、普通に考えれば当然だわな。俺だって疑うぞ。
しかし、伊雅っておっさん。キョウの言う通り、本当に単純だったな。
天魔鏡を見せた途端、態度が一変したぞ。しかもキョウが姿を現したらもう、内心笑える程に豹変したぞ。
これじゃぁ、キョウに単純呼ばれされても仕方ないかもな。
他人事ながら、護衛役とかいう姉ちゃんに同情するよ。
ちなみにこの姉ちゃん、忍者なんだそうだ。
どう考えてもこの時代、忍者なんかいるはずないんだが、もう何でもアリなんだろう。
だって、この姉ちゃんの恰好ときたら、現代で言うコスプレとしか表現のしようがないぞ。
健全な男子高校生には目の得、いや毒にしかならないぜ。
おっさんの方は、違和感ないのが不思議だけど。
あと姉ちゃんの名前は清瑞というらしい。最初清水って字かと思ったら、何とも難しい漢字でやんの。
「きよみず」と聞いて、こんな字を思い浮かべる人間なんているのか?と内心悪態をついたが、考えてみれば日魅子の名前も字はともかく、発音的には妙な名前だと思ったので、突っ込むのは止めにしようっと。
普通、娘の名前に「ひみこ」なんてつけないもんなぁ。
護衛役の姉ちゃんは露骨に疑いの眼差しを向けていたが、主であるおっさんが信じてくれたおかげで俺達は何とか宿を取る事が出来た。
やった〜!これでやっと休める。食事が摂れる。寝れる〜!
こうして俺の、したくなかった耶麻台国復興体験が始まりを迎えた。もっともしたくなかったというのは最初だけで、
だんだんして良かったかな、なんて思う事となる体験なんだけどな。
もっとも、この続きを書くかどうは微妙かな。何せ俺、日記とかって三日坊主だしなぁ。ポリポリ・・・。ほいじゃあ。
《あとがき?》
えっと、其の一となってますが、続きを書くかどうかは分かりません。書かなくても問題ないでしょうしね。(^^;
火魅子SSは「日魅子の想い」以来です。今回は完全な九峪一人称で展開してます。
また結構軽い口調での構成にしてみました。完全にゲームをプレイした人限定の内容となってます。
イメージとしては、九峪自身が次回予告のナレーションをしている様なスタイルです。
次回予告としては長いかもしれませんけどね。(^^;
なので状況説明とかは省かれてます。ただゲームをプレイした人だと、あぁ、今はこの場面だなと創造出来る様な
文章にはしてみたつもりです。成功したかどうかは別問題ではありますが。(^^;
あと軽い気持ちで書き連ねただけのモノなので、SSとは言えない代物ではありますので、その辺は御理解願います。
それでは〜。
2002年6月11日 小麦八郎